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盟友 ⑤

 明かりが消え、もう一度、指先を触れさせると、明かりが点く。

 刻印の魔素が途切れ、再び、指先から僅かに流れた僕の魔素が刻印の途切れを繋いで、術式が起動し直したのだ。

 術式が定めた定義に基づいて、刻印が魔石から魔素を吸い上げ、光属性の刻印の一部が、柔らかに発光する。


「おお。電気が来てる様子はないのに、どうやって点いてんのか気になってたんだ」

「“デンキ”っていうのは、チキュウ世界の概念だね。昔の勇者の記述を本で読んだことがある」

「概念じゃなくて、物理現象の一つだな。例えば、こう、ゴシゴシすると・・・、ほれ。これを静電気というんだ」

 腰のベルトに挟んでいた魔石のナイフの横面を、上着の袖で何回も擦ったあと、自分の頭に当てて持ち上げる。

 洗い晒しの黒髪が逆立って、持ち上げたナイフと一緒に持ち上がった。


「“セイデンキ”というのは、デンキの一種かな? それを利用するのかい?」

「静電気を、もっと強くして、電気回路に乗せると、そのランプみたいなことが、色々と出来るんだよ」

「実に興味深いね。僕も、一度、チキュウ世界に行ってみたくなったよ」

 “かいろ”、は、刻印みたいなものかな?

 魔素に頼らない、物理現象だけの世界か・・・。

 こちら側の世界でも活かせることは、とても多そうだ。


「あっちは、あっちで、資源問題だの環境破壊だのポリコレだの、そんなに良いことばかりじゃねえけどな。こっちの形態とは全く違う方向で発達してるのは確かだな」

 “ぽりこれ”、という言葉の意味はサッパリだけど、うんざりした彼の表情を見る限り、きっと、ロクでもないモノなのだろうと想像はできる。

 彼が「良くないもの」と考えているのなら、僕らも迂闊(うかつ)に接触するのを避けた方が良さそうだ。


「それでだ。これは僕からの提案なんだけど、キミの目的のために、欲しい魔法道具や魔法術式は無いかい?」

「・・・俺に協力してくれるのか?」

 目を見開いてパチクリと瞬きした後、驚いたようにテツは言う。

 何で、そこで驚くかな。

 誰かの力を当てにするのでは無く、自分一人の力で黒龍王の下まで行くつもりだったんだね。


「キミには、郷や僕ら兄妹の命を助けて貰った恩もあるからね。最終決定はまだ聞いていないけど、お祖父さまも、恩返しの意味も込めてケイナや郷の者をキミの旅に同道させるつもりのようだ」

「右も左も分かんねえんだから協力は助かるんだが、子供を危険に晒すのは賛成できねえなあ」

 テツは難しい表情でがしがしと頭を掻く。

 これが困ったときの彼の癖だと分かってきているけど、僕らもここで退けない。


「何より、ケイナ自身が森の外を見たいと望んでいる」

「子供は、家族の元に居るのが一番だぞ」

 ごもっとも。

 でも、そのぐらいじゃあ引けないよ。


「ケイナなりに、そうすることが郷のためになると覚悟を決めたようだよ」

「・・・子供が決断することかよ」

 呆れたように、テツは深い溜息を吐いた。

 もう一押しかな?


「森の外―――、ヒトを恐れる気持ちは強いけどね。お祖父さまも、このまま森に隠れていたって、僕らエルフ族に未来が無いことは分かっていらっしゃるんだよ」

「それは、そうなんだろうけどなあ・・・」

 うーん。と、腕組みで唸る。

 ケイナを危険に晒したくないのだろうね。

 こういうところに彼の善良な本質が表れている。


「エルフ族は個々の寿命が長い種族だけどね。僕らが、この森の、この場所に移って郷を拓いて、もう100年以上になる。森の別の場所に初めて郷を拓いた当時は、僕らは400人以上いたんだよ」

「建物の数から見て、400人も居るようには見えねえな」

 すっ、と、目を細めた。

 分かってくれたようだ。


「今はもう、100人ほどしか残っていない」

「・・・それほど過酷な環境ってことか」

 深刻だな、と、彼は再び溜息を吐く。



盟友⑤です。


レッドブック、カマーン!(縦笛

次回、決断!?

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