南の町 ㊺
「・・・長かったね」
「何か有ったの?」
「ああ。新しい鉱脈を見つけたかも知れんと報告が有ってな。試掘に立ち会っていた」
金銀の嬢ちゃんたちから質問をぶつけられた前伯爵も、狭っ苦しい坑道内は圧迫感で肩が凝ったのか、自分で揉み解しながら肩を回している。
「良い話だったの?」
「新鉱脈は有ったぞ。無茶な採掘をしなければ、現状の鉱脈も当面の心配はないそうだ」
「・・・おお。良い儲け話」
前伯爵が娘たちにニヤリと笑い返す。
「ほう」
ここの領地は元々が別に軍馬生産という産業の柱を持っていて、そこに魔獣肉と岩塩の採掘が加わって潤ってるらしいからな。
新たな鉱脈が発見されたとなれば、数十年単位で隆盛は続くんだろう。
ただでさえ軍事力を持っている上に、カネが有って食料生産力の向上にも目を向けている。
完全に勝ち組だな。
乗っかる勝ち馬として申し分ねえ。
そこに技術力が加わるわけだ。
その技術力を担うのがエルフ族とドワーフ族になるのだから、国が存続する限り立場は安泰と言って良い。
俺も自分の目的に注力して良さそうだな。
鋼毛熊や鎧イノシシよりも北の地域に棲息してるのは、トレントとかいう木の魔物だったか。
木は食えねえから食料を持っていく必要が有る。
トレントってのもそれなりの値段では売れる素材らしいが、木は木だからな。
肉の方が確実に売れるんじゃね?
実入りが減るのは萎えちまうし、何より、血を飲めねえなら俺の強化にはならねえ。
トレントってのは森から出てくるわけじゃねえらしいから、犬っコロや触覚ヘビみてえに駆除依頼が安定してギルドに入るわけでもねえんだよなぁ。
だったら、トレントの棲息地域をスキップしちまえば良いんだが、その北側に棲息している魔獣はグリフィンになる。
ギルドの資料に“獅子鷲”と書かれていたグリフィンってのは、ゲームキャラクターによく出てくる“四つ足の肉食獣の体に鷲の頭と翼が生えてる”魔獣ってわけじゃねえらしい。
それだと六つ足になっちまうからな。
進化論にケンカを売ってるだろ。
つーか、六つ足って骨格的にどうなってんだ?
こっちの世界のグリフィンは前脚が翼になっていて後ろ脚が獣の脚なんだと。
体の前半分が鳥で後ろ半分が肉食獣って感じらしい。
うん。“四つ足”だから骨格的には普通だな。
問題は、グリフィンはロン毛熊なんぞよりも、よほど強えらしいってことだ。
魔獣の強さ分布が北上するほど徐々に強くなっていくグラデーションだとすれば、中間のトレントをスキップしちまう分、いきなり強くなったと感じるんだろう。
ケイナを連れ歩く分、過度なリスクは避けてえんだよなぁ。
どこかにギャップを埋められて血を飲める場所が有れば良いんだが、トレントって樹液を飲めたりしねえのか?
ちょっと真面目にトレントの代替案を探さねえとな。
母娘のじゃれ合いは終わったようで、前伯爵が首を傾げる。
「お前らは何をしていたんだ?」
「風ジェットカッターを教えていたわ!」
「・・・私は魔石使用法を」
娘たちの頭をダブルで撫でた前伯爵が苦笑する。
「そうか。私も精霊術式を学びたいんだがな」
「わたしも!」
フィティオスたちに魔法を教えていた金髪嬢ちゃんが前伯爵に便乗すると、手応えを感じた様子で話し込んでいるエルフ兄弟に目を向けた銀髪嬢ちゃんが、前伯爵たちに視線を戻す。
「・・・じゃあ、一緒に練習する?」
「そうだな。昼になるまでまだ時間が有るだろう」
嬢ちゃんの誘いに応じた前伯爵の後に側近たちもゾロゾロと付いてくる。
「・・・みんなも憑いている精霊がいないかケイナちゃんに視て貰おう」
「お願いします」
誘われた側近たちも嬢ちゃんと仲良く笑い合っている。
この側近連中ってのは前伯爵の妹分なんだったか。
全員が全員、かなり強え女性騎士らしいが、好戦的に絡んで来なけりゃ普通の姉ちゃんたちにしか見えねえんだよな。
「・・・ケイナちゃん、ケイナちゃん。みんなにも精霊が憑いているか視て貰えないかな」
「ええ。構いませんよ」
「ありがとうございます。お願いします」
嬢ちゃんの頼みに快諾を返したケイナに代表格らしい側近が頭を下げている。
他所の領地に比べてウォーレス領が独特なのは、騎士も腰が低くて偉ぶったところがない部分だな。
“強いヤツは一目置かれる”って文化によるものらしいが、徹底してる。
側近たちと一緒になって前伯爵までケイナに頭を下げてやがるし、面白え文化だなあ。
南の町㊺です。
強さのギャップ!
次回、基本戦術!?
※遅刻です!
サーセン!




