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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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転生者 ⑯

「重ねて言うが、集落を丸ごとレティアの町へ移してはどうだ?」

「郷へ持ち帰って皆と相談するよ」

 前伯爵が向けてきた真摯な目にレイクスが頷く。


 レイクス自身は前伯爵たちを信頼に値する人物だと評価したんだろうが、レイクスは開明的な立ち位置だからな。

 郷の連中は保守的な立ち位置だし、俺に対しても心を開かなかった連中が居るんだから、アイツらがヒト族の町へ移住するのかといえば可能性は低いだろう。


 かと言って、このレイクスに移住を拒否する連中の切り棄てができるのかといえば、それも難しいだろう。

 随分昔のこととはいえ、親の代に起こった事件だと捉えている連中も多い。

 早く代替わりするヒト族だと数十代も昔のことになるんだろうが、寿命の長いエルフ族の中では500年経っても風化しちゃいねえんだ。


 家族や友人を奪われたエルフ族の心情を思えば、いい加減、恨みや憎しみを棄てろ、なんて言えねえ。

 レイクスはその難しさを分かった上で持ち帰ると言っている。

 どこまでエルフ族の心情を理解しているのかは分かんねえが、前伯爵は諭すように言葉を重ねる。


「そうすると良い。エルフ族の喪失は人類の損失だ」

「必要とされるのは有り難いことだけど、大袈裟じゃない?」

 こっちの世界の文明進度とエルフ族が持っている技術を天秤に掛ければ、決して間違っているとは言えねえし、前伯爵は本気で言ってるっぽいんだがな。


 褒め上げられた側のレイクスが針小棒大と捉えるのも仕方ねえ。

 何せ、ヒト族はそれほど重要な技術を持っているエルフ族を滅ぼそうとしたんだ。

 苦笑するレイクスに前伯爵は大真面目な顔で首を振る。


「何を言う。今、この場においても私たちに新たな知見をもたらして見せただろう」

「・・・そうだよ。お互いの知識と技術を教え合って全体を底上げすれば、もっと強くなって、みんなの生存率が引き上がる。みんなで生き残るんだよ」

「本気で神教会勢力を打ち破るつもりなんだね」

 前伯爵を銀髪の嬢ちゃんが後押しし、母娘の本気を感じ取ったらしいレイクスもまた、真剣な目を母娘に向ける。

 レイクスの視線を受け止めた前伯爵が、好戦的に口角を引き上げる。


「当然だろう。“ウォーレスは王国の盾。ピーシスはウォーレスの剣”と言ってな。“王国最強”は伊達ではないのだぞ?」

「そうよ! テレサとも一緒に勇王を倒す約束をしているんだから!」

 金髪の嬢ちゃんまで前伯爵を後押しして物騒なことを言い始めた。

 テレサってのは王女だったな。


 この国の意志決定システムは王権を持つ国王が決定権者だが、国王の下に王宮という名の官僚システムが有ると聞いている。

 この官僚システムが中央省庁の役割で、国内各地を治める貴族が地方自治体だ。

 前伯爵と銀髪の嬢ちゃんは国内最大の権勢を誇るウォーレス家の重鎮だったな。


 ここまで自信満々に言いきるってことは、この母娘はウォーレス家の意志決定に強い影響力を持っているんだろう。

 こっちの金髪嬢ちゃんは、まだ幼いとはいえウォーレス家の当代で、王女とも合意しているといっている。

 あちこちの土地で耳にした噂じゃあ、もう1人いる王子がボンクラで次の国王は王女じゃねえか、って話だったな。


 つーことは、国王の意向も同じか?

 王都へ戻ったらドネルクに裏を取っておくべきだな。

 国王の意向がどっちを向いているかで、俺たちも心の準備の程度が変わる。


「・・・大切な人たちを守る為に、私たちは絶対に勝つよ」

「大切な人たちを・・・」

 銀髪嬢ちゃんのダメ押しにケイナも呑まれちまってるな。

 俺の迷いを見抜いたようにダメ押しして来やがった。

 嬢ちゃんは覚悟を示したんだろうが、もう1歩踏み込んで訊いておくべきか。


「勝つために地球の知識を用いることも躊躇わないと?」

「・・・うん。どんな手でも使うし、どれだけ敵の命を奪うことになっても躊躇わない」

 即答しやがったな。


 俺みてえに世界の境界を越えてきたヤツは転移者って言うんだっけな。

 召喚魔法だか何だかで拉致されて来た勇者も転移者だ。

 それに対して、生まれ変わりでこっちの世界の住人になっちまった嬢ちゃんみたいなのが転生者だ。

 これが転生者の覚悟か。


 ジッと目を見据えても嬢ちゃんはビクとも揺るがねえ。

 とっくに腹は括ってるってわけだ。

 こりゃあ、覚悟を問われてるのは俺の方だな。

 根負けして背もたれに上体を預ければ、勝手に俺の口から溜息が漏れやがる。


「そっかぁ・・・。そうだろうな」

「テツ?」

 レイクスが心配そうな目を向けてくる。


 分かってんだよ。

 ああ。とっくに分かってたことだ。

 本気でレイクスやケイナを守ろうと思えば、俺もウジウジと迷う余地なんてねえんだ。

 今さら「どうすんだ?」と訊かれるまでもなかったことだろうが。


「ん? ああ。俺も腹を括るべきなんだろうと思ってなぁ」

「・・・どういうこと?」

 俺に覚悟を訊いて来たお前が首を傾げてんじゃねえよ。

 まあ良いや。

 この嬢ちゃんにも関係性の詳細を明かして置いた方が良さそうだな。



転生者⑯です。


エルフ族の心情!

次回、協力関係!?

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