新たな盟約 ③
「あー・・・。うちの連中が内戦のときにあちこちで噂を集めてきてな。その中の1つに、そういうのが有ったんだ」
状況を理解したフレイアさんが爺さんへ視線を戻して首を振る。
「私などが始祖レティアの生まれ変わりなど、烏滸がましいと思っているのですが」
「いやいや。しかし、これは驚きましたな。そういった噂が有ると聞いてはいたのですが、これほどまでに似ておられるとは思っておりませなんだ」
今、話題に上がっているレティアって人は、500年前の対魔族大戦期に英雄の1人として名を残した女傑だと聞いた。
俺にそれを教えてくれたのはクァタルで、結構、有名な武将だそうだ。
フレイアさんの謙遜に、懐かしそうに目を細める爺さんもまた首を振る。
ウォーレス家の面々も爺さんの答えに目を丸くしてフレイアさんを見る。
注目を集めたフレイアさんは、といえば居心地悪そうに顔を背けている。
とはいえ、英傑として名を馳せた遠い祖先に似ていると言われることに、拒絶感を持っているわけではなさそうだ。
意外だな。この傍若無人な感じの姉ちゃんが、初心な反応を見せるなんてよ。
微笑ましそうにフレイアさんを見ていたハロルドさんが爺さんへと視線を戻す。
「それほどまでですか」
「ええ。まるで生き写しです。―――出来れば、友の墓前を訪いたいと願っておるのですが、可能でしょうか?」
柔らかい笑みから一転して、爺さんが真摯な目で問う。
ああ。爺さんの目的はコレか、と思わせる目だ。
ずっと来たかったんだろうな。
いいや。今になってのことではなかったんだろう。
盟友に会いたくても会いに来られなかった爺さんの事情は、郷の連中の反応を思えば理解できる。
500年も経って、多くのヒト族がエルフ族の存在を忘れただろう今でも、ヒト族への不信感と恐怖に縛られている連中がいるんだ。
当時の反発がどうだったかなんて考えるまでもない。
色々と考えさせられちまうな。
当時、爺さんがエルフ族の反発を抑え込んでリテルダニア王国を頼っていれば、歴史はどうなったいただろうか?
エルフ族は今ほど数を減らさずに済んだか?
国際情勢はどうなった?
今もこの国は存続できていただろうか?
昔話になっちまった「IF」を考えるだけ無駄なことは分かってるんだが、種の存続が厳しいほど数を減らしちまったエルフ族の現状を思えば、どうしても考えちまう。
ハロルドさんもハインズさんも表情を柔らかくする。
「後ほどご案内しましょう。始祖レティアも喜ばれることかと」
「どうでしょうな。叱られるやも知れません」
爺さんの目が友の面影を残すフレイアさんへ向く。
ハロルドさんたちの目もフレイアさんへ向く。
「それほどまでに始祖レティアがフレイアと似ておられたのであれば、烈火のごとく怒り出すやも知れませぬな」
「やはり、よく似ておられるようだ」
故人を知る爺さんも感想に、フレイアさんを知る面々から笑い声が上がった。
どうやら、爺さんの今は亡き友は、本当にフレイアさんに似ていたらしい。
何度も出汁にされたフレイアさんが痺れを切らして纏めに掛かる。
「いつまでも立ち話も有るまい? さっさとご案内しろ」
「そうだな。―――閣下。こちらへ」
「痛み入ります」
ハロルドさんが無骨な砦そのものに見える領主館の入口を手のひらで示し、爺さんも誘導に従う。
いよいよか。
ここからがエルフ族の身の振り方を決める最終決戦だ。
ここ数ヵ月間を費やした俺たちの活動も、ここが纏まれば一先ずのセーブポイントを迎える。
今まで、話し合いの場に使われることが多かったのは領主執務室か食堂だったんだが、正式な賓客で、なおかつ大人数となれば、ちゃんとした会議用の部屋を使うらしい。
爺さんを筆頭とした郷の連中に付いて1階の部屋へ通される。
何度も前を通ったことは有ったが、この部屋へ入るのは初めてだな。
観音開きの重厚な扉を潜ると、奥に深い部屋のド真ん中に10メートル以上もの長さが有る木製テーブルがドンと置かれていて、テーブルの両側には10脚以上の椅子が並べられている。
かといって、全員が全員、テーブルに着くわけじゃねえ。
レイクスとケイナも爺さん側のオブザーバーとして席に着いて、郷の連中と俺たちは爺さんの後ろ、壁際に並び立つ。
ウォーレス家側でテーブルに着くのは、一族の長であるハインズさんとセリーナさんの夫婦と、息子のハロルドさんと孫の金髪嬢ちゃんだけだ。
フレイアさんも銀髪嬢ちゃんもハインズさんの後ろで並び立っている。
この顔ぶれを見れば、領主一族とエルフ族の旧王族の話し合いであることが分かる。
共に、この場の最高権威を持つ者同士の正式な会談ってわけだ。
新たな盟約③です。
正式な会談!
次回、具体論!?
※ あひゃあ。大遅刻ですー!
といいいますか、実は先日の風邪が丸っきり治っておりません!
最初期の2日間は知能デバフでお休みさせていただいたのですが
今日に至っても発熱と咳が続いておりまして、症状が悪化した昨日の夜
いよいよ生命の危機を感じて、今朝から病院で点滴を打たれておりました
厳戒態勢で隔離されつつ改めて例の流行病ではないかと検査されまくりまして
幸いなことに疑惑が晴れて解放された次第です!
そんなわけで大遅刻と相成りまして、ごめんなさいです!




