転生者 ⑪
「・・・それで、ゴーレムの作り方はどうします?」
「良いよ。アレ、気になってたんだ」
今度はすんなりと承諾を返したな。
レイクスは巨大ゴーレムと最初に聞いたときから強い関心を示していたし、伝承を実現しようと人間の手でゴーレムを作ろうとする試みは成功した例しがないと興奮していたもんなぁ。
魔法道具作りに傾倒しているレイクスにとって、成功例の具体的手法は知識欲を強く刺激するものなんだろう。
「それで、血の効果だったね?」
嬢ちゃんが頷き返したことで取引条件は合意に至り、レイクスの目が前伯爵へと戻る。
レイクスの確認に前伯爵も深く頷き返した。
「我々の方では、自ら手を下した魔獣の体内保有魔力の一部を血と共に摂取しているのではないかと考えているが」
「僕らの見解も同じだよ。自身で手を下した魔獣の魔素を取り込むのではないかと推測している」
見解を明かしながらレイクスがチラリと俺にも確認の視線を送ってくる。
前伯爵とレイクスの言う「自ら手を下した」ってのは、“戦闘に参加した”とか“一撃を入れた”とか言い換えても良い。
俺の場合は、日本でヒナと遊んでいたゲームシステムに準えた推察をしていたわけだが、そう的外れなものでもないんじゃないかと感じている。
俺が頷き返したのを見て取った前伯爵が思案顔になった。
「ふむ・・・。しばらく摂取を続けると魔力の活性化が起こらなくなることは?」
まだ何か有るのか? と思えば、前伯爵が訊きたいのは胸がホカホカするアレのことだろうな。
俺たちにも原因は分かんねえが、俺たちの経験を教えてやれば良いんだろう。
「さらに強い魔獣の血を飲めば続くぜ」
「はい。実証済みです」
俺の答えをケイナが追認する。
小さく頷いた前伯爵が更なる確認を投げ掛けてきた。
「体内保有魔力―――、魔素量が増えることは?」
「魔素の活性化が感じられる間は魔素量も増え続けるね。僕らは数日前まで郷を出たテツとケイナに会えていなかったんだけど、しばらく振りに会ってみれば驚くほどにケイナの魔素量が増えていたし」
俺が答えるよりも早く、レイクスの口から客観的な観測結果が告げられた。
レイクスの目は特別製だからな。
俺たちの体感で判断するよりも客観性が有る分、レイクスの観測結果は信憑性が高え。
「・・・予想通りだね。まだまだ体内保有魔力量を増やせそう」
「そのようだ」
納得顔で頷いた嬢ちゃんに前伯爵が同意を示した。
ふむ・・・。訊いておく方が良いか。
「魔素の量が何かに関係するのか?」
「・・・それはテツさんが一番強く体感してるでしょ」
「体が強くなるってことか」
こりゃあ、日本で暮らした経験を持つ嬢ちゃんも同じ予想を立ててるんだろうな。
ゲームシステム的な感じで経験値的なものを得て、ステータスが上昇するイメージだ。
戦闘に参加したキャラクターにのみ経験値の振り分けが行われて、キャラクターが強くなる。
現実には経験値みてえなパラメーターではなく即物的に“体内の魔素”が増えるわけだが、似たようなもんだろう。
ゲーム的に考えれば、運営会社だったり神だったりの上位権限を持つ管理者が経験値を振り分けてくるんだろうが、そういったものの存在を感じたことは一度もねえ。
むしろ、精霊なんて超常的生命体が身近に実在するってんだからオカルトの領域だろう。
念押しで訊けば、嬢ちゃんが深く頷く。
「・・・魔法もだよ。術式に籠められる魔力量が増えるから一撃の威力が上がるし、スタミナというか、持続力も上がる。体内保有魔力量が少なくて魔法術師の道を諦めていた人が魔法術師になれることも有るし、もしかして、イエーティに殴られても平気なぐらいに防御力が上がったりもするのかな?」
「犬っコロに囓られても平気な程度にはな」
訊き返してきた嬢ちゃんに頷いて返す。
意味が通じなかったらしい嬢ちゃんが、コテッと首を傾げた。
「・・・犬っコロ?」
「バンダースナッチのことです」
慣れきっているケイナが平然と補足すると、呆れを含んだ納得顔で嬢ちゃんが頷いて理解を表明する。
ケイナの補足でも理解できなかったらしい前伯爵が眉根を寄せて疑念を呈した。
「待て。バンダースナッチにわざと自分を囓らせてみたことが有るのか?」
「おう。今日は熊パンチを受けてみたぞ」
巫山戯て返してみれば、理解を諦めたような顔で銀髪の嬢ちゃんが証言する。
「・・・平気な顔をして殴られてたよ」
銀髪の嬢ちゃんの証言を金髪の嬢ちゃんもコクコクと頷いて肯定すれば、前伯爵の目が面白そうに細まった。
ニィッと口角を引き上げて嗜虐的な笑みを浮かべやがる。
「ほう?」
「おおっと。止めてくれ。俺は平和主義なんだ」
アブねえ奴だな。
この女、試し斬りしようとか考えてるだろ。
転生者⑪です。
アブナイ女、再び!?
次回、理解不能!?




