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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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426/435

世界の違い ㉙

 俺の全くよ。

 気持ちの良い爺さんだぜ。

 袖口から手首へ持ち替えると、ハインズさんも俺の手首を握り返してくる。


 掴んだ手と手が手首同士に引っ掛かってガッチリと噛み合えば、力が無駄なく伝わって引っ張り起こすのにもそんなに苦労はしねえ。

 ムクッと上体を起こしてヒョイと立ち上がった様子を見るに、どこも痛めた様子はねえな。

 実戦の中で命のやり取りを生業としてきただけ有って、投げられるのも上手くてダメージの逃がし方を知っているようだ。


「ええええええ――――っ!! お爺様が負けた!?」

 見物を決め込んでいた騎士やら兵士やらの響めきを貫くような金髪嬢ちゃんの甲高い声が、俺たちのところまでハッキリと届いているが、ハインズさんに気にした様子はねえ。


 嬢ちゃんたちが集まっている場所にケイナたちも居るからそこへ向かえば、入れ替わりにロブウッドが歩み出してく。

 何やってんのかと思えば、へし折れた長剣を拾いに行ったんだな。

 短くなった柄側と折れ飛んだ剣先側の両方を拾い上げて、破断面を睨み付けながら戻ってきやがった。


「なあ。御大さんよ」

「む? 何だ」

 “御大”ってのは大将や長老を指す敬称っつーか愛称だな。

 ハインズさんの前に立ったロブウッドは折れた剣の断面から目を離さねえまま声を掛ける、ある意味メチャクチャ失礼な態度なんだが、ハインズさんは非礼を咎めるでもなく返事をした。


「この剣、打ち直すか?」

「打ち直してくれるのか?」

 剣以外のことが頭にねえ様子のロブウッドの問いに、面白そうな目でハインズさんが返すが、この期に及んでも断面を指先で撫でて素材の質を確かめているらしいロブウッドは顔を上げねえ。


「こりゃあ良い鉄を使ってる。このまま棄てちまうのも勿体ねえよ」

「ほう。ドワーフ族が打つ剣か」

 コイツがそう言うなら相当に質の良い鉄なんだろう。

 そう信じさせる態度だ。

 ここで、ようやくロブウッドが、楽しむように目を笑わせているハインズさんの顔を見上げた。


「剣には打った鍛冶師の魂が宿る。こいつを打った鍛冶師に頼まねえんなら、だがな」

 2メートルを超える巨体のハインズさんに対して、ロブウッドの身長は160センチメートルもねえ。

 親子のような身長差だが、ロブウッドの目には一片の恐れもねえ。

 鍛冶師の矜持だけを感じさせるロブウッドの目を見下ろすハインズさんも、表情を真剣なものに改めている。


「当時の鍛冶師はとうに隠居しておる。頼めるものなら打ち直しを頼みたい」

「ヨシ。そういうことなら預かろう」

 キッパリと意思を表明したハインズさんに、ロブウッドも明確に頷いて剣の修復を請け負う。


 マジかよ。

 故郷を捨てなきゃならなかったときの経緯から、ロブウッドは俺以外のヒト族に対して強い嫌悪感と警戒心を持っている。

 いや。「持っていた」になるのか。

 まさか、コイツが自分から剣の修復に名乗りを上げるとは考えても見なかった。

 修復を請け負ってくれる鍛冶師を探すつもりで居たんだが、予想外のところで予想外の展開になったな。


「おお~。ロブウッドが直してくれるのか。どう見ても特注品だし、勢いで折っちまったから、どうしようかと思ってたんだ」

「直すんじゃなく打ち直しだ。折れちまった剣を繋いでも鈍なまくらにしかならねえよ」

 ロブウッドがジロリと俺を見上げてくる。


 剣もまた道具なんだから消耗品なんだろうが、その辺の現代日本人でしかない俺に、剣の善し悪しや鉄の品質なんて分かるわけがねえ。

 鉄を見て俺に分かるものと言えば錆びてるか錆びていねえかぐらいだからな。

 それ以前に、純粋な鉄か何かの鉱石との合金なのかも見分けが付かねえ。


 親父の決断を聞いてリットも破断面を覗き込みに来た。

 しかし、打ち直しか。

 それって、一旦熔かして鉄の塊に戻してから打ち直すってことか?


「へぇ~。そういうもんか。でもどうすんだ?」

「近く王都へ帰るんだろ? 拠点の炉で打ち直す」

 鍛冶仕事をするなら鍛冶場が必要になるのは当然なんだが、王都の拠点に有るのは小さな鍛冶場だったはずだ。

 確か、馬の蹄鉄を打ったり簡単な補修作業をする程度のものじゃなかったか。


「アレかぁ。使える設備なのか?」

「使えるように作り直すに決まってんだろ」

 これまた、何が正しいのか分かんねえ答えが返ってきたな。

 鉄の善し悪しが分かんねえ俺に、炉の善し悪しが分かるわけもねえ。


「炉から作り直すのかよ」

「久しぶりに良い鉄を見て血が騒いじまってな」

 照れ隠しみてえに目を逸らしながら言ってんじゃねえよ。


 どこに照れる要素が有るのかも分かんねえ。

 つーか、ヒゲ親父の照れ顔になんぞ萌え要素の1ミリグラムも見付けらんねえよ。

 そこまでするもんか? と思う部分も有るんだが、それだけ本気で取り組むつもりなんだろう。


「分かった分かった。必要な材料は言えよ?」

「おうよ」

 リットと2人で剣だったものを検める作業に戻りながら、ヒゲ親父は適当な答えを返して来やがった。

 もう、しばらくはマトモな会話にもならねえだろう。

 ロブウッドとの話が終われば、今度は金髪頭の元気娘が絡みに来た。



世界の違い㉙です。


ポッ///(ヒゲ面

次回、ヤバい気配!?

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― 新着の感想 ―
へし折られた長剣 良い鉄を使っているから打ち直すと そも模擬戦要に刃引きしている筈なのだが!“くつき“の技を使えば真剣と同等か以上のキレ味に……♬(▼∀▼)(#^_^#)
2026/08/05 23:24 あかマント
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