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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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南の町 ㉘

「クァタルが嬢ちゃんを知っていた件と関係が有るのか?」

 聞いておくべき情報だと思って訊いたんだが、チラッとクァタルに目を向けた嬢ちゃんは躊躇いを見せる。

 小さく溜息を吐いた嬢ちゃんはスッと背筋を伸ばして口を開いた。


「・・・ウォーレス領にもピーシス領にも、銀髪の人たちがたくさん居たでしょ? あの人たちって侵略戦争で勇王国に滅ぼされた旧エクラーダ王国の民だったんだよ。クァタルさんも旧エクラーダ王国の騎士だったらしくてね」

 ギリッと歯噛みしたクァタルもまた、唸り声を上げるような声で嬢ちゃんとの関係を明かす。


「フィオレ様は、暗殺された旧エクラーダ王国の第三王妃、オルレーシア様の忘れ形見なんだ。オルレーシア様はオレの故郷、エリステ公爵領の御令嬢だった」

「そういう縁なんだね」

 じっと聞いていたレイクスが納得顔で頷いた。


 嬢ちゃん自身と直接の関係が有ったわけじゃなく、母親が旧主の娘だったってことか。

 クァタルは母国が神教会の圧力に負けて故郷に居られなくなったと言っていたからな。

 嬢ちゃんが見せた躊躇いは、クァタルに対する罪の意識―――、いや。逆か?

 この嬢ちゃんは政変なのか何なのか、故郷でも事件に巻き込まれて異国に売られてきたところを助けられたって話じゃなかったっけな。


 ありゃ? この嬢ちゃんが助けた側だったっけか?

 その辺の事情はよく覚えちゃいねえが、クァタルの反応を見る限り、嬢ちゃんの方はクァタルを気遣って躊躇いを見せたのかもな。

 気遣わしげな表情になったケイナが嬢ちゃんを見る。


「では、フィオレも?」

「・・・ケイナちゃんと同じだね」

「そういうことでしたか」

 嬢ちゃんとケイナは通じ合うものが有ったみてえだな。


 嬢ちゃんは転生者だから、嬢ちゃんとケイナが同じ立場ってことはないはずんだが、公には“亡国のお姫さん”ってことで同じ立場になるのか。

 ややこしいな。


「・・・色々と事情も有って私はお母様に引き取られたけど、私も同じだから、気を使わず普通に接してくれて良いよ」

「分かりました」

 嬢ちゃんの念押しにケイナが承諾を返した。

 これは今現在の肩書きのことを言ってんのか。


 嬢ちゃんは貴族家当主でケイナはただの町娘、というか、冒険者だからな。

 単純に“お友だち”ってわけに行かねえのが、こっちの世界の難しいところだな。

 まあ、俺としちゃあ、権力者がケイナたちの保護に動いてくれるのは、安心材料では有る。

 穴底を覗くレイクスが、多少重くなった空気を変えに掛かる。


「しかし、凄いね。本当に安全な形で間引き方法を確立してるんだ?」

「治癒術式の訓練にもバイコーンを使うのよ!」

 レイクスと同じように穴底を覗いていたもう1人の嬢ちゃんが、レイクスの認識を修正しにきた。


 ちょっと待て。

 魔獣を魔法の練習台に使うのか?

 しかも、治癒魔法ってことは治すんだろ?


「「「「「ええ・・・」」」」」

 疑問に思ったのは俺だけじゃなかったようで、レイクスだけでなくクァタルたちもゲテモノを見るような表情で呻く。

 俺たちの反応に銀初の嬢ちゃんが不満そうな声を上げる。


「・・・だって、怪我人がいないと治癒魔法の訓練ができないじゃん」

「それは確かにそうだ」

 レイクスが複雑そうな顔で同意する。


 理屈は分かる。分かるんだがブッ飛んでやがるなぁ。

「怪我人がいないと」ってことは、“魔獣を傷付けては治す”ってことだろ?

 大丈夫なのか? それ。


「魔獣を訓練に使うってのは、具体的にどうやるんだ?」

「バジリスクの毒で眠らせるのよ!」

 金髪の嬢ちゃんが答えを示してくれたが、不安がさらに増す。


「マジか。バジリスクってのは触角ヘビだろ?」

「毒で眠るの? 永久に、じゃなく?」

 だよなぁ。レイクスの心配は尤もだぞ。

 俺たちが示した今度の反応もまた銀髪嬢ちゃんは不本意だったようで、追加説明を入れてくる。


「・・・麻痺効果が有るんですよ。嗅がせる時間を調整すれば死にません」

「へぇ? 触角ヘビの毒は神経毒なんだな」

 エンツェンス領のオットー爺さんが欲しがっていた毒だな。


 あの爺さん、神経毒なんて何に使うつもりだったんだ?

 ロクな使い道しか思い付かねえ。

 あの爺さんと距離を取る判断は間違っていなかったみてえだな。


 あの爺さんは転売利益が目的だっただけかも知れねえが、俺たちが売った毒を何かの事件に使われて出所を辿られてみろ。

 俺たちにまで疑いが及ぶ可能性が有ったじゃねえか。

 嬢ちゃんの説明は毒の性質にまで及ぶ。


「・・・揮発性の有る毒でね。臭いを嗅ぐだけでも麻痺の効果が有るし、肌に触れても、触れた部分が麻痺する。体内に入らなくても触れている時間が長くなると死ぬよ」

「ははぁ。麻酔効果が有るってことか」

 嬢ちゃんが不本意そうだった理由はコレか。


 単に「毒」と聞けばロクな使い方を思い付かねえのは俺だけじゃねえだろう。

 だが、ごく微量の毒は薬になることが有るらしいからな。

 逆に“過ぎたるは及ばざるがごとし”で、薬も飲み過ぎれば毒になる。

 麻酔で大人しくさせた魔獣を傷付けては治す、か。

 理には適ってんだな。



南の町㉘です。


毒!?

次回、鹿!?


※大遅刻です!

 たいへん遅くなりました!

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