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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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世界の違い ⑪

「テツ殿。レイクス殿。子らの遊びに付き合わせたようで済まなかったな」

 一族を代表してか、ハインズさんが俺たちに頭を下げる。

 表面上は現役を退いているとはいえ、国家を代表するレベルの重鎮と聞く勇猛な武将らしいのに、謙虚というか徳が高いというか、この厳つい爺さんは意外と腰が低いんだよな。


「いやいや。なかなか面白かったぜ」

「うん。色々と興味深い経験だったよ」

 正直な感想を口に出せば、留守番を押しつけられていた男連中の視線が俺たちに集まる。

 何かを察したらしいハロルドさんが、坊主を手招いて自身の隣に座らせる。

 この坊主は大人しくて遠慮しがちな性格なのか、今も部屋の端で目立たないようにしていたんだよな。


「何か起こったと?」

 孫娘の婿となる少年が腰を下ろしたのを確かめたハインズさんが、改めて俺たちへ隻眼を向ける。

 さて、どこから話すべきか。

 ハインズさんの問いに答えたのは、最も熱心に観察していた坊主だ。


「採掘場のバイコーンが増殖する原因を確認しました」

「「「「「―――、!!」」」」」

 要点のみを上手くまとめた坊主の報告に男たちが刮目し、瞬時に表情を厳しくする。


 だよなぁ。

 目と鼻の先に魔獣の群れが居て、あまつさえ、その群れを食肉扱いで囲い込んでいるのだから、家族と領民の命と生活を預かる立場としては警戒せざるを得ねえ。

 報告を反芻したハロルドさんが、隣に座る坊主を見下ろす。


「“増殖”と言ったな?“繁殖”ではなく、か」

「はい。“増殖”です」

 2つの言葉の違いに気付いて、ハインズさんとマルキオさんの表情がさらに難しくなる。

 こりゃあ、誤解の無いように補足してやった方が良いか。

 そのぐらい荒唐無稽で自分の目を疑う光景だったからな。


「坊主の―――」

「アスクレーです」

 ありゃ。援護しに入るつもりが本人にピシャリと訂正された。


 幼くても男だな。

 軽んじているつもりは無かったんだが、「坊主」という呼び方に子供扱いされたと感じたか。

 覚えちゃいねえが、俺もガキの頃はガキ扱いに反発を覚えた気がするな。

 俺としたことが失言だった。


「悪い悪い。アスクレーの言ってることは正しいぜ」

「“分裂”と言い換えても構わないね」

 レイクスも加勢に入ってくる。

 俺たちがアスクレーの見解を補強したことで、ハインズさんたちの深刻さが増す。


「どういうことだ?」

「文字通り、分裂するんだ。あれは魔素的な原因で良いんだな?」

 レイクスに視線を向けて見解を求めると、レイクスが深く頷き返してくる。


「確定した答えと言うにはまだ情報が足りないけどね。魔素の飽和が起こると同時に分裂を始めたのだから、関連は有ると考えて良いと思うよ」

「“魔素の飽和”だと?」

 聞き馴染みのない表現だったのか、ハロルドさんが怪訝そうに眉根を寄せる。

 マルキオさんが自身の奥さんに視線を向けた。


「シェリアの見解はどうだ?」

「レイクス殿の見解に同意します。というよりも、私たちヒト族の魔力に関する知見など、エルフ族に比べれば入口にも立っていない程度のものでしか有りませんよ」

「いつもそう言っていたな」

 奥さんの自己評価にマルキオさんが納得を見せる。


 この奥さんは有名な知識人だと聞いたが、この人も謙虚なんだよな。

 ウォーレス家の人間は自己評価が厳しいというか、全般的に自身の力をひけらかそうとしない傾向が強い。

 こいつはお家柄ってヤツか。


 本当に強え奴は「俺は強えんだぞ」なんて自慢しないもんだしな。

 肩肘張って自慢なんぞしなくても、強え奴は強え。

 そこへ空気を読まないレイクスが反論をブチ込みにいく。


「そうかな? ヒト族の知見も卑下するようなものじゃないと思うけどなぁ」

「それは嬉しい評価ですね」

 本音を感じさせるレイクスの評価にシェリアさんが笑みを返した。


 コイツはケツが痒くなるような世辞は言わねえからな。

 本気でそう思っているんだろう。

 シェリアさんにニコリと笑い返したレイクスが表情を改める。


「ま。そんなわけで、フィオレ嬢から頼まれて魔素の動きを視てみたんだけど、活性化した魔素の流入が起こると同時に発光現象も起こってね。そして、分裂が始まった」

「“発光現象”というと?」

 状況を聞いたハロルドさんの首が傾ぐ。

 ハロルドさんの疑問に答えたのはアスクレーだ。


「年初のご祈祷で起こった発光現象と同じものだと考えます」

「アレか・・・」

 アスクレーの口からもたらされた情報にハロルドさんの表情が難しくなる。

 一方でハインズさんが表情を曇らせた。


「父祖の魂ではなかったのだな」

「“死者の魂は精霊の下へ還る”という伝承のことを言っているのなら、精霊も落ち着かなかったから無関係とも言い切れないよ」

 残念そうな音色を含んだハインズさんの呟きを拾ってレイクスは首を振った。


 精霊が落ち付かねえってのは、あの光に精霊が反応したってことになるのか。

 精霊の存在を感じ取れねえ俺には感覚が分かんねえんだが、論理としては関連を疑わせるものでは有るな。

 レイクスの見解にハインズさんが―――、いや。ハインズさんだけじゃねえな。

 ハロルドさんもマルキオさんも救われたような表情を見せた。



世界の違い⑪です。


次回予告詐欺警察だ! 神妙にしろ!

次回、次回こそコピー!?

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― 新着の感想 ―
爺さん達の創造力すげー 分裂増殖って言葉だけで分かるてか!
2026/07/19 14:33 あかマント
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