23 休日
ウタに懐かれた。
同郷で同族ってアドバンテージもあったのだろうけど、それでも年の近い同性と仲良くなれるのは嬉しいものね。
ほら、私今まで社交方面だとか、お仕事以外の人との交流っていうのをサボり続けてきたのでお友達っていないのよね。
そういうのもあって、私個人の知り合いを家に招くのは初めてかもしれない。
こっちじゃスマホもないし、前世ほど気軽に連絡が取れないのでやり取りが大変だったわ。まぁ。手間はかかるけど、ウタを招くためのお茶会の準備をするのは少しワクワクしたわ。
基本的に連絡手段は手紙で、やり取りに時間がかかりすぎるのよ。
一応通信機みたいなものはあるんだけど、有線だし王室と騎士団ぐらいしか使っていないらしい。大衆向けに一般化されるのはいつ頃になるのかしらね。
そういえば、こういう通信機器に詳しいのはレオン様の上司の方だっけ。サブキャラではあるものの、事情通として度々シナリオに出て来ていたはず。その時に連絡手段についての説明もあった気がする。
まぁ、一旦その話は置いていていっか。
目の前ではウタが紅茶とお茶菓子を楽しみながらにこにこと笑っている。
一応名目はこの世界や今後のシナリオの展開。あとゲームのシステムについての説明としているけれど、会話内容の大半が前世の推し語りだ。
私は基本的にゲームや漫画を主としていたが、ウタは舞台も好きだったらしい。会った時ミュージカルの曲歌っていたものね。
この世界の元になっているゲームの舞台版でアレク様を演じる予定だった俳優が好きで、ゲームをダウンロードした。
で、チュートリアルである序章を熟し、アニバーサリーガチャを引いた辺りでこちらに来たのだとか。
一周年の時のピシっとしたタキシードもよかったけど、三周年はストリート系のファッションで揃えていて可愛かったようだ。見たかった。私も公式にお金落としたかったのに。
一応、招いてすぐはウタも緊張していたみたいだけど、そんな話ができるくらいにはリラックスしてくれているのは嬉しい。
どうせだからと、庭師に頼んでいつもよりも多めに季節の花々を飾ってみたり、流行り物のお菓子を並べてみたり。普段より応接室が華やかな感じになっているなぁ。
ウタは男爵令嬢ではあるものの、大きなお屋敷があるわけではなくどちらかというと少し裕福な程度でお家も普通の一軒家らしい。
そちらの方がこの世界に来てすぐは戸惑いがなくていい気もする。実際のところはどうなのかしら? 私? 小さい頃よく屋敷の中で迷子になっていたわよ?
「この間思いっきり泣いてすっきりしたので、今後の目標をざっくり考えたんですよ」
「あらそうなの?」
「ゲームの中の話って、所謂私の「浄化」のスキルで瘴気を浄化していくことで話が進むじゃないですか」
「うん。瘴気の原因を解明する目的もあるけど、最初はそうなるわね」
その手助けになるためにも何か、できることはないかと私の方でも考えてはいるんだけど、今のところ何も浮かんでこないのよね。
一応、四章中編までの知識なら話せるし、ある程度イベントの話もできる。でも決定的な原因や、関わっている人はわからないままだし。
この間一緒にお仕事をした気象学の学者さんにお話聞きに行ってみる? そろそろ何か進展があったりしないかしら?
「困っている人がいるのなら助けたいとは思います。でも! それはそれとして! 折角貴族になったのだから綺麗なドレス着たいし、ちょっと無茶な冒険もしてみたいなぁ、なんて思ったりして」
えへ。なんて照れたようにウタが笑った。
……、それは、なんというか。
私からすると、びっくりするくらい細やかな願いに思えた。
「ナタリアのスキルって、探索の時に使うものなんですよね?」
「探索、というか。そうね、ゲームでいうところのクエストクリアでもらえる報酬を探し当てるスキル、みたいな?」
「いいなぁ、楽しそう! ね、一緒に冒険とかしちゃいましょうよ! 私舞台のために遠征して色んな所へ行くのが好きだったんです!」
ウタは地方民だったらしく、よく大都市へ遠征に行っていたらしい。何なら地方公演にも追っかけていたとか。素敵な趣味だと思う。色々な場所へ行って色々な物を楽しんで。
私は前世も今世もインドア派だからなぁ。基本、仕事の合間に必死にゲームのイベントをやる毎日だったし。
「元の世界に帰れないのなら、ちょっとぐらい楽しんでもいいよね?」
ウタの思いっきり泣いてすっきりした、というのは本当だったみたい。
この間の泣き笑いとは打って変わって晴れやかな笑顔に、そっと息を呑む。
この子に笑っていてほしいと思った。その笑顔が眩しくて、羨ましくて。
苦しくとも、辛くとも。乗り越えられる強さを持った子だと思った。私もそんな風になれたら、なんて。
「ご歓談中失礼します、お嬢様。お客様がいらっしゃいました」
ノックと共にメアリーが応接室の外から来客を告げる。ぐっと何かまろび出かけた物を呑み込み、ウタに声をかけてから立ち上がる。
人が来る予定はないはず。緊急の用事かしら?
首を傾げながら、応接室の扉を開けた先にいたのは。
「どーも」
口角の持ちあがった、どこか楽しげな顔をしたレオン様だった。




