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16 ささやかな


 ありがたい話、色々ところから仕事の依頼は来る。

 今日は騎士団からの依頼で、ということはだ。


「どーもー」


 少し長めの前髪から覗く空色の瞳が機嫌良さそうに笑った。

 どういうわけか、あの一件以来何かとレオン様と会う機会がある。


「最近よく会うわね」

「そうっすね。ま、俺も雇われなんで、上司に仕事を振られてるんすよ」


 レオン様曰く。あのパーティーの一件で、これも何かの縁だと上司に我が家に関係する仕事をよく振られるようになったのだとか。

 それはそれとして、この間の非番の日にも遊びに来ていたけど。来ちゃったじゃないのよ、来ちゃったじゃ。


 まぁいいわ。そんなことよりもて今日の依頼の内容を確認しましょう。

 騎士団からの依頼もあるにはあるけど数は少ない。やっぱりほら、メンツとかそういうのがあるのか、基本的には内々で調査をすることが多いみたい。

 なので、騎士団の依頼は体感急ぎの用事、という認識でいる。


「それで、今日の依頼について教えて貰える?」

「どっかのバカな貴族が王家の御物を横流ししましてね」

「随分と大胆なことをしたわねぇ」

「一応そのバカは捕まったんですが、物品は既にどこぞへ流された後でしてね。裏市場に出てしまった物品の位置を探していただきたい」

「わかりました」


 レオン様が資料をこちらへ差し出す。受け取って見れば、それは今回流出した王室御物のリストで。

 その名称と見た目の写真、大きさ。作成日と製作者といったキャプションが添えられている。

 うん、ここまで詳細に揃えられているなら問題なく探せるわね。


「探せますか?」

「ええ、問題ないわ。アニー、地図とペンを持ってきて」

「わかりました」


 控えていたメイドに持って来させている間にレオン様が持ってきた盗品の資料にしっかりと目を通していく。他の貴族もそうだけど、さすがは王室。有名な美術品が多いわね。

 しばらく目を通していると戻って来たメイドから地図とペンを受け取ってテーブルの上に広げていく。


 そこからはまぁ、特に止まることもなく。資料を片手に次々と地図に印と今日の日付けと時間を書き加えていく。

 これはここ、こっちはここ、これもここ。おおよそ同じ系統の物は同じ場所にあるってことはそれぞれ業者が違うのかしら。

 ああ、そうだ。しばらく一緒に仕事する機会があったし、レオン様もわかっているとは思うけど、一応注意しておかないとね。


「あくまで、今現在、これらの盗品がある場所しかわからないから。あなたたちが回収するまでに移動している可能性も考慮しておいてね」

「わかりました」


 まぁその辺りは騎士団の方が詳しいだろうし上手くやってくれるでしょう。

 それにしても横流しとかよくやるわねぇ。特にうちの国は我が家のスキルがあるし、ああいうリスト化がされているであろう場所から物を持ち出すとすぐに特定されるのに。


「こういうのもわかるんすね」

「どちらかというとこういうのの方が多いわよ。個人所蔵の物品の棚卸とか。詳細がわかっている方が探しやすいわね」

「へぇ、水質調査時はどうしてたんすか?」

「アレは……なんだろう。水を探した時に一番反応が固まっているところを探した感じ?」


 言葉にすると余計に怪しいわね。正直自分でもよくわかっていないのよ。

 そもそも世界的にもスキル自体が、なぜか一部の人が使える不思議パワーって認識でどういう物かあんまり解明されていない。

 そしてその不思議パワーを使える人たちが社会的に活躍していって貴族になったわけだ。


 スキルで上げた功績が、家格として評価されているといえば、わかりやすいわよねぇ。

 うちも一応色々なところの仕事を受けたりしているけど、まぁ裏方業務になりがちだからねぇ。別に家格に不満があるわけではないのでいいんだけど。


「こんなところね」

「ありがとうございます。確認しても?」

「ええ。私にできるのはここまでだから、後は上手くやってね」


 色々と書き込んだ地図を渡せば、レオン様が視線を落とす。

 この人、私に対する反応は割と適当だけど、仕事に関しては真面目なのよね。まぁ社会人としては当たり前なのかもしれないが、公人として軽薄な発言が多いと言いますか。


 渡されていた資料をまとめてレオン様が取りやすいように、テーブルの向こう側へ寄せておく。

 さて。協力してあげたいけど、私ができるのは本当に探すだけだからね。後はレオン様や騎士さんたちに頑張ってもらいましょう。

 地図の確認が終わったのか、レオン様が顔を上げた。表情は、明るい。


「うし、これならいくつかの裏市場のルートごと潰せそうっすね」

「それは良かった」

「盗品の回収が終わったらまた報告に来ます」


 嬉しそうな顔しちゃって。

 発言や態度はアレだけど、ちゃんと騎士さんなのよね。仕事熱心ってほどではないけど、それでも成果が上がりそうなら嬉々とした態度を隠しもしないで。まぁ、役に立てたならいいや。


 急ぎ足で騎士団へと戻っていくレオン様を見送って、ふっと息を吐く。

 ……まぁ、うん。やっぱり、ああいう? 嬉しそうな顔されると、仕事を手伝ってよかったなぁって、なるよね。

 次もがんばろ。



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