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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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世界の違い ⑳

「開戦の予測はいつ頃なんだ?」

「ドネルク殿が王都へ帰り着くのが、ここ2~3日の内だろう。そこから国王陛下に届けられた建白書による領有宣言が公布されるのに2~3日といったところか」

 俺の問いに答えてくれたのはハロルドさんだ。


 領有宣言の建白書ってのは、前回の戦争で直接の原因になったヤツと同じものだろう。

 採掘場周辺までの森をリテルダニア王国の領土と宣言して実効支配を他国に周知する、国際慣行に則った法的措置だな。

 世界は違っても意図や意義は同じと考えて良いはずだ。


 今回はウォーレス領と隣国との国境線になっているナーガ川の上流に防衛拠点を設置したことで、周辺の土地までリテルダニア王国の領土に組み込んだ宣言を行うことになる。

 ウォーレス家が出したその宣言の“オススメ通知”をドネルク経由で国王が承認するまで、ざっくり1週間と。

 ハロルドさんの目算を前伯爵が引き継ぐ。


「宣言書は近隣諸国にも届けられる。隣国へ届くのに1週間、すでに出兵の準備を進めている隣国がナーガ川の対岸へ着陣するのに1週間。そのぐらいだろう?」

「そうだな。前回もそのぐらいだった」

 前伯爵に確認を求められたハインズさんとマルキオさんが、大きく頷いて追認する。

 なるほどなぁ。


「ほーん。合計で3週間ってところか」

「何か有るのか?」

 どう動くべきかを考えていると、前伯爵が怪訝な表情で探ってきた。

 そんな顔すんな。手を組むと決めた以上、手のひらは返さねえよ。

 ただ、始末を付けておく必要が有る案件が残ってるだけだ。


「いいや。残った仕事が1件有ってな。ギルドから借りた荷馬車も返却しなきゃならねえ。仕事を終わらせて1度王都へ戻ってから、再びウォーレス領へ来るには、3週間も有れば十分か」

 戦争に参加するつもりはねえんだが、手を貸すつもりは有る。

 採掘場は森に食い込んでいるから、採掘場に敵国を近付けることは郷にも危険が迫ることに繋がりかねねえからな。


 敵の攻略目標の1つが採掘場なのは分かってんだし、スパイによる破壊工作がないとも言えねえだろ。

 直接、戦争には参加しなくても、採掘場の維持管理に手を貸すだけでも意味は有るはずだ。

 記憶を探ったハロルドさんが、用件を思い出したのか視線を向けてくる。


「そう言えば、変わった荷馬車だそうだな」

 あ~。アレな。

 パーティーの人数が増えたから必要かと思って借りたんだが、馬を追加しちまったし、レイクスが合流したことでリュックを更新できちまったから、借りる意味がなくなっちまったんだよな。

 だが、ウォーレス領には有益な情報か?


「車体の部品に魔獣の素材を使っているらしい。普通よりも車体が軽いと聞いてるぞ」

「魔法道具かと期待したのに、違ったけどね」

 ハロルドさんよりも先にレイクスが首を振る。


 そういや、レイクスは荷馬車の下へ潜り込んで何か探してたな。

 あれは魔法道具だと思って刻印を探してたのか。

 ハロルドさんとハインズさんは、俺の意図を汲み取ってくれたようで顔を見合わせる。


「ほう。見せて貰って参考にするか?」

「そうだな。素材次第だろうが、領民たちの助けになるやも知れぬ」

 へぇ。軽い荷馬車と聞けば軍事に活かすことを真っ先に考えるもんだと思っていたんだが、ハロルドさんたちは意外な答えを口にした。


「一番に領民のためを考えるんだな」

「それが為政者というものだ。直接的な利益を貪る者など二流に過ぎぬ」

「兵力も生産力も民草あってのものよ。民が潤うことで、回り回って儂らも恩恵を受けるのだから、民草を思うのは当然であろう?」


 ヤベえ。この爺さんたちカッケエな。

 ハインズさんとマルキオさんが男臭く笑いやがる。

 本物の為政者ってヤツを初めて目にしちまった。


「凄えな。俺の国の政治家や官僚に聞かせてやりてえ」

 素直に賞賛すると、嬢ちゃんが微妙そうな顔で口元をモニョモニョさせてやがる。

 何か言いづらいことでも有んのか?


 思うことが有っても口に出さねえってことは、やっぱり言いづらいんだろうな。

 この嬢ちゃんのことだから、その必要が有れば後からでも話に来るだろう。

 ツッコまずにいると、俺の感想を拾ったハロルドさんが水を向けてくる。


「ニホンという国は強国だと聞いたが?」

「弱くはねえんだろうが、いつの情報だろうな?」

 戦争中のピーク時には軍事超大国に並ぶほどまで国土を広げたんだったか。


 地図上に色を塗って時間経過に伴う国土面積の推移を示した動画を視たことが有るが、本体がどこに有るのか見失うほど巨大化していたからな。

 戦後は自分で自分の手足を雁字搦めに縛って簀巻きになってから海に飛び込むようなドMの変態としか思えねえ国でも有る。


 世界標準で言えば一部の政治指導者に全責任を押し付けて被害者面をしても許されるのに、日本だけはサンドバッグにされても全国民が黙って縮こまっていた。

 かといって、戦後復興と近代化による高度成長で一時は世界最強の経済大国にまで上り詰めかけるほど、経済力も技術力も持っていた。


 決して弱くはないんだよ。

 ドMだけどな。

 じゃあ強いのかといえば、某軍事超大国に依存しないと国土防衛もままならねえほど自分自身を縛り上げちまってる。


 普通に考えて、何とも歪で、日本がどういう国なのかと問われると、我が祖国ながら複雑すぎて言い表すのが難しい国だよなぁ。

 他国の脅威に直面して形振り構わず故郷を守ろうとしている人たちを見ちまうと、余計にそう感じる。



世界の違い⑳です。


ドM大国!?

次回、クツキ!?

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