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03 早々に再会


「お前たちの間に何があったかは知らないが、自分が何をしたのかはわかっているかね?」

「陛下主催の宮廷の夜会で騒ぎ、強制的に帰還させられましたわ」

「事実を正しく認識できているようで結構」


 お父様が大きくため息を吐いて肩を落とした。

 一応、悪いことをしたとは思っているのよ? だから反省の意を込めて大人しくお説教を受けているわけで。


 昨夜、王宮から帰って来た後も結局、お父様は何も言わなかった。事実確認に忙しかったのかもしれないけど。

 一晩経って、事態を把握したお父様に呼び出されてみれば、怒っているというよりも呆れているといったような表情で。お父様にそんな顔をさせて、私もまだまだね、なんて余計なことを考える。

 だってそうでしょ? 王家からちゃんとした叱責があったのなら、もうちょっとちゃんと怒られると思うもの。


「それで? ミゲル殿とは何があったのだ?」

「ちょっとした言い合いですわ」


 書斎の椅子に腰かけたお父様が、ピクリと訝しげに眉を上げた。

 まぁ、その。気持ちはわかりますわ。今までの私って、自分で言うのもなんですけど、ミゲル様に一直線でしたし。


「珍しいな。あー、ほら。お前、アレだ。ミゲル殿に……、親の私も引くぐらい惚れ込んでいただろう?」

「乙女心と秋の空と言いますれば」

「今は春だぞ」

「春ですねぇ」


 そう、春。春なのだ。

 春と言えば社交シーズンの始まりを告げる季節。これから初夏まではそこかしこで貴族が集まってパーティーや観劇を行うだろう。


 そしてその最も華やかな王宮での夜会で、とびきりの話題を提供したわけで。

 私自身は余りそういった社交界に参加しない方だし、してもミゲル様と一緒の時のみだったので、想像の範疇に過ぎないが、多分今日明日にでも噂に尾びれ背びれを付けて広まっていくのでしょうね。

 そういう意味では、お父様には申し訳ないことをしたかもしれない。


「全くお前は、のんびりしていると言うか、自分の世界に生きていると言うか……。まあいい、明日の予定はわかっているな?」


 あ、いいんだ。

 許してもらえるに越したことはないけれど、もう少しきつめに言い含めてもいいのよ? 元々がっつり怒られるつもりで書斎まで来たのだし。


「ええ。国からの依頼で、例年通り水源の捜索、ですよね」

「わかっているならいい」


 もうそんな季節か。毎年、この時期になると国から依頼を受けて近隣の山にある地下水の水質調査に同行する。

 実際に私が行うのは水質調査の方ではなくて、水源を探すことなんだけど。


 この世界にはさすがはソシャゲの世界というべきか、貴族のほとんどが一人一つずつ「スキル」と呼ばれる能力を持っている。

 例に漏れず私もスキルを持ってはいるんだけど、私の一族は相伝、みたいな? 『失せもの探し』などと呼んでいる、我が家にだけ代々伝わるスキルなわけで。


 前世なら見当たらなくなったスマホやリモコンを探すのにも使えたのだけど、どうせなら私もミゲル様のように風を操ったり、火を起こしたりしてみたかったのになぁ。

 家格のある貴族は皆、華やかでいて派手なスキルを持っているし。前世でファンタジー系のゲームが好きだった私としては、そういうのに憧れがあったりもする。

 まぁ、定期的に探し物関連で色んなところから依頼が来るので、没落の危険が低いのは強みかもしれないわね。


「いつも通り、騎士も同行する。後で挨拶来ると言っていたからお前も……来たようだな」


 ノックの音が響いて、客人を案内してきたと言う執事の声がする。お父様が入室を許可すれば、滑らかな木製の扉が、ゆっくりと開かれた。

 昨日見た騎士の礼服とはまた違う、かっちりとした騎士服に身を包んだ青年が書斎に入ってくる。


 すらりとして長い手足。襟足は短いのに前髪は空色の瞳にかかる程度には長い。

 天邪鬼というか、その少しちぐはぐな感じが、昨日の不遜な発言を思い出させて。


「第五騎士連隊所属、レオン・ハーシェルです」


 ……昨日私を別室に案内した若い騎士じゃない。え? どういうこと? ここにいるってことはあなたが水質調査の護衛にあたる騎士の代表ってことになるんだけど?

 それに昨日の今日じゃない。こういう仕事は前々から決まっているものでしょう? つまりこの男は、昨日の時点で私のことを知っていたのでは?


 思わず指をさして物を言いそうになる私を他所に、お父様とレオンと名乗った騎士は依頼の説明と確認を行う。

 ねぇちょっと。どうせあれっきりになるだろうと思って、変なことも言ったのに、次の日にはこうして会って、明日一緒に仕事をしなければならなくなった私の気恥ずかしさはどうすればいいの?


 彼が私を見て目を細める。

 それがまるで昨日ぶりだなとでも、言っているようで。


 この男、わかっていてやったでしょう!

 というか、何よその似合わない敬語! お父様の前だしお仕事中だっていうのはわかるけど、昨日だって仕事中ではあったでしょうに!

 それにあの目! 絶対、面白がってるに違いないわ!



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