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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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南の町 ㊽

「・・・やって貰った方が早いかな」

「俺か?」

 “悪魔払い(エクソシスト)”の映画みてえにグルンと顔を振り向けてきた嬢ちゃんに訊き返す。

 つーか、頭が取れそうで見てて怖えから、そういうのは止めろ。


「・・・例えばテツさん。指先を尖ったもので怪我したことない?」

「そりゃあ、もちろん有るぞ」

 朝から酒を流し込んでは暴れるロクデナシのクソ親父のお陰で、ガキの頃から生傷は絶えなかったからな。


「・・・血が出たよね?」

「そうだな」

 訊かれるままに答えちゃいるが、何の話だ? 


「・・・それって皮膚に穴が空いて、体内の血液が漏れ出しちゃったわけだよね」

「おう。そうだな」

 しつこいぐらいに訊いてきた嬢ちゃんが、1つ1つ確認するように解説を始める。


「・・・指先からでも“出るものは有る”んだよ。怪我をしなくたって、指先にも毛穴は有って汗をかくでしょ? 出ないなんてことは絶対にない。手汗だって、余程じゃないと出てきているのは見えないでしょ。目に見えていないだけで“魔力だって出る”んだよ」

「そういうもんか」

 なかなか強引な論法にも聞こえるが、最後の部分以外に俺も異論はねえ。

 “教える”というよりも“説得”されているような気分になるな。


「・・・指先の毛穴から出た手汗が100円ライターの可燃性ガスだと思って火を点けてみて。テツさんの指先は100円ライターなんだよ。漏れ出したガスに着火装置の火花がパチッと散って、ポッと火が点く。ほら、やってみる!」

「お、おう」

 言われた通りに頭の中でイメージしてみる。

 この嬢ちゃん。事細かに説明したり言い聞かせたりするくせに、突然、押しが強くなるときが有るんだよな。


「・・・火が点く~。火が点く~。100円ライターだよ~。火が点く~」

「ライター・・・。うおっ!?」

 耳元で囁いてきやがるから黙らせようかと思ったところへ、俺の指先に小さな火が点ったもんだから、さすがに驚いちまった。

 嬢ちゃんが見事なドヤ顔をしてやがる。


「・・・ほら、点いた」

「「「おお~」」」

 獣人族3人組が驚いて歓声を上げた。

 俺も自分の指先に点った火を真面目に観察する。

 左手の人差し指の上、2センチメートルも離れていない宙空に、間違いなくライターの火みてえな火が風に揺らいでいる。


「ほほぉ―――う。本当に火が点くんだな」

 さっき嬢ちゃんが言っていたことが気になって、自分の指先の皮膚をじっくりと観察したが、目に見えて分かるような穴は空いちゃいねえ。


 これ、マジでどこからガスが出てんだ?

 ヤベえ。マジで驚くしかねえぞ。

 一転して嬢ちゃんが諭すような口振りになる。


「・・・これが魔法。テツさんも魔法が使えるんだよ」

「なるほどなぁ。思い込みか」

 イメージ? いや。やっぱり“思い込み”の方がしっくりくるな。

 実際に出来ることを証明されちまったら信じるしかねえ。

 何やら考え込む様子を見せた嬢ちゃんが、意外なぐらいに真剣な目を向けてくる。


「・・・テツさんが信じてるものって、何? 絶対的に信頼しているものは?」

「俺が信じてるものか・・・。信頼っていうなら、コイツだろうな」

 真剣に訊かれちゃ真剣に答えるのが礼儀ってもんだろう。


 グッと握った右拳を嬢ちゃんに示してみせる。

 俺が“信じるもの”なんて他にはねえよ。

 最後の最後に頼れるのはコイツだけだ。

 一瞬、驚いた顔をした嬢ちゃんが、納得顔で頷く。


「・・・ゲンコツかぁ。テツさんが熊に殴られても平気なのって、“それ”じゃない?」

「んん? こんな奴にゃ負けねえ、とは心のどこかで考えていたのかも知れねえが、意識したことはなかったな」

 熊ごときに負けるようじゃ、馬鹿デケえ黒トカゲなんて“説得”できねえだろ。


「・・・さっきも言ったけど、魔法ってね。心の在り方―――、イメージを具現化するものなんだよ。魔力が応えてくれているとも言えるのかな。テツさんぐらい強ければ魔法に頼る必要は無いのかも知れないけど、覚えておいて。魔法の可能性は無限なんだよ」

「無限ねぇ?」

 教えを請うている立場で生意気は言えねえが、鼻白んじまう。


「・・・大げさな言い方だと思うかも知れないけど、どんなことだって起こり得るのが魔法だよ。上手く具現化するかどうかはイメージ次第だけどね。より明確に、より具体的に、起こると信じれば起こるのが魔法。困ったことになったときには思い出すと良いよ」

「起こると信じれば、か。覚えとくよ」


 まあ、見た目はヒナよりも幼い嬢ちゃんだが、魔法に関しちゃ先達だからな。

 実証して見せられた以上、バカに出来たもんじゃねえ。

 ありがたく助言として受け取っておく。


「・・・みんなもそうだよ? 出来ないなんてことは絶対にないからね。ヒマなときや手が空いているときにコツコツ練習すること」

「「「はい!」」」

 嬢ちゃんの激励に3人組も真面目な顔で返事をしていた。



南の町㊽です。


魔法の発動に成功!

このお話で本章は最終話です!

次話より新章、第20章が始まります!


次回、シカ!?

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― 新着の感想 ―
そう、思い込めば・・・空も飛べるし異世界に転移だって出来る! さぁやってみよう!!
俺の拳が炎を纏う イマ必殺の蒼焔爆裂拳!!ブッパするのね(@^▽^@)
2026/07/08 16:28 あかマント
100円ライターは〜……アウッ、アウツー!! これは迂闊な直球でしたね〜 さぁ、フィオレ選手後が無い
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