南の町 ㊼
「・・・魔法ってね。慣れれば慣れるほど、無駄がなくなって消費魔力量が減るんだよ」
「そうなのニャ!?」
嬢ちゃんが教えた情報にミャウラが目を剥く。
そいつは熟練して技術が洗練されるって意味か?
現実でもゲームでもそういうもんだし理屈は通ってるな。
クァタルもイカウも驚きを顕わにして嬢ちゃんの話に引き込まれてやがる。
それを言ったら俺も同じか。
「・・・いきなり減るものじゃないから気付きにくいけどね。身体強化魔法は意識して魔力を使うものじゃないから余計に分かりにくいんだと思うよ」
「へぇ。そういうものなんだな」
魔法が使えねえ俺には現実感が沸かねえんだが興味は沸く。
俺の現実感のなさを察したのか、嬢ちゃんの視線が俺に固定された。
「・・・実際、考えたこと無かったんじゃない? テツさんの場合はバカみたいに体内保有魔力量が多いし、意識するも何も勝手に発動していたんだろうし」
は? どういうことだ?
「俺の場合は勝手に発動していた」ってことは、俺は魔法を使ってるってことか?
俺の表情からか、思考を読み取ったように嬢ちゃんが深く頷く。
マジか!
たぶん、ケイナたちがエルフ族だと知ったときの次ぐらいに驚いたぞ!
「パワーが上がってるな、とは思ってたが、俺、身体強化なんて使ってたのか」
「・・・認識の問題かな。使っていなくて、あれだけの力が出たりしないよ。結果論としてテツさんも間違いなく魔法を使ってる」
認識? また抽象的なことを言い出したな。
・・・いや。そうでもないのか?
使ってるとしか思えねえから使ってるって結果論か。
どうにも飲み込み辛いんだよなぁ。
やっぱり現実感がねえ。
例えば、魔法を使ったら魔素って燃料が減るわけだろ?
クルマだってロケットだって、燃料を消費すればタンク内の燃料が減って軽くなる。
“重量”って変化が起こるわけだが、そんな変化を感じねえんだよ。
そりゃあ現実感を持てって方が無理じゃね?
「この俺が魔法をなぁ・・・」
「・・・テツさんは、先ず認めることじゃないかな。他の3人も、苦手意識が足を引っ張ってるんだと思うよ」
俺の言い草が不満だったのか、嬢ちゃんがムッとした顔をする。
魔法の上達に前向きなイカウは意外そうな顔をしている。
「苦手意識ですか」
「・・・魔法ってね。心の問題が大きいんだよ」
ほう。そういや、さっきも「認識の問題」だと言ってたな。
「俺自身が出来ないと思い込んでいるってことか?」
反問した俺に嬢ちゃんが頷き返してきた。
それが本当のことなら確かに俺自身の「心の問題」ってことになる。
え~っと? つまり、“自分を信じろ!”ってアレか。
ファンタジーかと思ったら、熱血スポ根かよ。
自己肯定なんて口で言うほど簡単なもんじゃねえんだがな。
そんなに簡単にできることなら、何とか言うプロテニスプレーヤーの「出来る出来る! もっと本気になれよ!」なんて熱血ムーブが娯楽として流行ったりしねえ。
今の流行言葉で言えば“ミーム”ってヤツだな。
思わぬ指摘を受けてミャウラも目をまん丸にしてやがる。
「考えたこと無かったニャ」
「・・・心の深い場所に有る苦手意識なんて自分で分かると思う?」
「分からないかも知れません」
嬢ちゃんに目を向けられたイカウも首を振る。
そりゃあそうだな。
無意識レベルの苦手意識なんて、自分でも気付かねえ。
「・・・例えばね? ワナを仕掛けるときには、木の枝とか障害物を置いて獲物の行動を誘導したりするんだよ。野生動物だと障害物を退けたりせず避けて通るし、人間なら退ける。いちいち“どうしようか?”なんて考えていないよ」
「ああ。本能ってヤツか」
具体例を挙げられると納得感が増すな。
「・・・苦手意識も本能の1つだよ。“出来る”と知って、慣れてしまえば苦手意識も無くなるものだけどね」
「確かに、そういうものだろうな」
納得感は有る。
理屈も通ってる。
そこで嬢ちゃんが脳筋ムーブをカマシてきた。
「・・・だったら魔法も“そういうものだ”と思い込めば良いんだよ」
「思い込む、ですか」
イカウが怪訝な表情になる。
嬢ちゃんが言ってるのは“自己暗示”だろう。
有効な手段では有るな。
自己暗示ってのは、努力と根性で苦手を克服するよりも簡単かも知れねえ。
うつ病なんかの心理療法でも、鏡の前で“自分は出来る!”とか“楽勝!”とか、ポジティブ発言を繰り返したりで良い効果が出るらしいしな。
南の町㊼です。
脳筋魔法理論!?
次回、突破!?




