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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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転生者 ⑨

「そう言えばそうだったね。作り話かぁ・・・」

「・・・ふおおおおっ!! 闇魔法には、そんな使い方が!? 言われてみれば、空間に作用するんだから有り得るよね!! 物流革命が起きるよ!!」

 落ち着いたレイクスとは対照的に、銀髪の嬢ちゃんがエレえ勢いで食い付く。

 クルンと隣に座る前伯爵に体ごと向き直って訴える。


「落ち着け。話が進まん」

 目を輝かせて興奮している娘に向けてスッと腕を伸ばした前伯爵は、指先で額をツンと押し戻した。

 あしらい方は雑だが、いつもこんな感じなのだろうことは想像が付く。

 それでも嬢ちゃんは諦めない。


「・・・だってだって! 小さな鞄に荷馬車1台分の兵站が入ると考えてみて!」

「ふむ。なるほどな。―――それで?」

「・・・むー」

 前伯爵の目はレイクスへと戻っていて、訴えを軽く流された嬢ちゃんは両手で額を押さえてむくれている。


 母親も娘もそれぞれに洒落にならねえほどの戦闘力を持っていても、こうして見れば普通の母娘だな。

 この様子を見れば、養女でも嬢ちゃんの自由な発言と養母に甘えることが許されていて、前伯爵も養女の自由を寛容に許していることが明確に分かる。

 母娘のやり取りに目を細めていたレイクスがマジックバッグを目で示す。


「連中がこういった魔法道具を持っていると聞いたことは?」

「無いな。勇王国の部隊と交戦したことも有るが、普通に輜重部隊を連れて―――、ああ、そういうことか。だから、神教会は闇術式の知識を持っていないと言えるわけだな」


 レイクスの見解に前伯爵が理解を示した。

 前伯爵も納得した様子を見せているところをみると、見解は一致したみてえだな。

 実際に戦場で戦った経験が有るらしい前伯爵も同意するなら、レイクスの見解は間違っちゃいねえんだろう。


「・・・あっ。そうか。空間をずらす? アレってマジックバッグと同じ理屈なんだ」

 レイクスと前伯爵に注目が集まっている間、また何やら視線を泳がせて考え中だった銀髪の嬢ちゃんが、思考へのトリップ状態から帰ってきた。

 レイクスたちの目も嬢ちゃんへと戻る。


「アレ、というのは?」

「・・・神教会勢力が送り込んできた暗殺者が持っていた魔法道具が手元に有るんですよ。景色が揺らいだように見えた場所から攻撃して来たのは、そのずらした空間の中に潜んでたってことだよね?」


 ほう? マジックバッグと同じような機能を持つ魔法道具を持ってるのか。

 言い方から察するに鹵獲品か?

 娘の指摘に前伯爵も思い出した様子で頷いている。


「あの遺物が有ったか。そうすると、奴らも闇術式の技術を持っている可能性が残るな」

「手元に有るの? どういう機能を持つ魔法道具か、僕が確認してみても構わないけど」

「そうしてやってくれるか。国王陛下からフィオレが研究の許可をいただいてな。ウォーレス家の本拠地、レティアの領主館で現物を保管している」


 レイクスの申し出に前伯爵が乗る。

 国王の承諾を取っているのが嬢ちゃんってのは意味分かんねえが、研究の許可を直々に出してるってことは国王も関心が有るんだろう。


 レイクスが解析を請け負ったとしても、表に出る名前が嬢ちゃんならエルフ族に注目が集まることは避けられるな。

 実際の手柄が誰に有るのかは、知るべきヤツが知ってりゃそれで良い。

 1つの決着が付いたかと思えば、嬢ちゃんは再び頭を捻って記憶を探るようにしている。


「・・・えっと。なんて名前だっけ? 闇魔法といえば、奴隷の首に付ける魔法道具も保管してるよね?」

「“隷属環”かな? あんなもの、まだ使ってるんだ?」

 魔法道具の特徴を聞いたレイクスが嫌そうに眉を顰める。


 ああ。アレのことか。

 チラッと目を向ければ、ケイナも嫌悪感を顕わに眉を寄せていて、クァタルたちも眉間に皺を刻んでいた。

 自分の記憶と違ったのか、嬢ちゃんが首を傾げる。


「・・・“れいぞくかん”?」

「“奴隷環”のことだろう」

 前伯爵の助け船に嬢ちゃんの表情にも理解の色が浮かぶ。


「ああ。ヒト族はそう呼んでいたんだっけ」

「・・・なんで呼び方が違うんですか?」

 呼称の違いはレイクスも記憶に有った様子で、そのレイクスに嬢ちゃんが疑問をぶつける。


「あれを作ったのはお祖父様よりもずっと古い時代のエルフ族なんだけど、魔法術式を使う犯罪者を安全に拘束するための魔法道具だったんだよ。それをヒト族は奴隷に言うことを聞かせるために使った」

 ははぁ。用途の―――、対象者の違いで呼称に違いが出たのか。

 警察機関が犯人の拘束に使う手錠みたいなもんだ。


 手錠だって武装テロ組織が人質の拘束に使うことは多々有る。

 その魔法道具を作ったエルフ族は目的通りに使い、神教会とそのお仲間は武装テロ組織と同じ使い方をしたわけだ。

 目的は同じでも、使用する対象が犯罪者と奴隷では道具の持つ意味合いが大きく変わる。


 手にした奴によって用途が変わることは、よく有ることでは有るんだが、マジでロクでもねえ連中だな。

 世界最古の国家のくせに、奴隷制度なんてものを用いたことが一度もない日本って国が特殊なんだろうと考えていたが、その魔法道具を生み出したエルフ族も転生してきた日本人と感性が同じなんだから不思議なもんだ。



転生者⑨です。


道具の使い方!

次回、バーター!?

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― 新着の感想 ―
律令制時代の日本では名実ともに奴隷制が制定・運用されていて、奴婢(ぬひ)と呼ばれる階層が奴隷身分者として扱われていたと教わりましたが、最近の若い方は奴婢のことは教わっていないのでしょうか?
日本でも実質的な奴隷制度は存在したけど教科書的にはそう呼ばれてないからテツさんがピンと来ないのも当然か
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