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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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転生者 ②

「ああ~。肩の荷が1つ下りてホッとしたぞ。フィオレの嬢ちゃんに頼んで正解だった」

「メシは食っていくだろう?」

 再び緊張しかけた場の空気を霧散させるためか、これ見よがしにドネルクが肩の力を抜き、前伯爵もアッサリとドネルクに乗る。


 これが貴族ってヤツか。

 付き合い始めでは、どこに地雷が有るのか分かんねえし神経を使う。

 かと言って、サッパリした印象で後に尾を引く感じもねえ。


 日本で営業先の企業経営者(エライさん)と話しているのと同じ感覚で気を抜いてると、足元からひっくり返され兼ねねえな。

 惰性で緊張感を忘れて礼を失しないようにしねえと。

 時間を確かめるように太陽を見上げたドネルクが前伯爵の招待に頷く。


「そうだな。昼食後に出発しても、今日中にサボット領には入れるだろう」

「直ぐに用意させよう」

 前伯爵の合図でメイドの1人が退室して行ったところを見ると、厨房へ昼食の準備でも指示しに行ったんだろう。


「・・・んー」

 室内の空気が緩んで席の近いもの同士が雑談を始めている中、銀髪の嬢ちゃん1人が記憶を探るように宙を見上げている。


 この嬢ちゃん、話している最中に突然ボーッとしたりと行動が読めねえところが有るんだが、あんまり表情が変わらないように見えて、よくよく注意して見ていると、結構、表情がコロコロと変わるんだよな。

 今もボーッとしているのかと眺めていると、何か思い出したようで、突然パチパチと(まばた)いたと思えば母親へクルッと顔を振り向けた。


「・・・あっ。お母様。お昼の後にもう少しテツさんたちと話したいんだけど、お母様も良い?」

「何の話だ?」

 俺たちにまだ用が有るのかよ。

 母親の前伯爵は、といえば、嬢ちゃんの特徴的な言動には慣れているのか、何事も無かったように首を傾げて娘の顔を見返す。


「・・・“獰猛くん”―――、ゴーレムの話とか、ちょっと色々」

「構わんが、私が居る必要が有るのか?」

 色々ねぇ・・・?

 前伯爵も怪訝な表情になっている。


「・・・必要なんだよ」

「ふむ? 良かろう」

 どうするつもりかと観察していると、嬢ちゃんが前公爵を押し切った。


 それで良いのか? と思う部分も有るが、嬢ちゃんに信用が有るのか前伯爵が寛大なのか、母娘間でしか分からない関係性が有るんだろう。

 王都への帰途に就くドネルクも一緒に昼飯を食ってから、見送りにアプローチへ出る。

 実家から付けられたらしい従者たちと一緒に馬上の人となったドネルクが、代表して歩み出た前公爵と女性騎士の1人に別れを告げる。


「では、またな」

「おう。道中、気を付けてな」

 最後まで男言葉でアッサリと返すのは前伯爵の資質なんだろう。


 こうして傍目に見れば、横柄にも見える前伯爵の態度は女だと思うから違和感を覚えるだけで、アレが男だと思えば何の違和感もなく自然体に見えるな。

 女性的な主張が激しい体型で見るからに美人だから、こっちが勝手に抱いたイメージとのギャップに違和感を持っちまうんだろう。


「エゼリア嬢も、また近い内にな」

「はい。ドネルク様もお気を付けて」

 あの女性騎士がエゼリアか。

 嬢ちゃんが何度か口にしていた名前だな。


 別れの挨拶を終えたドネルクが従者たちを引き連れて出発し、通りの角を曲がってドネルクたちの姿が見えなくなると見送りに出てきていた連中が解散して、雑談なり作業なり各々の仕事に戻る。

 体ごと振り返った嬢ちゃんがトコトコと俺たちの前へと歩いてくる。


「・・・じゃあ、テツさんたち。ちょっと良い?」

「構わねえよ」

 宙に浮いていなけりゃ俺のヘソほどしか身長がない嬢ちゃんを見下ろして承諾する。

 性格を表すようにノシノシと歩いてきた前伯爵が傍に立つと、嬢ちゃんは母親の顔を見上げた。


「・・・お母様。話って、“私のこと”なんだけど」

「フィオレの? ミセラたちなら構わんのだな?」

「・・・うん」

 頷き返した娘の顔を思案顔で見ろしていた前伯爵は、意味深に暗示されると即座に行動へ移した。


「エゼリア! アンリカ! 獲物をレティアへ持ち帰る! トリアたちも手伝ってやれ!」

「了解しました!」

 命令を受け取った女性騎士たちが敬礼で応え、身を翻した前伯爵は金髪の嬢ちゃんを引き連れて屋敷へと戻っていく。

 母親たちの背中を見送った嬢ちゃんは後ろに控えているメイドへ顔を振り向ける。


「・・・ミセラさん。お茶を淹れて貰って良い?」

「承知しました」

 このメイドは森の中でも嬢ちゃんの傍にいることが多かったな。


 メイドの先導で屋敷に戻る嬢ちゃんの後に俺たちも続く。

 食堂へ戻ると再び席を勧められた。

 俺たちの正面に座っているのは、前伯爵と娘たちの3人だけだ。


 ドネルクが去ってからの流れを思い返せば、どうやら本題はプライバシーに関わるものらしいと想像が付く。

 この嬢ちゃんに“隠し事”が有るらしいことには気付いていたし、極めて身近な家族と信頼の置ける配下だけが知っているセンシティブな話題だろうとアタリを付けた。


「で? ゴーレムの話だったな」

「・・・テツさんは気付いてると思うけど、私って、元日本人なんだよ」

 母娘の会話に出ていた馬鹿デカいキーアイテムを挙げてみれば、嬢ちゃんはアッサリと認めた。


 そうじゃねえかと思ってたよ。

 容姿は日本人じゃねえのに本人は「元日本人」だと主張する。

 フィオレ・ピーシス、だったか。

 冗談みてえな話だが、この嬢ちゃんは転生者ってわけだな。



転生者②です。


エピソードタイトル回収!

次回、身バレ!?

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