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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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世界の違い ㉑

「というと?」

「80年ぐらい前だったか、戦争に負けて、人も街も文化も、何もかもが焼けて国がなくなりそうになったんだ」

 ケイナんちの爺さんが勇者に会ったと言っていたのは120年ぐらい前だったか。


 大国の南下政策を防ぐ戦争に勝った頃か、そのぐらいだな。

 その頃の日本なら、勇者が「強い国だ」と祖国を評価したのも当然だな。

 そこから、たった40年で真逆の評価に変わるとは、その勇者も思っちゃいなかっただろう。


 “勇王”とかバカっぽい名前を名乗っている野郎は戦後生まれだろうし、どこの国から拉致られたのかも分かんねえしな。

 日本人だとしても、そいつが日本について語らなけりゃ、その後の日本が強い国のままかどうかも伝わらねえだろう。


 そもそも、伝わったからなんだ? って話だ。

 こっちの世界の人間には日本なんて毒にも薬にもならねえお伽噺の国だ。

 地球の世界情勢に興味を持つ奴らなんて、勇者本人とキチガイ教団ぐらいだろう。

 ただ、こっちの世界の人間でも、国の存亡に関与するレベルの為政者となれば関心を持つものらしい。


「80年前というと、1代前の勇者が召喚される少し前だな」

「勇王とかいう奴の前か。そいつの話は聞いたことがねえな」

 こっちの世界に来たばかりの俺が得られる情報なんて、ごく僅かだ。


 どこから仕入れたのか、勇王の情報を俺に教えたのはレイクスやケイナんちの爺さんで、一般の人間からは何の情報も得られていなかった。

 ハインズさんたちのように、敵対者として将来的な軍事衝突を予想している人間の方が詳しい情報を持っている。


「召喚周期から言うと、70年近く前の話だからな。何とかいう国の女性だったらしいが、召喚から数年ほどで自害したと聞いている」

「短命だった勇者の情報は、なかなか漏れて来なくてな」

 渋い表情のハロルドさんと不機嫌そうな前伯爵が新たな情報を口にした。


 自殺ねぇ・・・。

 余程の紛争地域から拉致されたんじゃなけりゃあ、いきなり拉致られて戦争しろと言われても拒絶しかねえだろ。

 “災難”ってレベルじゃねえな。


 キチガイ教団がどんな連中かは、まだ実際に目にしたことはねえが、戦争で使うために異世界から人間を拉致るような奴らだ。

 まともな倫理観なんて期待するだけ無駄だし、そんな連中が女性を手に入れたとなりゃあ、何をするかなんてお察しだ。

 どうせ、人を人とも思わねえ扱いでもしたんだろう。


 奴らにとっての地球人の価値は、地球の技術情報と現地人よりも強くなるって兵器的なものか?

 人間兵器として扱うなら五体満足にしておく必要は有るが、戦闘に向かない女性だったらどうなる?

 知識を搾り取るのに五体満足である必要はねえし、期待した価値を持っていなかったなら、その扱いはもっと酷くなる可能性も有るだろう。


 結果として自殺しちまったというのだから、嫌な予想しかできねえな。

 ナンマンダブ。ナンマンダブ。

 名前も知らねえ“昔の誰か”の冥福を祈っておく。

 それにしても、「何とかいう国」か・・・。


「へぇ。レイクスたちの爺さんからは、2人の勇者に会ったことが有るが両方とも日本人だったと聞いたんだが、他の国の人間もいたんだな」

「いくらかニホン人の比率が高いようだが、結果論じゃないか? 選んで召喚できるものでも無さそうだぞ」

 ほーん? そうなのか。

 また前伯爵が新情報を口にした。


 何をもって「選んで召喚できない」と予想したのかは分かんねえが、良い情報だな。

 闇雲に投網を投げて、たまたま掛かった不運な奴が勇者ってことだろう?

 頑張って日常を生きてるだけの一般人が持っている技術情報なんて、キチガイ教団に有益なものだとは限らねえ。


 例えば、兵器開発技術者なんかが奴らにとっての“大当たり”だと仮定して、その辺を歩いているサラリーマンが“当たり”と言えるのか。

 期待したような人材を得られていねえのが現状じゃね?

 

「全体として見れば、他の国から召喚された者の方が多いのかも知れんな。ニホン人が目立つのは、“勇者クツキ”が有名すぎる面は有るだろう」

「そうなのか? クツキねぇ。名字を漢字で書くと沓木? 朽木か?」

 有名な勇者ってことは、ケイナんちの爺さんが言っていた“武人”の勇者か。

 500年前の方と12年前の方のどっちのことか分かんねえが、キチガイ教団にとっての価値は高そうだな。


「・・・勇者さんの名前が付いてる剣術の技が有るんだよ」

「ほほう?」

 元現代日本人の嬢ちゃんが教えてきた情報ってことは、意味深に考えた方が良いのか。

 必殺技ってヤツか? 違うか。


 こっちの世界の魔法はゲームやフィクションみたいにコマンド入力的なものじゃねえのは、ケイナからも嬢ちゃんからも教わったしな。

 純粋に技術的なものなんだろう。

 技術ってヤツは、研鑽してコツを掴めば誰にでも再現できるもんだ。


 その1点において、“スキル”なんてゲーム的なフィクションとは決定的に違う。

 つまり、俺でも使える可能性が有る。

 俺が関心を持ったことを目敏く感じ取ったらしいハインズさんが、獰猛な笑みを浮かべた。


「放出した魔力を剣に纏わせる技でな。普通に斬るよりもよく斬れる」

「魔法剣ってヤツか」

 ほーん。「纏わせる」ねぇ。


 嬢ちゃんが言っていた「放出」ってヤツの延長線上か?

 レイクスたちに教えていたときに、嬢ちゃんは「魔素を浸透させて」どうとか言ってたな。

 前伯爵が挑戦的にニヤリと笑う。



世界の違い㉑です。


魔法的剣技!?

次回、マント!?

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