盟友 ④
「うん。だから、キミの言う“対抗力”って考え方に、すごく興味がある」
「なるほどな。俺としても、ケイナが酷い目に遭わされるのは本意じゃないな」
邪気のない感じでニッと笑うけど、友好的な笑顔と全身から発散している迫力が釣り合ってない。
ケイナを害しようとする者が現れようものなら、ショージョーを討伐したように、きっとテツは力尽くで脅威を排除するんだろう。
ショージョーの群れと人間なんて脅威度は較べるまでもない。
彼の庇護下でなら、ケイナは大丈夫じゃないかな。
「どうだろう? 僕の工房で、もう少し話さないかい?」
「よし。行こう」
即断即決。
思わず笑ってしまった。
話していて、本当に気持ちがいいね。
僕のほうが背中を押されて、移動を催促されてしまったよ。
「どうぞ。楽にしてくれていいよ」
「へえ。本当に工房なんだな」
作業台を挟んで、僕らは椅子に腰を下ろす。
子供みたいに目を輝かせて、彼は、卓上ランプの明かりに照らされた、薄暗い屋内を見回している。
僕の工房はお祖父さまの家に併設されていて、母屋よりも少し小振りな木造家屋だ。
僕が籠もって、日がな一日、研究していたりするから、郷の者でも、お祖父さまとケイナ以外が訪れることは滅多に無い。
「僕は、ケイナほど魔素の扱いが得意じゃないからね。ただ、魔素の動きが、他の人たちよりも良く見える“眼”を持っているのさ」
小さく、肩を竦める。
手先の器用さと魔素制御の器用さは全く別のものだ。
精霊との付き合い方はケイナのほうが上手くて、魔素の感知は僕の方が上手い。
手先の器用さが手伝って僕は刻印や素材利用が趣味になって、ケイナは精霊術式の上達に熱心だ。
「よく見えると、どんなことが出来るんだ?」
「例えば、魔石を用いた魔術道具の製作とか、新しい魔法術式の魔方陣を作ったり、だね。正直にいえば、チキュウ世界への“双方向の道”を作ったっていう黒龍王の空間接続術式にも少し興味がある。人間が使う術式では、一方的に向こう側の対象物を“こちら側へ落とし込む”だけで、“双方向”なんて実例は聞いたことが無いからね」
「魔石って、犬石とかのことだったか。どんな道具が作れるんだ?」
ちょっと驚いた。
立ち回りようによっては、莫大な富を生み出すことだって出来るかも知れないのに。
話した感じ、テツが気付かないとは思わない。
彼は理解力が高いし、頭の回転も悪くない。
「キミは空間接続術式に興味を示さないんだね。キミの目的に沿っているはずだし、キミたちの世界は、こちらの世界よりも文明が進んでいるんだろう? 自由に行き来できれば、こちらの世界を征服できるかも知れないよ?」
「俺は、向こうへ帰れりゃ、それでいいからな」
肩を竦め返されてしまった。
「それには、実際にやって見せたトカゲ野郎を取っ捕まえるのが、一番、確実で、一番、手っ取り早い」
「確かにね」
「ま。一つの可能性って意味では覚えておくさ。変なもんが有ると、変な欲を出すバカ野郎が出て来ないとも限らねえからな」
「なるほど」
彼は自身がいなくなった後に、“余計なもの”を残したくないのか。
欲が無い、というよりも、本当に興味が無いのだろうね。
目的を最短距離で達成するために、それ以外のことは、バッサリと切り捨てているのだろう。
自分の望みを、一切の迷い無く、明確に見据えていなければ出来ない判断だ。
”魔獣の血肉を啜る”という、一見、奇っ怪な行動も、彼の中では検証の上で導き出された、最短距離での方法論なのだろうね。
それでいて、こちらの未来に禍根を残さない配慮までしている。
彼は目先の利益に釣られない。
良いね。
彼なら信じて良いと思う。
彼の協力が欲しい。
寄り道をしてでも、彼の協力を得られる余地は有るかな?
僕は彼に対して、寄り道の価値を提示することが出来るだろうか。
「話を戻そう。―――魔石っていうのは魔獣や魔物の体内で魔素が固まってできた結晶体でね。魔法力の、いや。違うな。生命力の塊みたいなものなんだよ。例えば、魔石を魔素の供給源に光属性を刻んだ術式に流してやれば、こうやって火を使わない明かりになる」
僕は雑多に物が置かれた机の上から一つの魔法道具を手に取って、魔石へと繋いだ刻印に指先を触れさせる。
盟友④です。
人物評!
次回、ディール!?




