盟友 ③
「精霊が応えた、ってのは?」
「僕らが使う精霊魔法の考え方だね。精霊は術者の魔素が好きか嫌いかにしか興味を示さなくて、魔素を代償に術者の願いを叶えるんだよ」
「ケイナは大人になりたくないと願ってるってことか?」
真っ直ぐなテツの目が僕の目を見る。
そう来たか。
原因が精霊ではなくケイナの方に有ると。
僕らがその仮説に辿り着くまで、結構、時間が掛かったんだけどね。
「それは無いと思うよ。だけど、精霊は明確に提示されていない願いを、思いも拠らない形で叶えてしまうことがあるんだ」
「ケイナの自己否定的な無意識を精霊が勝手に解釈して、勝手に叶えたってことか」
「そういうこと。この無意識がなかなかに厄介でね。心の奥底にある願いだから、強固で解除が難しい」
理解が早いね。
チキュウ世界では心の病に対する研究が進んでいるんだろうか?
いや。本当にこれを「病」と言って良いのかどうかも分からないんだけどね。
「解決方法は?」
「正直、分からない。ケイナが自分を許せるようになれば、あるいは? かな」
「出来るのか? この郷の中で」
核心を突いてくるね。
問題は、そこだと僕も思っている。
この閉鎖的で、根底に絶望が蔓延る郷に居る限り、ケイナの心は変わらないだろう。
「ところで、キミ、勇者なんだってね?」
「なんだよ、いきなり。嫌なことを思い出させないでくれ」
額に手を当てて、天を仰ぐ。
「なんで嫌なのさ」
「俺の目的は、黒トカゲをブン殴って、元の世界へ帰ることだけだ」
迷いの無いテツの目に、本心から言っていることが感じ取れる。
彼の欲の無さは、これかな?
「チキュウ世界だっけ? 向こうに何があるんだい?」
「10歳の娘を残してきてるんだよ。見た目だけなら、ケイナと同じぐらいの年頃だな」
「それは・・・、つらいね」
僕もケイナが大切だから、分かるよ。
彼は、憤然と拳を握る。
「だから、この世界の面倒な奴等なんぞ、知ったこっちゃねえ!」
「でも、その面倒な奴等のほうが、キミのことを放っておくかな?」
じっとりとした目で、僕を睨んでくる。
僕を睨んでも仕方ないんじゃないかな。
「爺さんから聞いたのか?」
「うん。僕もその話に、ちょっと興味がある」
しばし、じっと僕の目を見つめたあと、テツは少しだけ低くなった声で言う。
「・・・神教会の亜人種迫害と、エルフ狩りか?」
しっかり、見てるね。
僕だけじゃなく、お祖父さまも興味を持っていることにも気付いている。
武力一辺倒の男かと思えば、そうではない。
本当に、面白い男だ。
「話が早くて助かるよ」
「俺にとっても、神教会とかいう連中は、敵になるだろうからな」
「僕らにとっては、神教会の版図外の国も、まるで信用に値しないんだけどね」
腕を組んで、再び、しばしの沈思。
「・・・お前は、森を出たいんだな?」
僕の本気を確認するように、問う。
それこそが、僕らエルフ族が抱える、問題の本質。
この森に潜み続ける限り、僕らは絶望に囚われたままだろう。
すごいね。
そこまで態度に出したつもりは無かったんだけど、言い当てられてしまった。
思惑を隠すよりも、彼とは本音で話したほうが良さそうだ。
盟友③です。
本気と書いて(以下略!
次回、魔法道具!?




