表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
407/413

世界の違い ⑨

「何か有ったの?」

「いいや? 新しい迷宮とやらへ行くのは急ぐのかと確認したかっただけだ」

 道端のお地蔵さんみてえに動かなくなった嬢ちゃんが主導してるんだろうから、意向を訊くなら嬢ちゃんに訊くべきだろう。

 俺の答えに納得顔でレイクスが頷く。


「ああ。まだ仕事が残っているんだっけ」

「ドネルクが先に王都へ戻ったからな。いつまでも放っておくわけにゃ行かねえ」

 有益では有ったんだが、予想外の足止めを食らっている事実は如何ともしがたい。


 魔獣や野生動物の間引きは大自然が相手なんだから不確実性が高え。

 獲物の痕跡を探して行動パターンを見極める必要が有るんだから時間が掛かる。

 罠を仕掛けて待ち構えたとしても、当の獲物が現れるかどうかも不確定だからな。

 仕事が遅く不確実性が高いとなれば信用を落とす結果になる。


 信用を落とせば仕事が回ってこなくなって儲からねえ。

 儲からねえと、「冒険者を増やす」と啖呵を切った俺が法螺吹きになっちまう。

 冒険者の絶対数を増やすには、「冒険者は儲かる」と思わせる必要が有るんだ。


 例えば、日本でも企業経営者が「人が集まらない」と移民推進を国に働きかけていたが、単純に「儲からない」から「人が集まらない」んだ。

 人口減少だとか出生率低下だとかグダグダと屁理屈を捏ねる連中がいたが、現に闇バイトだの転売ヤーだのが増えてるだろうがよ。


 マトモな仕事で生活が成り立たねえなら、少しでも儲かるグレーゾーンに人が集まるのは“物の道理”ってもんだ。

 そして、一般人が武装して武器を振り回す冒険者ってのは、一歩間違えりゃ無法者になっちまうグレーゾーンなんだよ。

 そのグレーゾーンに労働人口を引き込むには、「儲かる」という看板が必要になる。


 ドネルクとの裏取引で、その広告塔になろうとしているのが俺たちの“会社(クラン)”だ。

 俺たちは“誰の目にも明らか”で、“誰にでも真似ができそうな実績”を積み上げる必要が有るんだよ。

 しかも、この国は、今後、治癒魔法と魔法道具で神教会との軋轢を高めるのが目に見えている。

 他国へ逃れた既存の冒険者たちが、この国へ戻ってくる可能性は低いだろう。


 俺たちの成否が及ぼす影響はデケえ。

 冒険者の増やし方に頭を悩ませていたら、横っ面に視線を感じた。

 何かと思えばレイクスがニヤニヤしながら俺を見てやがる。


「テツは義理堅いね」

「いや。普通のことだろ。仕事を出した誰かは今も困ってんだろうしよ。何とかしてくれると期待してんだろうし、仕事を請けた以上は終わらせねえとな」

「そうだね」

 同意を返しながらも、レイクスはニヤけるのを止めねえ。

 気持ち悪ィな。


「何だよ」

「何も? ただ、テツらしいな、と思ってね」

「ほーん? ま。そんなことだから、そろそろ具体的な予定を決めねえと」

 不毛な争いを止めて先へと話を進めれば、黙って聞いていたケイナも参戦してくる。


「食料の補充も必要ですね」

「だなー。干し野菜やパンも補充しておきてえし、ウォーレス領はリンゴの名産地らしいからな」

「リンゴ―――、マルスですね。とても良いことだと思います」

 ケイナも女の子の例に漏れず甘い物は好物だ。

 特に甘い果実は大好物なようで、市場で果物を見付ければ多少値が張っても買うようにしている。


 かといって、冒険者ってのは遠方へ出掛けるのが仕事だからな。

 ケイナには安全な場所での定住生活をさせてやりてえんだが、黒トカゲを取っ捕まえるのが俺の目的で有る以上、しばらくは不自由な生活に付き合って貰うしかねえ。

 そういった不安定な生活の中で心と体の両方に栄養となるのが食事ってもんだ。


「干し肉も美味かったから買い込んでおくか」

「良いですね。特別な味付けの干し肉も有るそうですよ」

 お? そいつは初耳だな。

 売り文句が「特別」ってのは良くねえ意味で気になるが、食ってみねえことには分かんねえしな。

 アタリ・ハズレは有るもんだが、少量なら遊びとしてハズレも有りだ。


「へぇ? 食べ比べてみるか」

「はいっ」

 許容すれば、ケイナは嬉しそうに笑った。

 俺が“相方”とコミュニケーションを取っている間もレイクスは囲いの底へと目を向けている。


「そろそろ終わりそうだね」

「おー。光も収まっちまったな」

 レイクスの予想に俺も囲いを覗き込む。


 漂っていた光の粒は、もう数個を残すのみで、他は消え去ってやがるな。

 明かりが減れば暗くなって闇を見通せなくなるもんだが、光の粒が消えた代わりに月が高い位置にいる。

 目が暗闇に慣れていることも有って、月明かりでも十分に穴底を見渡せる。


「かなりバイコーンの数が増えましたね」

「見た目、ざっと3倍ぐらいか?」

 よくもまあ、こんだけ分裂したもんだな。

 レイクスの目が、相変わらず目を皿のようにして穴底を凝視している坊主に向いた。


「彼が最初に“3分の1まで減らした”と言っていたよね」

「てことは、これが普通なわけだ」

 毎日、これだけの魔獣が新たに生み出される?

 魔獣が自由に行動できる環境なら、そいつは、とんでもねえ脅威になるだろう。


 こうやって安全な形で隔離できているからこそ脅威となっちゃいねえが、これが特別に維持された奇跡的な状況だってことは俺にでも理解できる。

 そうは言っても極めて危ういバランスの上に成り立っているものなんだろうしな。


 崖の上でも、罠で毎日、間引きが行われているってんだから、この状況を作り出した嬢ちゃんも、これを維持し続けているウォーレス家も、エレえ度胸だぞ。

 マジで脱帽するしかねえ。

 近く、そのウォーレス家の正妻になるらしい前伯爵が、見切りを付けて指示を出す。



世界の違い⑨です。


及ぼす影響!

次回、遠征計画!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
結果が偶然とはいえ塩と干し肉の産業化 フィオレちゃんの生した事!「現在進行形で諸々有りだけど・エライワー等☆」(@^▽^@) 仕事人に戻るテツさん達が買い込む予定の「美味しい干し肉」はウォーレス謹製だ…
2026/07/17 13:49 あかマント
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ