文明回帰への一歩 ⑭
しばらく寝っ転がっていたら呼吸も落ち着いてきたので、むくりと起き上がる。
お楽しみの、獲物の検分タイムだ。
白っぽい毛皮の骸へと歩み寄って、致命傷となった部分を確認する。
「うわぁお・・・」
顔面が半分ぐらい、ぐっちゃぐちゃに潰れている。
エグいな!
自分で殺っておいで何だが なかなかの絵面だ。
頭が割れて中身が見えている。
日本でなら、モザイク処理どころか確実に放送禁止のショッキング映像だ。
「・・・行っとくか?」
喉も渇いたしな。
踏み荒らされた地面に血溜まりが出来上がりつつある。
頭骨の割れ目から垂れ出る鮮やかな赤い液体を両手に受ける。
まだ温かいな。
蛇血よりも圧倒的に量がある犬血に口を付けてみる。
鉄臭く、獣臭い気はするが、蛇血のような生臭さは少ない。
粘つきがある血を嚥下する。
胃の辺りで、カッと猛烈な熱が爆発した。
「ぐおおお!!」
染みる!!
強い酒を飲んだときのような喉の熱さは感じないが、文字通り、五臓六腑に染み渡る熱さは、ストレートの蒸留酒を一気飲みしたときに近い感じだ。
「これ、癖になりそうだな」
触角ヘビ不思議パワーでの仮定が正しければ、危険物レベルが触角ヘビよりも高かった犬っコロは、不思議ちゃんパワーも強いはずだ。
作業ジャケットやカッターシャツを汚さないように気を付けながら、カッターナイフを取り出す。
無いとは思うが、再び動き出さないように、トドメを刺すべく首筋の毛皮に刃を突き立てた。
パキィン、と、澄んだ金属音を響かせて、カッターナイフの折れ刃が圧し折れた。
スローモーションで回転しながら飛んで行く金属片を、俺の目が、しっかりと捉える。
「うああっ!?」
不味い!
最重要ツールの一つであるカッターナイフさんがお亡くなりになっちまった!
「逝っちまった・・・」
がっくりと、地に両手をつく。
再びのORZポーズだ。
残った刃は1センチメートルほど。
新品の替え刃に交換したのは昨日だぞ。
替え刃なんて気の利いたものは、もう残っていない。
簡単に替え刃を買えるコンビニなんてものも、ここには無い。
「ふあああ・・・」
絶望感に脱力して、仰向けに寝っ転がる。
カッターナイフの替え刃1枚で頭の中が真っ白になる経験なんて、生まれて初めてだぞ。
「どーすんだよ・・・」
1センチ程度の刃じゃあ、お蛇様すら解体できねえぞ。
犬っコロなんて尚更だ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ」
頭を抱えて、力なくゴロゴロと転がる。
転がってどうなるものでも無いのが分かっていても、転がるのを止められない。
「あん?」
視界の端に、キラッと、何かが光ったのが見えた。
ゴロゴロを止めて、よく見てみる。
破片―――、か?
原生林にガラス瓶の破片が落ちているとは考えにくいと思うんだが・・・。
のそのそと四つん這いで這って行って、拾い上げてみる。
文明回帰⑭です。
ダメージ大!!
次回、新アイテム取得!?




