転生者 ⑮
「ふむ・・・。これは風の術式か?」
「・・・確かに。刻印から風属性の魔力を感じるよ」
頭を寄せ合って母娘で頷き合っていた前伯爵がレイクスに目を向け直す。
「放つときに籠めた魔素の強さで矢の曲がり方が変わるんだ」
「ほう。使いこなせば障害物が障害物でなくなるわけか」
ポイと手渡された矢を銀髪の嬢ちゃんが金髪の嬢ちゃんへバケツリレーし、今度は金銀娘たちが頭を寄せ合う。
こうして見ると玩具を与えられた普通の子供にしか見えねえんだよな。
「本物の魔法道具って、こういうものなのね」
「・・・鏃の金属は―――、この色はテツさんが言った通り、銅っぽいかな」
金髪嬢ちゃんの感想に銀髪嬢ちゃんが観察結果を指し示している。
銀髪嬢ちゃんの見解に前伯爵が首を傾げる。
「銅というと、鉄よりも柔らかい金属だったか」
「・・・地球と同じ性質なら、熱や電気の伝導率が高くて比較的加工しやすい金属、かな。あと、錆びても表面だけで鉄みたいに中まではダメにならないはず」
そうだっけか?
銅は腐食するんじゃね?
俺の記憶違いかも知れねえが。
銀髪嬢ちゃんのウンチクに首を傾げたくなったが、まあ、どうでも良い話だろう。
専門職でもねえ限り、人間の記憶なんて適当なもんだしな。
「柔らかい金属だと鏃には向かんのではないか?」
「他に素材が無かったからね」
前伯爵から疑問を投げ掛けられたレイクスが肩を竦める。
だろうなあ。
あの森の中で手に入るものなんて限られるはずだしな。
鳥から金属が採れるなんて普通は考えもしねえだろ。
売り込みのつもりか、前伯爵が口を開く。
「ふむ。ウォーレス領は領内に良質な鉄鉱山を持っている。何かの魔法道具を作るなら、ふんだんに鉄を使えるぞ」
「そりゃあ、ロブウッドたちが喜ぶなあ」
むしろ、アイツらには聞かせねえ方が良いのか?
自分の手で鉱山へ鉄鉱石を掘りに行くと言い出し兼ねねえしな。
その姿が在り在りと脳裏に浮かんで笑いそうになった。
魔法道具から顔を上げた銀髪の嬢ちゃんが首を傾げる。
「・・・誰?」
「ドワーフ父娘の親父の名前だ」
そういや、ロブウッドの個人名は初めて出したっけか。
「・・・ほうほう。お父さんがロブウッドさんね。娘さんの方は?」
「娘の方はリットだ。あの父娘もヒト族に酷い目に遭わされて故郷に居られなくなってな。少しばかりヒト族嫌いだが悪いヤツらじゃねえんだ。仲良くしてやってくれ」
「・・・当然だよ!」
イイ笑顔で銀髪の嬢ちゃんがグッとサムズアップを返してくる。
リットもヒト族には強い警戒心を持っちまってるが、この嬢ちゃんならリットの心を解してやってくれるんじゃねえかな。
リットも世間擦れしてねえところが有るし、この嬢ちゃんも似た感じの部分が有るし、仲良く出来るだろう。
一通りの事情を把握した前伯爵が、事前情報はもう良いと判断したのか元の話題へと話を戻す。
「それで? 新たに集落の周辺に出るようになった魔獣は何だ?」
「犬っコロだ」
「・・・バンダースナッチだよね?」
俺の答えに、銀髪の嬢ちゃんが即座に修正を加えてきた。
すんなりと状況を理解した前伯爵がピクリと眉根を寄せる。
「先日のショージョーも本当に拙かったんだけど、バンダースナッチも群れる習性を持つ魔獣だろう?」
「群れの魔獣は脅威度が跳ね上がるからな」
「・・・集落がエサ場として狙われるってことかぁ」
問題点を明かしたレイクスに前伯爵と銀髪の嬢ちゃんが理解を示す。
群れのヤバさを知ってるヤツ同士だと話が早えな。
「ねえ、フィオレ。罠で何とかなるんじゃないの?」
「・・・バンダースナッチに関しては、だね。ショージョーは難しいと思う」
金髪の嬢ちゃんが対抗策を挙げたが、銀髪の嬢ちゃんは難しい表情で首を振った。
この嬢ちゃんは出来ることと出来ないことに明確な線引きを持ってるっぽいな。
「罠か・・・。直ぐに覚えるショージョーには、確かに効果が薄いだろうね」
「テツ殿はショージョーを倒したのだろう? どうやって倒した?」
銀髪嬢ちゃんの見解にレイクスが同意する。
前伯爵の目が俺に向いた。
「石を投げただけだぜ。昔から百発百中でな」
「・・・投石かぁ」
銀髪の嬢ちゃんが俺の返事に難しい顔で唸る。
俺の場合は、単なるデッドボールだけどな。
意識してるわけじゃねえのに、どうしてもバッターを直撃するんだよ。
不思議だよな?
草野球でKO勝ちはなかなか出来ねえと思うぞ。
転生者⑮です。
KO勝ち!
次回、誘い!?




