盟友 ⑥
「種族としては、ヒトから逃げる際にばらばらに散ってしまったから、この郷に居る者が、エルフ族の全てって訳ではないと思うけどね。エルフ族を導いてきた一族の末裔としては、看過できる状況ではないんだよ」
「おい。それって」
「世が世だったら、お祖父さまや僕ら兄妹は、王族って呼ばれていただろうね」
だから、僕らが持つ“秘術”に類する術式には、価値がある。
天を仰いで、両手で黒髪を抱えた。
「マジかああ~・・・。もう、しっかり巻き込まれてんじゃねえかよ!」
「そうだねえ」
くっ、くっ、と、喉から笑いが漏れた。
反応が、いちいち面白いよねえ、彼。
「はあああ~・・・。で、俺に何をさせようってんだ?」
「誤解しないでくれ? 僕らはヒト族と違って、勇者であるキミに何かをさせようとは考えていない。キミの目的を一日も早く達せられるように、僕らはキミに協力する。その上で、これからキミが作り上げるだろう“対抗力”の一部として、僕らもそのお零れに預かれないだろうか、と、考えている」
じっと聞いていたテツは、小さく首を傾げて見せる。
でも、僕の目を真っ直ぐに見る彼の目は、見定めようとする者の目だ。
「買い被りすぎじゃねえか?」
「これでも人を見る目はあるつもりだよ。キミほど目的を明確に持って、最短距離の結果を得るために手段を選ばず突っ走る人間を、僕は見たことがない」
大真面目な顔で、彼の目を見返した。
これは、正真正銘、僕の本心だ。
僕自身が手段を選ばない性質だからこそ、そう思う。
きっと、彼は、やり遂げるだろう。
「ケイナを俺に預けるって件は? 俺を手放しで信用する理由には、ならねえだろ」
「情に篤く、誠実な男だ、とも、僕らは評価しているよ。ケイナの窮地を救うために魔獣討伐を遣り遂げたキミは、飛び抜けた行動力が有り、目先の俗物的な利益で動く男では無い、とも、思うね」
「過分な評価、ありがとうよ!」
ヤケクソ気味に言うけど、踏ん切りは付いたみたいだ。
「そこで、魔法道具や魔法術式の話に戻るんだけどね。この郷は滅びに瀕した貧しい集落だから、“モノ”がない。“人”は出せるが、多くの人を出すと、僕らのほうが悪目立ちして、キミの足を引っ張ってしまう恐れがあるかもしれない。だけど、僕らにはヒト族が持っていない“技術”―――、魔法術式が出せる」
「そういうことか。魔法道具なんて言われても、今、どうしても欲しい物なんて―――、いや・・・。有るな」
思い付いたように、中空へと視線を彷徨わせる。
「なんだい? 僕らエルフ族の持てる技術の全てを以て、要望に応えようじゃないか」
「移動手段だよ」
テツはニヤリと口角を引き上げる。
「馬とか、馬車とか、乗り物のことかい?」
「建物の造りを見て予想はしてたんだが、やっぱり、そういう文明発展レベルなんだなあ。考えたことは有ったんだが、森の中じゃあ、動物―――、生き物だと、魔獣どものエサにしかならないんじゃねえか? って迷ってたんだよなあ」
彼が口にした「そういう文明発展れべる」という言葉に引っ掛かりを覚える。
「動物以外の乗り物が有るのかい?」
「クルマとか、バイクとか、飛行機とか、船―――、は水上しか使えねえか。有るぜ?」
彼は指折り数えてみせる。
万が一の際には、僕らが脅威から逃げ仰せるためにも使えるはずだ、と。
そんなものが存在するなら、神教会は、なぜ、その技術を実用化しなかった?
100年と少し前の勇者からも、そんな話を聞いたとは、お祖父さまも言っていなかった。
かの勇者は神教会を否定的に考えていた様子だから、神教会に情報を与えなかったのだろうか。
「文明発展」ということは、技術的な―――、いや。召喚した勇者の時代的なもので、神教会も手に入れていない技術なのかな?
盟友⑥です。
技術と技術の邂逅!
次回、欲しいものリスト!?




