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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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世界の違い ⑱

「・・・楽に勝つなら、敵が集結を終えた瞬間を狙えば一網打尽に出来るのでは?」

 大人たちの聞きながら何やら考える様子を見せた嬢ちゃんが過激なことを言い出した。

 先制攻撃ってか?

 驚いた様子で一瞬黙った大人たちの内、一足早く復帰したハインズさんが渋い表情で首を振る。


「敵が開戦の意思を見せる前にか? それは流石に卑怯者の誹りを受けよう」

「・・・ええ? 軍隊を集結させた時点で開戦させる意志は明白だと思うのですが」

 ハインズさんに否定されて、今度は嬢ちゃんが目を丸くする。


 嬢ちゃんの感覚的には“先手必勝”だったんだろうな。

 ケンカのやり方としちゃあ間違っちゃいねえ。

 俺としても、今さらじゃね? って思いは有る。


 だってよ。隣国は度々攻めてきて、和平協定を結んで戦争終結を確定させたわけでもねえんだろ?

 ハインズさんの考えは、“戦争は宣戦布告が有ってから始めるもの”ってものなんだろうが、そもそも最初に宣戦布告は有ったのか?

 前回の戦闘後に和平協定を結んでいねえなら、戦争は継続中ってことじゃね?

 ところが、ハロルドさんもハインズさんの意見を支持する。


「その通りなんだが微妙だな。戦争の作法から外れすぎている」

 うーむ。こいつは世界の違いや文化の違いじゃなく、時代の違いか?

 大昔の戦争では、最初に使者を立てて宣戦を布告するのが定型だったとどこかで聞いた覚えは有るから、ハインズさんの言い分はそういうことなんだろう。


 日本の戦国時代でも、最初に降伏勧告の使者を立てるのが通例だったらしいしな。

 ただ、代々の領主を務めてきたハインズさんとハロルドさんが揃ってそう言うのなら、ここは“郷に入れば郷に従え”か。

 嬢ちゃんも同じことを考えたようで、1段階先へと話を進める。


「・・・作法で“開戦の意志有り”と判断されるのは、どの段階なのでしょう?」

「国境を越えたのでなければ、陣形を整えた時点だな」

「攻撃命令を下す直前まで来ると、もう誤解の余地は無くなる」

 随分と慎重な印象を受けるが、ハインズさんとマルキオさんが、「戦争の作法」とやらにおける“最後の一線(レッドライン)”を明確にした。


 ほーん。「誤解の余地」と来たか。

 敵国がギリギリの一線を越えるまでは、こっちからは手を出さねえと。

 どこかのお花畑大国で聞き覚えの有る“専守防衛”って奴だな。

 当然のことながら、元日本人だという嬢ちゃんも聞き覚えが有ったようで、納得顔で頷いた。


「・・・では、その瞬間を狙います」

 アッサリと退いた嬢ちゃんが現地基準を受け入れる。

 マジで度胸が据わってやがるな。

 こいつは“最初の一撃はテメエの手で入れる”という嬢ちゃんの宣言か。

 嬢ちゃんの答えを聞いたマルキオさんが驚いた顔をする。


「フィオレが一番槍を付けるのか?」

「・・・最初に削れるだけ削ります。それなら被害を少なく、楽に勝てますよね?」

 面白え嬢ちゃんだな。


 あくまで先手必勝を捨てる気はないわけだ。

 その上でギリギリの線引きを確認したのだから、本気でやる気だろう。

 何かを言おうと口を開き掛けて、一旦は呑み込んだマルキオさんが、改めて口を開く。


「そうでは有ろうが、敵の恨みを買うぞ?」

「・・・私はピーシスですし、そんなの今さらでは?」

 心配そうなマルキオさんに、迷う素振りもなく嬢ちゃんが返す。


 その「私はピーシス」ってのはアレか?

 ”ウォーレスは王国の盾、ピーシスはウォーレスの剣”だとかの家訓が有るんだったな。

 祖父の思いとしては孫娘を先頭に立たせたくないんだろうが、孫娘の答えを噛み締めるようにしたマルキオさんは自分の思いを呑み込んで見せた。


「その覚悟やヨシ―――、だが、フィオレに敵の反撃が集中したときに、甲冑の重さで身動きが取れぬでは後退も出来ぬな」

「ならば、フィオレは甲冑無しで戦に臨ませるしか無いか」

「止むを得まい」

 爺さん2人が深刻な表情で顔を見合わせ、苦虫を噛み殺したような顔でハロルドさんが溜息雑じりに結論を出した。


 大人たちは苦渋の選択なのがありありと分かるのに、当の嬢ちゃんは嬉しそうにパッと表情を明るくしてやがる。

 お前、どこか頭のネジがブッ飛んでね?

 こいつは本物の戦争の話だろうに。


 俺も頭のイカレたヤツらは何人も見てきたが、この嬢ちゃんのイカレ具合も最上位クラスだぞ。

 だが、嫌いじゃねえんだよなぁ。こういうヤツ。

 絶対に譲れねえ明確な一線が嬢ちゃんの中に有るんだろう。


 だから、この嬢ちゃんはブレねえ。

 そいつは良いんだが、こいつは「誰々はケンカがクッソ強え」なんてガキの揉め事じゃねえんだ。

 強力な魔法を使って先手必勝を狙うってことは、”真っ先に人の命を奪う”ってことだろう。


 この嬢ちゃんは頭の回転が早えし、バカじゃねえ。

 その程度のことを、気付いていないわけがねえんだ。

 俺に同じ覚悟が持てるのかといえば、迷いを捨て去れる自信はねえな。

 それだけの覚悟を決めてやがるのだろうし、完全にこっちの世界の人間として今を生きてるんだろう。


 けどよ。大丈夫か?

 嬢ちゃんの中には平和な日本で生きたヤツの精神が有って、言葉の端々に日本人の常識が残っているのを感じるんだよなぁ。

 誰かが支えてやらねえと嬢ちゃんのメンタルが潰れちまうぞ。

 大人たちと嬢ちゃんの間で合意が形成されて、話題は具体的な配置へと移る。



世界の違い⑱です。


最上位のイカレ具合!?

次回、母娘!?


※ちょっとアレがナニしまして今日も大遅刻です!

 サーセン!

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― 新着の感想 ―
パキスタンが脅威だから先制で核を撃ち込むべきと国会で堂々と主張したインドの議員を見習って欲しい
アレがナニして ほんに戦略やら専守防衛だ先制攻撃だ戦の作法だの 開戦したら行き当たりばったりのグダグダな作戦行動が多くてネェ……(#^_^#)
2026/07/25 18:11 あかマント
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