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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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郷の掟 ④

「んん? 掟? 禁忌?」

「はい」

 痛みを堪えるように瞼を閉じて、爺さんは頷いた。

 精霊魔法自体が門外不出の秘伝だから、この村―――、“郷”の外の者には見せてはいけない、という掟があるらしい。

 郷の外の人間との接触自体が良くないらしく、郷の存在自体が外の者に知られてはいけない禁忌だったらしい。


「儂らエルフ族は、郷の外とは300年以上、接触を断っておるのです。その後、一度だけ例外は有りましたが」

「もしかして、俺と会ったこと自体が拙いのか?」

 深刻な表情で爺さんは深く頷く。


「儂らが最後に接触を持ったヒト族は、郷の外で偶発的に鉢合わせたものでした。それも100年以上前、お一人で武者修行に森へ入られていた勇者様となりますな」

「また勇者かよ。100年以上前の日本人って理解で良いか?」

「はい。それも、たまたま儂が同行していた上に、お会いした勇者様も旧知の勇者様と知己とのことで、儂らとの接触は他言無用との約定を飲んでいただきました」

 待て待て。雲行きが相当に怪しいぞ?


「そのときは、この郷の存在もその勇者に教えなかったと?」

「その通りです」

 あっちゃあ・・・。

 爺さんの話に頭を抱える。

 何となく状況が飲み込めてきたぞ。


 俺と会ったこと自体が拙い上に、会った場所も、会い方も、さらには、俺が結界を破って郷のテリトリーに侵入したのが非常に拙いってことか。

 だから、女の子―――、“ピュリケイナ”という名らしい彼女は、郷へ帰る道中で俺とのコミュニケーションに困っても、俺に情報を与えないために魔法を使わなかったんだと。


「この子から、大凡(おおよそ)の経緯は聞きました。まず、儂の孫たちを救ってくださったこと、深くお礼を申し上げます」

 丁寧に頭を下げる爺さんは、ピュリケイナと怪我人“ケルトレイクス”の祖父であり、この郷の長(おさ)を務める最長老格だと言った。


「郷の掟は、他にも二つあるのですよ」

 痛ましい表情で、祖父ケルレイオスは、孫娘ピュリケイナを見た。


 一つ。「郷の外の人間に精霊魔法術式を見せてはならない」

 一つ。「郷の外の人間にエルフ族であることを悟られてはならない」

 一つ。「外の人間にエルフ族の郷の存在を知られてはならない」


「やっぱりか・・・」

 見事にスリーアウトだ。

 ピュリケイナは、俺を郷へと案内したことで、「掟に背いた」ということらしい。


 偶発的なものとはいえ、俺が結界を見破り、諍いを避けるためとはいえ、結果的にエルフ族であることを明かさざるを得なくなった。

 俺が結界を破ってテリトリーに侵入した時点で、この場所にエルフ族の重要施設が存在することはバレたも同然だ。

 俺に弓を向けていた男がピュリケイナに乱暴を働こうとしたのは、「破戒を咎めた」のだそうだ。


 しょんぼりと俯いているピュリケイナを見る。

 ピュリケイナとしては、自分を庇って怪我をした兄―――、ケルトレイクスを助けたい一心で、掟を破る覚悟をしていたのだそうだ。

 意識の無い兄は、将来的な長として郷に絶対不可欠な人物で、兄と郷の両方を救うために、ピュリケイナは自分の身を犠牲にしたということだ。

 真剣な目でケルレイオスと向き合う。


「掟ってヤツを破ると、どうなるんだ?」

「・・・郷からの追放です」

「はあ?」

 苦しげに告げるケルレイオスに対して、ピキッと、こめかみが引き攣る。

 腹を減らした野獣が蔓延る森へと追放―――、要するに、死ね、ってことだ。


 同胞を生かすため、戒めを犯した者を殺す。

 たとえ、小さな子供であろうと。

 なんだそりゃあ?



郷の掟④です。


非情な掟!?

次回、言い分!

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