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07 ゆらり一息


 土と草の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、息を吐く。一旦私のお仕事は区切りついたので、水質調査の方はアレク様にバトンタッチだ。

 特にやることもないので、隅の方でアレク様の様子や周りの騎士さんたちを見守りつつ休憩しておく。


 別にスキルを使った結果の疲労とかは全くないんだけど、さすがに山道は疲れた。足が痛い。

 靴擦れ、は、していなさそう。ただ、単純に普段使わない筋肉を使った痛みがじんじんする。


 魔法で地下水の水質について調べるアレク様とそれを記録する記録係さんの周りには水の塊が浮いている。

 私から見ればふよふよと水の玉がいくつか浮いているようにしか見えないが、あれで水質がわかるらしい。いいなぁ、あれ。私もああいうの出したい。


 傾斜になっているから座り込むわけにもいかず、仕方なく適当な木にもたれかかる。

 これ帰りもあるのかぁ。行きはまだましだけど、下りの方が滑りそうで怖い。山道だるいなぁ。

 そんなことを考えていたら影が差した。雲が出てきたのかと、顔を上げればすぐ傍にレオン様が来ていて。え、何?


「お疲れで?」

「好きで登るならいざ知らず、仕事で山を登るのは間違いなく苦行だと思うわ」

「疲れるのが嫌なら、俺らの仕事ほぼ毎日苦行っすね。訓練や遠征の時は、夏でも冬でもアーマー付けるんで」

「わぁ、絶対なりたくない職業」

「はは」


 騎士さんだし鍛えているのはわかるけど、見るからに重そうなアーマーを着込んで、よく山を登ろうと思ったわね。

 籠手と胸当てを付けているレオン様を見る。所謂甲冑みたいなフルアーマーじゃないだけましかもしれないが、それでもどうかと思うわよ?

 もしかしてこの人、実はすごかったりする? 今のところ、にやにや笑いながら意地悪言うイメージしかないんだけど。


「そんなことより、いいの? お仕事中のアレク様の護衛をしないで」

「周辺の警備には人員を配置しているんで。それにあの人はいざとなれば対抗手段があるでしょう」


 それは、そうかも。

 記録係の人がいるから、私だけってわけではないけど非戦闘員なのは確かね。アレク様ってフィールドワーク好きの学者でよく研究室を留守にしている設定があったし、そのおかげかスキルの扱いも上手かった。


 ソシャゲの方でも、イベントで配布されたアレク様のカードが強くてクエスト攻略ではものすごくお世話になったっけ。

 あのイベントは良かった。しっとり大人な雰囲気と見せかけて意外とやんちゃしてくれるアレク様と、それに巻き込まれて振り回されるミゲル様の新しい一面を見せてもらった。ありがとう、公式。

 まだ公式に課金しなきゃと言う使命感が残ってはいるけれど、一旦この感情は置いておきましょう。


「ま、魔物や野生動物については心配しなくていいですよ。俺、そこそこ強いんで」


 自信満々ねぇ、別にその辺りを心配はしているわけじゃないけど。

 護衛で来ている騎士さんたちがアレク様に関心を向けている隅で、レオン様と二人話す。


「ふーん。そういえばあなた、どんなスキルなの?」

「俺のは「氷塊」っすね。氷で色んな物作れるんで、結構便利っすよ。丸腰でも武器が作れるし、洗い物が面倒な時は皿代わりにだってできる」

「何それ便利ぃ」


 どんなジャンルでも氷使いって応用の利く便利な能力だとは思っていたけど、日用使いまでできるとかズルくない?

 というかあれよね。武器を氷で作れるのなら、仁王立ちしたまま後ろでいっぱい武器を作って投擲する、皆の憧れの攻撃スタイルもできるんでしょ? いいなぁ。


「いいわね、そういう目に見えるタイプのスキルって。私のスキルはほら、なんていうか、地味でしょ?」

「ああ、そういう」


 自分で言っておいてなんだけど、納得されるのもちょっと思うところがあると言いますか。


「目に見えているものが全てってわけじゃないでしょ。実際アンタは何の目印もなしに、水源を見つけてるんだから」

「そうはいうけどねぇ。でも目に見える指針があった方が、周りとしてはどこに連れていかれるんだって不安がなくていいと思わない?」

「お人好しっすね。わざわざ仕事内容に含まれてもない他人の不安まで気にするとか」


 呆れたように肩を落として、レオン様がため息を吐いた。まぁ、あなたはそういうの、苦手そうよね。

 でもレオン様が言うような、大した理由じゃないのよね。一緒に仕事するなら円滑に物事を進めたいじゃない? そのための配慮と、後は私欲?


「そんなのじゃないよ。単純に憧れ。ほら、派手な方が使う方も楽しいじゃない?」

「まぁ、それはわかるっすね」


 でしょう? 前世は割とゲームやファンタジー作品が好きだったのもあってこう、派手な演出って憧れるというか。

 アクション映画で派手に車が炎上していると、ちょっとテンション上がったりするじゃない? そういう、自己満足のために派手さが欲しいのよ。


 別に今のスキルに不満があるわけではないけどね。それでも憧れや願望をちょっとばかし垂れ流してみたりもしたりして。

 折角ファンタジーな世界に転生したのだし、できるかどうかは置いておいて、英雄譚に憧れるくらいは夢見たって許されるでしょ?





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