盟友 ①
お祖父さまと、郷の大人たち、そして、“彼”が、森から帰ってきたようだね。
少し、帰りが遅かったので、心配したが、何事も無かったようだ。
バラバラになったショージョーの死体を担げるだけ担いで帰ってきたのは、何事も無かったとは言い難いか。
それにしても、これは、珍しいこともあったものだね。
あの、警戒心が強く、郷の中の者にも心を開いているのか怪しい大人たちが、“彼”と、ずいぶん、仲良くしているように見える。
魔獣の心臓で、焼き肉をして帰ってきた?
お祖父さまたちも、体が軽い気がする?
それは、また・・・。良かったですね。
「やあ、テツさん。ケイナが目を覚ましたよ」
「おお、ケルトレイクス。ケイナは大丈夫そうだったか?」
「僕のことは、レイクスでいいよ」
「んじゃ、俺のことも、テツでいい」
片手を挙げて大人たちと別れの挨拶をしていた黒髪の大柄な男に声を掛けると、“彼”は人好きのする、ニッとした笑みを浮かべる。
「心配ないよ。おそらくだけど、血液は体内の隅々にまで魔素を運ぶ役割が有るからね。魔素に酔ったんじゃないかな」
「アレかあ・・・。子供には、不味かったかなあ」
「心当たりが?」
がしがしと頭を掻き、バツの悪そうな顔をする。
酔った、という言葉に対しての反応だろうか。
一見、粗野な印象を受けるが、人当たりは悪くなく、至極、善良な男のようだ。
「ケイナはボス猿にも一撃入れてたから、効いちまったんだろう、と思ってな」
「その”ざる”というのは?」
「猿、だな。地球にはそういう種類の野生動物が居るんだよ」
ショージョーはチキュウ世界にも居るのか。
あの同じ手に引っ掛からない知恵の回る魔獣は、とても危険だ。
「へえ? チキュウ世界も危険なんだね」
「ああ、いや。猿はもっと小さい動物でな。あの大猿ほどデカくねえんだ」
「ふぅん。そうなんだね」
そう言えば、チキュウ世界には魔素が無いと勇者から聞いたとお素地さまが言っていたことが有ったね。
魔素が無い世界だと魔獣も大きくならないのかな。
いや。そもそも魔素が無いなら魔獣は生まれないのか。
「んで。ケイナにボス猿の血を飲ませたのが、効き過ぎたんじゃねえかと」
「血を飲んだことと、戦闘中のことが関係するのかい?」
「あるぜぇ? 俺の体感による感想だから、実際のところはよく分かんねえけど」
聞いたことの無い説だね。
お祖父さまの知己だった勇者は、対魔族大戦で魔族領域へ攻め入ってから異常なほど強くなって帰ってきたとか。
ヒト族国家の内輪揉めで兵站が滞ることが多くて、前線は兵站不足で酷い有り様だったらしい。
もしかすると、テツの説と勇者の話は関連性が有るのかも。
もう、その勇者は無くなっているだろうし、話が聞けなかったのは残念だな。
「血が、一番、効率が良いって話のことかい?」
「ケイナから聞いたのか」
自分で倒したばかりの魔獣の血肉を摂ると、強い魔獣であればあるほど、自分が強くなるのを実感するだそうだ。
その際の、血を飲んだときが、強い酒を飲んで臓腑が焼けるような、“一番、効く”感じがするらしい。
そして、カルキノスを倒したときの戦闘に参加しなかったケイナは、カルキノスの血を摂っても”効いた”様子は無かったそうだ。
普段から魔獣を狩って食べている僕らの世界の住人が知らない情報だというのなら、この“自分で倒した”が重要なんじゃないか、との、テツの考察が付いてきた。
僕らも魔獣を狩るが、蛮族ではないからね。
必要な素材を剥ぐだけで、血液を飲むという発想は無かった。
しかし、魔法道具製作において、血液は定番の素材の一つに挙げられる。
そう考えると、説得力は、有るね。
「僕を郷に連れ帰る際にも、僕に血を飲ませていたと聞いたよ」
「気休めっていうか、強壮剤になるんじゃないかと思ってな」
「そうだね。目が覚めてから、体が軽い気はするね」
「効いたんなら良かったよ」
自分で狩った魔獣の血じゃなくても、魔獣が強ければ、一定の効果はあるようだね。
やはり、色々と試してみる価値は有りそうだ。
あ。ちなみに、と、僕は続けた。
「子供っていうけど、ケイナは今年で58歳だ」
「はあっ!?」
愕然とした顔で、バッと僕を見る。
動じない男かと思ってたけど、そうでもないんだね。
人間くさい反応で、むしろ好感が持てる。
盟友 ①
少女(58歳)!!
次回、成長不良!?




