文明回帰への一歩 ⑮
縦に真っ二つになったドラゴン石が、さらに薄く、鋭利に割れた破片。
傍には、残りのドラゴン石の大きな破片も転がっている。
鋭く尖った破断面の端を、指先でツンツンと突っついてみる。
これ、もしかしてイケんじゃね?
取っ手のない文化包丁のような形状の破片を、矯めつ眇めつする。
石器時代の打製石器で、黒曜石の包丁って、こんな感じじゃなかったっけな?
いつだったか、カナと一緒に旅行先で立ち寄った博物館で見た気がする。
鋭角に割れる性質の黒曜石で作られた包丁は貴重品で、黒曜石は重要な交易品だったとか。
弥生時代? いや。縄文時代だったか。
1万数千年間も続いた縄文人のお墨付きなら使えるんじゃね?
レッツトライだ。
絶望の中に一縷の光明を見た気分で、犬っコロの元へと戻る。
「切れる! 切れるぞ!?」
グロい死骸の首元に“刃”を滑らせると、カッターナイフさんなんぞよりも、余程、すっぱりと切れる。
天は俺を見放さなかった!
ドラゴン石、パねえな!!
命名! ドラゴン包丁だ!
カッターナイフさん、キミのことは忘れない!
お疲れさんっシター!!
犬っコロの喉を大きく掻き切ってキッチリとトドメを刺し、冷めてきた血で喉を潤しながら皮を剥いでいく。
本当なら、吊って血抜きしないと血生臭くて肉が不味くなるのだが、こんな馬鹿デカい犬っコロを腕力だけで頭上の枝まで持ち上げられる訳もなく、縛るロープも、吊り上げる工具も無い。
肉の臭さは甘受するとしよう。
ロープと滑車が欲しいな。
できれば、背負子も。
蔦みたいな蔓植物を見つけられれば、背負子は作れるだろう。
紐状のモノって言うなら、犬っコロの腸でも背負子は作れそうな気はするが、さすがに生臭そうなので止めておく。
腐りそうだし、強度にも不安があるしな。
あとで、手帳に“欲しいものリスト”を書き留めておくことにする。
そうこう、しているうちに、皮を剥ぎきった。
毛皮もデカいな!
布団になるぞ!
文明的だな!
畳の大きさで言えば、3帖は有る。
剥いだままだと毛皮は乾いてカチカチになるらしいから、鞣す必要が有るとは思うが、道具も材料も無いしなあ。
揉み続けて何とか柔らかくならないか、道々、試してみることにしよう。
ミョウバン? で、揉むんだっけ?
例の“山持ち”の左官職人が、イノシシの毛皮を自分で鞣したって話のときに言っていた―――、ような気がする。
昔は、草とか木の皮とか、タンニン? とかいう成分を煮出した汁で揉んだらしい。
どのみち道具も知識も無いから、どうにも出来んのだけれども。
切り出したブロック肉を、筋繊維を横向きに絶つように、適当にスライスして枝に刺して焚き火で炙る。
待望の、蛇肉以外の肉だ!
血の滴るステーキってやつだぜ! ブラボー!
「固ェな・・・」
調味料もなく、血生臭い肉を咀嚼する。
少し叩いて筋繊維を解せばマシになるか、と、枝へ刺す前にバシバシと掌の上で肉にパンチを叩き込んでから焼いてみる。
お? ちょっとだけマシになったか?
柔らかくなった気はするが、犬肉自体が固いんだな。たぶん。
雑食性や肉食の動物の肉は臭いと聞いたことが有る、気がする。
蛇肉のポカポカどころか、体がカッカと熱い。
これ、スゲえな。
けっして、美味い肉とは言い難いが、パワーだけは付きそうだ。
内臓だと、どうだろう?
習うより慣れろ、だ。
食ってみりゃわかるだろう。
肉を焼く傍ら、心臓と肝臓を取り出して、スライスしてみることにする。
文明回帰⑮です。
ドラゴン包丁!(レア度SSSランク
次回、石?




