ヒトの街へ ⑦
覚醒させた盗賊のオッサンどもを、村人たちと引っ立てて行く。
何か乗り物に載せていくのかと思ったら、盗賊も俺たちも全員が徒歩だった。
盗賊10人に対して、急き立てて歩かせるのは村人のオッサン5人に俺とケイナの合計7人。
逃げたらどうなるか、ケイナに風の散弾魔法を撃って貰ったら、若木が木っ端微塵になったのを見て盗賊どもが真っ青な顔で震え上がった。
どこまで歩かせるのかと思ったら、目的地はまだまだ先だと。
2日も歩けば領都に着くらしい。
「領都」と言っても「辺境」の弱小領地だから小さな町レベルだそうだ。
夜は野宿だな。
野宿中、盗賊は一人ずつ立ち木の幹に縛り付けるんだが、抵抗するようなら首に縄を掛けて一晩中立たせると脅したら素直に木に縛られた。
そりゃあ、座っても転んでも首が絞まって死ぬんだから、大人しく木に縛り付けられておいた方が翌日の歩く体力を回復できるからな。
護送する側も見張りながら盗賊のペースに合わせて歩くのは疲れるから、しっかりと体力を回復しておく必要が有る。
夜食に犬肉を提供してやると、村人も喜んで串焼きを頬張っていた。
町への道中に雑談で聞き出したところ、あの集落は、辺境開拓で国から送り込まれた開拓村で、相続権を与えられなかった貧困自作農家の非長子や、自作農家への成り上がりを目指す小作農民出身者ばかりなのだそうだ。
畑を荒らされたり備蓄食糧を奪われていたら、開拓村の存続すら危うかったらしい。
「森で動物は狩らねえの?」
「動物? 盗賊にも勝てないのに、森に入るなんて無理に決まってるだろう」
「ああ、うん。そうか」
食料が厳しいなら獲物を獲って穴埋めするもんだと思っていたが、盗賊よりも遙かに強い魔獣を狩るなんて無理、と。
そんな調子で開拓なんて出来るのか? と、思ったら、森の外で土地が痩せた原野を開拓するだけで精一杯で、普通、森を切り拓く考えは無いらしい。
そんなもんなのか?
「普通」の感覚がよく分かんねえな。
家やら小屋やらに使う木材だって必要だろうし、目の前に森があれば、普通は森の木を伐って拓くもんだと思うんだが、伐るのは森の外の木なんだと。
何で? と訊くと、どういうわけか森の木はクッソ硬くて斧の方が先に折れるんだって。
クッソ硬いってのはケイナも郷の大人たちも言ってたな。
そうか?
石を投げてへし折れるぐらいなんだから伐れそうなもんだが。
それ、道具の質が悪いんじゃねえの?
まあ、俺が投石でへし折った木は、幹が割れちまって使える部分が限られそうって言われたけどな。
乾かせば薪に使えるからって結局は喜ばれてたよ。
思うところは有るが、わざわざ口に出して空気を悪くする意味も無い。
むしろ、空気を良くしておかないとな。
盗賊のオッサンどものボロい武器と防具は、開拓村に寄贈した。
売っても大したカネにはなりそうに無いし、せっかく助けたのに滅ばれちゃ寝覚めが悪いからな。
しっかり武装して、今後は自力での防衛に勤しんでくれ。
盗賊デリバリー先の領都に居る人間のトップは領主なんだな。
そりゃそうか。
頭は縄張りの中枢に拠点を構えてフン反り返っているもんだ。
ここの地元の領主はエンツェンス子爵というらしい。
ドイツ系? フランス系の名前か?
国名はドイル系っぽい気もするが、ガイジンの名前なんて詳しくねえから分かんねえな。
国名が「王国」というぐらいだから君主制だろうと思っていたが、封建制っぽい。
国王から与えられた領地を領主貴族が統治、経営して、税金を国王に納めるシステムだそうだ。
このエンツェンス子爵という人物は、結構、ユルいというか、中庸で、善良とも悪徳とも言えない、僅かな隠し蓄財に励む程度の地方貴族らしい地方貴族で、豊かとは言い難い領地なんだと。
褒めてんのか貶してんのか、こっちも分かんねえ。
国自体としては、主要産業と言えるほど確たるものがなく、魔獣素材の輸出と、周辺諸国からの浸食に対する防衛費で、収支はトントン?
封建制国家ではあるが、主たる貿易品の魔獣素材を調達する冒険者ギルドと、貿易流通を担う商業ギルドの発言力が強く、王政が強権を示すことは少ないそうだ。
国王、その人も、中庸と言われる人柄で、市井へ姿を見せる機会が多い王女のほうが、国民の人気がある、などと、なかなかに辛辣な評価だな。
ヒトの街へ⑦です。
王女が人気?
次回、耳より!?(笹かま風




