ヒトの街へ ⑤
「アンタ! 助けてくれてありがとうよ!」
「ただの通りがかりだ。気にすんな」
掛けられた声に答えると、顔を殴られた痕の有る村人は捕縛作業に取り掛かる。
俺も手伝うかね。
「まさかと思うが死んでねえよな?」
俺が張り倒したオッサンどもは顔の半分が腫れ上がっていてピクリとも動かない。
口元に手の甲を近付けてみると、呼吸は有るようでホッとする。
「ヨッと」
気絶しているオッサンの脂ぎって汚い襟首を掴んで上体を起こさせると村人がロープ―――、というか、荒縄を持ってきて後ろ手に縛る。
結構、手荒に扱われてるんだけどな。
かなり手加減したつもりだったが、白目を剥いて鼻血を流しているオッサンどもは目を覚まさない。
「なあ! こっちにも縄をくれ!」
「あいよ! これを使っとくれ!」
集落の住民らしきオバサンにロープをもらって、俺もオッサンどもの両手首を後ろ手に縛っていく。
この国の法律がどうなのかが不明だったから、死なない程度には力加減に気を付けたつもりなんだけどなあ。
「うーむ・・・」
一応、息はしてるから死んではいないが、縛り上げられても誰一人目を覚まさねえな。
どうしたもんか・・・。
ヨシ。地元民に訊くのが一番だな。
「おい、アンタ。手加減はしたつもりなんだけどよ。コイツら、このまま死んだらどうなんの?」
「構うもんか! コイツらは盗賊だ!」
「そうか。やり過ぎたかと、ちょっと胆を冷やしたよ」
ふーん? そんな感じっぽいとは思ったが、やっぱりそうなんだな。
罪に問われる恐れが無いなら、後は、これをどう使うかだ。
「ありゃあ、痛そうだな。―――、お?」
何人かが刃物で切られて大怪我をしていたので、毛布で包帯でも作ろうかとリュックをゴソゴソしていたら、ケイナが郷で持たされていたキノコ薬で治療をして回っている姿が目に留まった。
他人の世話を焼いていられる立場じゃ無いのに優しい子だ。
「ありがとうよ」
「いいえ」
手当てされた老人のお礼に、小さな声で答えたケイナが首を振っている。
問題なさそうだったので今回も活躍できなかったドラゴン棒を拾いに行き、戻ってくると、ケイナが村人に囲まれて、お礼を言われて小さくなっていた。
「ありがとう! いやあ、本当に助かったよ!」
「この薬も、高い薬じゃあなかったのかい?」
「あ。いえ・・・」
ちょっと拙いな。
消え入りそうな声でケイナが言葉を濁しているのに、悪気は無いんだろうが、オッサン、オバサンが質問責めにしてやがる。
「ハイ、ちょっとゴメンよ」
「―――、あっ」
背中から脇に両手を差し込んで、ケイナをヒョイと持ち上げて俺の肩の上へと避難させた。
肩に座らされたケイナは俺の頭にしがみつく。
下から顔を覘かれても、深くフードを被っているから耳は見えねえだろ。
「うちの子は人見知りでな。そう、詰め寄らないでやってくれ」
「そ、そうか。そりゃあ済まなかった」
村人から申し訳なさそうに謝られると、ケイナは無言で首を振っている。
安心したように息を吐いてるから、避難させて正解だったな。
「しっかし、まあ・・・」
キノコ薬って、めっちゃ効くんだな。
盗賊に斬られて、もう助からないと諦めていた怪我人も、一命を取り留めそうだと涙を流している村人が居る。
この効き目なら、郷の連中が命懸けでキノコ狩りに行くのも頷ける。
とはいえ、二人ほど間に合わなかった死人が出ていた。
ヒトの街へ⑤です。
セーフ!
次回、ディール!?




