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17 理解したくないんだが?

レオン視点。


 正直俺は、何故ナタリア嬢のスキルを国が重視するのか、正しく理解できていなかった。


 確かに「失せもの探し」というスキルは便利だ。物品やら、水源。大量の本の中から特定の文言が書かれたものを集めるといったことまでやってみせた。

 一応探そうと思えばあのスキルがなくても見つけられるだろう。ただ時間がかかりすぎる。対象についてはほぼ制限なく、探し出せるあのスキルを重用したくなるのも理解はできる。


 おまけにそのスキルを使っている本人は、こちらの仕事がしやすいようにと、細やかな気遣いをみせるホスピタリティを持つ。そりゃあお上も重用するか。

 んなことばっかりやっていて疲れないのやら。いや、疲れたからパーティーでのようなことになったのか。


「あくまで、探していただいた時間に盗品がある場所を記載したと、ナタリア嬢は仰っていました」

「なるほどな。複数箇所、となると部隊を分けるか」


 隊長室で上司であるクルール隊長にナタリア嬢に持たされた地図を渡しながら、盗品捜索の報告を行う。

 この人も変な人ではあるんだよなぁ。わざわざ態度が不真面目な自覚のある俺を、小隊長にしている辺り何を考えているかわかんねぇ。

 その方が面白れぇからいいんだが、こっちのことを見透かした態度なのだけは面白くねぇけど。


「早急に回収するか。追って指示を出す。第三、第五小隊長に会議室に集まるように声をかけておいてくれ」

「わかりました」


 王家の御物を横流ししたバカな貴族は早々に捕まったところを見るに、特にこういうことに慣れているわけではないのだろう。

 だからこそ、複数の裏市場のルートを知っているのが引っかかる。ま、その辺りは他の部隊が今頃調べているか。


「ところで。ナタリア嬢の様子はどうだ?」


 用事も済んだし退散するかと思ったところに、クルール隊長がそんなことを言った。


「別に……、パーティーの一件から特に取り乱した様子もなく過ごしているようですが?」

「ならいい。わかっているとは思うが、あの家の人間は我が国にとって重要な方々だ。くれぐれも危険な目に合わせるんじゃないぞ」


 それについては言われるまでもないが、ナタリア嬢自身はもっと見た目の派手なスキルをご所望の様ですけどね。例えそんなスキルを手に入れても、あの人の性格からして怪我をするような使い方はしなさそうだな。

 にしても、スキル、か。


「わかっちゃいるんすけど、そんなにあの人の持ってるスキルが大事なんすか?」

「そりゃそうだろう。「失せもの探し」ってのは人だろうが物だろうが見つけ出せるスキルだ。やろうと思えば埋蔵金のありかでも、敵対国の軍隊がどこに居るかだって完全に把握できる」

「……軍事利用、する気で?」

「そういうこともできるというだけだ。これで、国がどれだけフォスター家を失いたくないかは理解できたか?」


 理解したくないんだが?

 確かにそういうこともできるスキルなんだろう。先祖には金鉱脈を探し当てた者もいるらしい。それでもだ。

 ナタリアは国の金策だとか、軍事利用にスキルを使える性格じゃねぇだろ。


「パーティーの一件で、アスティン伯爵家との婚約が破棄されればどうなるのやら。できるだけ、あのお嬢さんが国外脱出しないように様子を見ておいてくれ」

「監視しろと?」

「保護だよ。彼女には兄君がいるとはいえ、あのスキルを国外に出すのは大きな損失になる」


 もっともらしい言い分だとは思うが、正直納得はできねぇ。

 あの人のスキルがどれだけ重要視されているのかはわかった。でも監視だの行動を制限するだのは、なんか違うだろ。


 今更ながらに彼女の家の爵位が子爵である理由を理解して嫌になる。

 金鉱脈だの水源だの、それだけでお釣りが出るほどの功績を上げても、フォスター家は恐らく子爵以上に爵位が上がることはない。それは、「失せもの探し」というスキルを国外に流出させないため。

 家格が上がれば政治的に他国との婚姻の可能性も出てくる。それを避けるため。


 あの人はどこまで理解してんだろうなぁ。もっと派手なスキルに憧れている、なんて言うぐらいだから、案外何も理解していないのかもしれない。

 だったら余計に嫌になるな。保護だのなんだの聞こえのいい言葉で誤魔化しながら、あの人から、一つの可能性を奪おうとしているんだ。

 じっと隊長を睨みつければ、ため息と共に肩を落とされた。


「国外に嫁がない限りは好きにしてもらって構わない。国はあの一家を国という大きな鳥かごの中に押し留めておきたいのさ」

「アンタも同じ考えで?」

「国の繁栄のためにスキルを使ってほしいとは思うが、妙な政治に巻き込まれるよりは、『国内』で気の合う相手と一緒になってほしいと考えているよ」


 わかるだろ。と言いたげな視線を隊長に向けられて、今度は俺がため息を吐いた。

 前者は今一だが、後者は一部同意してもいい。悪い人ではないのだし、どこの誰でもいいが、ナタリア嬢が気を許した相手の隣に居られるならそれが一番だろ。


「そういう顔をするから出世できないんだぞ」

「出世とか考えてないっすよ。アンタの下の方が自由にできるんで」


 よくもまぁ、世の中こんな面白くもねぇことが転がってるもんだ。

 近いうちにまた会うだろうご令嬢の行く末を案じ、なんとも言えない気分になった。



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