小さな魔法使い ④
「聞いていましたか!? 本当に危険な魔獣なんです!」
「野生動物なんてもんは、何だって危険なもんだ」
ああ、もう! この人は!
先ほど、この人は「見てくる」と言っていましたが、絶対に違います。
この人は、ショージョーを討って追い払うつもりなのだと確信しました。
恐らくは、わたしが郷で暮らせるように、と。
客人であるこの人だけを戦いに行かせられるわけがありません!
お気楽な調子で言うテツさんの前へと、わたしは回り込みます。
「ショージョーを討つなら、わたしもお手伝いします!」
「あー、そっかあ」
私の顔を見て小さく目を見開いたテツさんは、困った様子でガシガシと頭を掻きます。
もう一押しでしょうか。
「こう見えても、わたしは魔法術師ですから、前へ出て戦うことはできませんが、後方から援護することならできます!」
「んじゃ、ケイナはこの離れた場所から、余裕が有れば適当に魔法を撃ってくれれば良いよ」
一つ溜息を吐いたテツさんは、仕方ない、といった感じで、私の頭をポンポンと撫でました。
ここから、ですか?
離れすぎではないでしょうか。
「こんなに遠くから攻撃術式を放っては、細かい狙いが付きません。テツさんが危険では、ありませんか?」
「避けるから、大丈夫、大丈夫」
はっはっは、と笑いながら、緊張感の無い返事が返ってきました。
「避けるって・・・」
「危ないのは分かるからなあ」
何が分かるんですか?
分かっていないじゃないですか。
さっきから危ないと言っているのに、意味が分かりません。
「ケイナは無理しなくていいから、見つかったら逃げるか、自分のほうへ向かってくるヤツだけは、距離を詰められる前に片付ける方向でなー」
「ちょ、ちょっと、テツさん!?」
ひらひらと手を振って、行ってしまわれました。
群れのほうへと歩きながら、いくつも小石を拾っていらっしゃるようです。
テツさんの大きな拳よりも大きな、わたしの顔ほども有る石なので、あれを小石と呼んで良いのでしょうか?
ポンポンと軽く手のひらの上で投げて弄んでいらっしゃるのだから小石で良いのでしょうね。
キョロキョロと足元を見回しながら、時折、屈み込んで腕を伸ばし、上着の裾に小石を拾い集めている様子に見えます。
仕方ありません。
出来るだけ、お邪魔にならないように攻撃術式を放ちましょう。
歩いて行ったテツさんが、足を止めました。
わたしからの距離は50メテルほどでしょうか。
どうやら、群れの姿を視認されたようです。
拾い集めていた小石をバラバラと足元に落としておられます。
バラバラと? ドスドスと重たそうな音がしていますね。
静かな森の中ですし、わたしたちエルフ族は耳が良いですから、聞こえてしまうのですよ。
テツさんが右手に一つの小石を握って、調子を確かめるように肩をグルグルと回していらっしゃいます。
両掌を結んで頭上にまで振り挙げ、高く片足を蹴り上げて、小石を投げる素振りをされているので、魔獣の群れを挑発でもされるのでしょう。
変わった投げ方ですね。
「―――ふえっ!?」
投げた、と思った瞬間、バーン!! と、大きな音がして、遠くの大木が倒れていきます。
メキメキと砕ける音が、わたしの居る場所まで響いてきます。
何が起こったのか分かりません。
私の頭が理解することを拒否したのかも知れません。
ギャア、ギャア! と、魔獣が逃げ惑う鳴き声が聞こえてきます。
テツさんは、足元の小石を拾い上げては、次々に投げています。
ズガーン!! ドゴーン!! と、何度も大きな音が聞こえてきて、何本もの大木が倒れていく様子が見えます。
太くて、硬くて、一本を伐るのにも大変な労力と時間が掛かる"魔の森”の樹が、ですよ?
小さな魔法使い④です。
小石とは(哲学
次回、精霊魔法!?




