悪夢の明けた朝
朝が来た。
そう、朝が来た事に驚いている。これが日本のホラー映画であったならば場面切り替え後に死体となって発見されているところであるが、私はこうして朝を迎える事ができている。
……はぁぁぁぁぁ
蒸し暑い布団の中で私は腹の底から湧き上がるような溜息を吐いた。
肺の中の空気を押し出すと同時、身体がドッと重くなったような気がした。意識が無かったにも関わらず身体は常に緊張で強張っていたのだ。昨日の晩の出来事が鮮明に思い起こされる。本当に現実に起きたことなのだろうか……。覚醒しきった今になって頬をつねったところで意味が無い。今吐いたばかりの息をまた深く吸い込んで私は勢いよく布団を押しのけた。
部屋のなかは明るさに満ちていた。カーテンが開け放たれて陽光が差し込んでいる。布団の側に置いた腕時計を確認すれば午前9時を過ぎていた。熟睡じゃないか。
隣りの布団は既に片づけられており、朱莉ちゃんはいつも通り学校に行ったようだった。
少し、安堵した。
今顔を合わせても昨晩の事をどう話しらいいか戸惑ってしまう。
いったいなんだったんだろう、アレは……。
白く古ぼけたワンピースに腐敗しきった顔の女。こちらを見るや問答無用で襲いかかってきて、あの時の女の表情が網膜に焼きつけられてしまいトラウマ確定だ。
アレは、朱莉ちゃんの布団の中に潜んでいたのだ。
あの時私が布団を開けなければ、私が朱莉ちゃんの様子を気に掛ける事が無ければどうなっていたのだろうか。外で蝉の声がけたたましく鳴っているが、私の周辺の空気は冷気に満ちていた。ブルりと身体を震わせ、私は気を取り直すように立ちあがった。
屈伸や軽いストレッチで身体を伸ばすと布団の上に再び横たわった。
ふっふっふ、活動を開始すると思っただろう。フェイントだ。
基本万年床で一日の内、結構な割合布団上でグダグダしている。
生活のサイクルというのはそう簡単には変えられないものなのだ。布団の温もりの残った面に身体を沿わせると睡魔が再び活動を始めた。私より睡魔の方が活発で働き者だ。適材適所ということで私は睡魔に任せて再び寝る事にする。二度寝することは珍しくないが、今日は異常に身体が怠かった。




