JKにゲザる私
再び目を覚ますと部屋の中が夕焼け色に染まっていた。
ま・じ・か・!
外はすっかり夕暮れ時の様相を呈している。私はあれから朝ご飯や昼ご飯をすっぽかして眠っていたというのか……。
不思議と寝過ぎによる身体の軋みは無く、今朝感じた怠さは無くなっていた。私もまだまだ若いという事だ。さて、朱莉ちゃんが帰ってくるまでの間をどう過ごすか。
晩御飯を作って朱莉ちゃんを迎えるかとも考えるが…………あぁ、また余計な事をするなと怒られてしまうかもしれない。料理の腕も自信があるわけではない。できてカップラーメンが関の山だ。漫画を読んで過ごすか、いや、でもそんな精神状態でもない。なぜなら夜がすぐそこまで来ているからだ。日中にこれだけ寝て夜も同じように寝れるかといえば自信が無い。昨晩あんな目にあったというのに夜更かしできるほど強靭なメンタルは私には無い。身の安全が確保できない限り夜更かしは出来ない、がしかし眠れないといった状況が続く事になる。これは死活問題である。
私の規則正しい安眠を取り戻すためにもやるべきことは――!
私は立ち上がり家の中の襖や戸を開け放っていった。何をしているのか。
幽霊が潜みそうな所を片っ端から開けているのだ。これは安全の確保だ。
まだ外が明るいうちにやっておく必要がある。開けて何か出た時の事は考えない。日中なら大丈夫な筈……、だよね。きっと多分おそらくは。
いないな? いないな!?
押し入れを開け、トイレやお風呂のドアを開け次はタンスの引き出しにまで手を掛ける。今のところ幽霊に関するものは出てこない。考えてみればここが事故物件でない事は住む前に親が調査済みであるし、住んでしばらく経つが昨夜のような心霊現象が起こったのはアレが初めてのことだった。思い出すと心臓がバクバクしてくる。とにかく開けっぱなしのドアや引きだしが増えてくると安堵の気持ちが強くなってくる。
さて、残る引きだしは朱莉ちゃんエリアだけであるが……
…………。
幽霊調査中ではあるが同居人の私物を漁るようなことは躊躇われるな。
開けたけど。
ほうほうやはり飾りっけ無いデザインが好みか……ん?
私は引きだしの中から手帳のような物を見つけた。なぜ衣服をしまっておく引きだしにこんなモノが?
と私が顎に手を当て考えていると。
――――。
背後から風を感じた。
あらゆるドアは開け放っているが、玄関や窓は閉じたままだ。いったいなにがと振り向く私の目の前で黒い髪が揺れた。
……は!
「日ノ枝さん……。この有り様は何ですか? そしてなんで私の引きだしを開けているんですか?」
上から降る声。顔をゆっくり上げるとワンピースを着た朱莉ちゃんがゴミを見るような眼で私を見下ろしていた。逆光で表情が見づらいのがものすごく怖い。没頭し過ぎて玄関のドアが空いた事に気付いていなかったのだ。
私は身体の向きを朱莉ちゃんに向けると同時、久しく使っていなかった秘技・ジャンピング土下座を決行した。この技には中学高校大学となにかとお世話になったものだ。今もその腕は錆び付いていない。美しい体捌きに全米が泣いた。親も女子高生に土下座する私を見て泣くだろう。
この姿勢だと怒っている人間の顔を見ないで済むから楽なのだ。あとは罵倒が来る前にできる限りの弁解をするための布石でもある。
私は探し物をしており家中の引きだしや戸を開けまくっていたと早口に捲し立てた。もう見てそのままの状況なのだが。
「その探し物はトイレやお風呂にもあるんですか?」
んん……。
「その探し物は私のタンスの中にあるものなのですか?」
いやそれは……
「その探し物は私が盗ったと?」
違う! ちょっと勢い余っただけ! 好奇心もあるけど!
「私は怒っているんですよ」
……すいませんでした。
その後も朱莉ちゃんの言葉攻めに小さくなる私であったが、とりあえず、部屋を元通りにしてくださいという朱莉ちゃんの終結宣言により息を吹き返した。朱莉ちゃんが大人で良かった。私の方が年上なんだけど。
……あれ?
そして私は一つの違和感を覚える。
そういえば、朱莉ちゃんはなんで私服なんだろう? 学校は?
私の問いに朱莉ちゃんは髪を掻き上げて見せた。
「こんなモノがあっては学校には行けません」
朱莉ちゃんの首には昨日の晩に見た紫色の手形がくっきりと残っていた。
ああ……。やっぱり、夢じゃなかったんだ。
できればこのまま勘違いだったと安堵して夜を迎えたかった。朱莉ちゃんはあまり取り乱していないようではあるが、朝から夕方までの時間で落ち着いただけかもしれない。
「一つ、聞いてもいいですか?」
今度は朱莉ちゃんが私に問いかけてきた。言葉を迷うような、そんな仕草がみられる。
「……この痣は、日ノ枝さんではないですよね?」
グハッ!
疑われていたのか……。今通報されたら言い逃れできない状況にある事を自覚し、昨夜とは違う意味で恐怖を感じた。私は動揺を抑え込み、極めて冷静に真摯な瞳で朱莉ちゃんの目を見据えて容疑を否認した。
ぜぜぜ絶対、わた、私、じゃねぇっし!
やや声が上擦り目が泳いだが事実なのだから信じてもらうほかない。昨日の晩に幽霊が出て首を絞めていたのだと話すべきか迷ったが、私が次の言葉を並べるよりも早く、朱莉ちゃんはそれを肯定した。
「では、幽霊の仕業ですか」
え? と私は驚きに眉を跳ね上げた。私はまだ一言も幽霊だなんて口にしていなかったからだ。しかし朱莉ちゃんの言葉は疑問形ではなく、確信の籠ったものだった。
「私には普通の人には見えないものが見えるんです




