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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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世界の違い ㉛

「何でもない。さあ、始めようか」

「お、おう」

 仕方ねえ。

 付き合わねえって選択肢はなさそうだから付き合うか。


 ハロルドさんが先導して訓練場の空いた空間へと歩み出していく。

 早朝だってのに、ハロルドさんはキッチリと身なりを整えていて、剣を振り回して暴れる格好じゃねえと思うんだがなぁ。

 本人が構わねえというのなら、構わねえんだろう。


「誰か訓練用の剣を」

「はっ。こちらを」

 ハロルドさんが声を掛ければ、ギャラリーを決め込んでいる騎士の1人が鞘に入った剣を届けに来る。

 おお。柄まで入れても1メートル程度しかない普通の剣だ。


 訓練用とはいえ剣は剣なんだが、ハインズさんが振り回していた長大な剣に比べれば極めて常識的で安心感を覚えちまう。

 いかにハインズさんが常識外れな筋肉ダルマなのかがよく分かっちまうな。

 騎士から受け取った剣を鞘から抜いて、右腕1本で1度2度と振って具合を確かめたハロルドさんが、俺に向かってビタッと剣先を向けてくる。


「君に恨みはないが悪く思わないでくれ」

「亡き者にする気マンマンじゃねえか!」

 真面目な顔で言ってんじゃねえよ!

 洒落になんねえから!


「気のせいだ。―――行くぞ!」

「うおっと!?」

 言うが早いか、5メートル以上の距離を一足飛びに詰めてきたハロルドさんの剣が、反射的に1歩下がった俺の胸元を掠める!


 こいつら1歩の距離感がおかしいんだよ!

 パワーでゴリ押ししてくるハインズさんに比べて、息子のハロルドさんは対照的な印象を受ける。

 動きが速くて、剣の振りがコンパクトで、振りのサイクルが早い!

 ハロルドさんの性格を表すように効率を突き詰めたような剣は、反撃に出るタイミングを掴むのが難しい! 


「ルナリアが欲しくば、私の屍を乗り越えていけ―――ッ!!」

「いやいやいや! 欲しいなんて言ってねえから!」

 青筋を立てて叫ぶハロルドさんにツッコミを入れるが、全く聞く耳を持たねえ!


 おい! フレイアさんよ!

 アンタの旦那が暴走してるんだが、手を叩いてバカウケしてる場合か!

 フレイアさんにもツッコミを入れてえんだが、途切れることなく体勢的に嫌な辺りをピンポイントに斬り付けて来やがるから目線を切れねえ!


 嫌らしい剣ってことは、実戦的な剣ってことでも有るんだろう。

 だが、だんだん見えてきたぞ。

 青筋を立てているのはフリ(フェイク)じゃなく、可愛い娘の旦那候補になりそうな奴へのヤキモチは本気のものらしい。


「問答無用―――ッ!!」

 冷静に見えて冷静さを欠いているから、こっちの回避運動に釣り(フェイント)を織り込んでやれば、キッチリと釣られてやがる。

 斬り下ろし、払い、突きとバラエティーに富んだ連続攻撃を避けるだけじゃなく、ちょくちょくパンチを差し込んでやる。


 具体的には、迫ってくる剣の腹を拳で弾いて軌道を逸らしてやる。

 右腕が前に出た半身になって、大振りになるように微妙に大きめの距離が空くように誘導してやれば、引っ掛かったハロルドさんが微妙に空いた距離を嫌がるようと飛び込んでくる!

 ここだ!


「ふっ!」

 大きな踏み込みと共に上段から振り下ろされた剣の腹を裏拳で強く叩く!

 ガンッ! と硬い音を響かせて弾かれた剣が俺の左側面へと流される!


「―――くっ!」

 泳ぎそうになった体を支えるために、ハロルドさんはさらに右足を踏み込んで耐えた!

 体ごと俺の左側面へと行き過ぎちまったハロルドさんは、体の向きを俺へ向け直すと同時に、無理やり止めた剣先を跳ね上げて右から斬り上げようとする!


 残念! 体の向きを変える動きが無駄だったぜ!

 剣を握ったハロルドさんの右手首を左手で掴み取って、斬り上げさせずに押し流す!

 背中を見せたハロルドさんの右手首を俺も右手に掴み変える!

 同時に畳んだ左肘でハロルドさんの背中を押してやった!


 そのまま体重を掛けてやれば、いくら鍛えている男でも崩れた体勢では俺の体重を支えきれねえ!

 左腕が自由なら、転倒して迫ってくる地面へ腕を伸ばして衝撃を殺そうとするのは本能ってもんだ!

 掴んでいるのは右手首だけだが、これで両腕を封じることができた!

 ドスンとハロルドさんの背中にのし掛かって抑え込み、後ろ手に右腕をねじり上げれば剣も握り続けちゃいられねえだろ!


「痛たたたたたっ!!」

 ハロルドさんの口から悲鳴が上がって右手からポロリと剣が落ちた。

 ふう・・・。鎮圧成功だ。


 昔、“おやっさん”に散々ヤラレた組み伏せ技だが、体はキッチリと覚えていたようだな。

 “おやっさん”、元気かなぁ。

 たぶん、社長と一緒にヒナの面倒も見てくれていると思うんだが、また借りが増えちまうなぁ。

 早く帰らねえとブン殴られちまう。



世界の違い㉛です。


押え込み、1本!

次回、第3ラウンド!?


※ いつものちょっと遅刻です!

  サーセン!

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