転生者 ①
「・・・じゃあ、これで解決だね」
「俺はこの後、直ぐに王都へ戻るが、お前たちはどうする?」
安心した様子で息を吐く銀髪の嬢ちゃんに目を細めたドネルクが、俺たちへと視線を移してくる。
「どう」ってのは行動予定だな?
ドネルクは別の俺たちの上司って立場じゃねえんだが、冒険者という個人事業主の群れをまとめる管理者では有る。
結果さえ伴えば必要以上に縛られることもねえのが個人事業主だが、行動予定の把握と請負業務進捗の把握はドネルクの職務範囲内だろう。
ギルド長以外の立場が顔を見せる場合は上位者の意向が雑じってくるから要注意だが、この男の場合は過干渉もしねえし、人間性も真っ直ぐだ。
誠意をもって業務を完遂すれば円満な関係性を維持できると信じられる程度には信頼が置ける。
倫理観が未発達な社会では誰も彼もが信じるに値するわけじゃねえから、こういうヤツのと関係は貴重なんだよ。
前伯爵たちと俺たちに接点を持たせようと裏で動いていたことに思うところが無いわけじゃねえが、背景と情勢を考えれば許容範囲だろう。
結果的に現状で考え得る状況の中で最良の結果に繋がったと思えば水に流せる。
「何とか言う領地の間引きを済ませてから王都へ戻る」
「間引き? ああ。メイラー子爵領の獣害か」
記憶を探ったドネルクが納得顔で頷く。
依頼書の束を管理しているケイナに「合ってるか?」と視線で確認すれば、ケイナも頷き返して来た。
銀髪の嬢ちゃんが首を傾げる。
「・・・獣害って?」
「放牧地を荒らす牛と家畜を襲う鳥だったか」
確か、そんな依頼内容だったはずだ。
牛は追い込み猟で対応できるだろうし、鳥はケイナの魔法と投石で撃墜するつもりだったから、あんまり詳しく覚えちゃいねえんだよな。
「・・・それって魔獣?」
「いいや。普通の野生動物だ」
俺に代わって嬢ちゃんに答えたのはドネルクだ。
「・・・あ~。コウモリみたいな感じかぁ」
「まさか、・・・あんな仕事じゃねえだろうな?」
嬢ちゃんの口から不吉な名前が出てドネルクに目を向けると、ドネルクも嫌そうな顔になっている。
「違う違う。高く売れる肉が採れるから普段なら引き受ける冒険者が居るんだがな。コウモリほど臭いの酷い野生動物なんて、そうは居ないから心配するな」
「あれは本当に酷い臭いでした」
しみじみと零したケイナが首を振る。
また駆除依頼が回ってくる可能性が有るし、コウモリ退治の上手いやり方も考えておかねえとな。
前回も上手くやれた方だと自負しちゃあいるが、もっと効率的な方法は有っただろうし、現場に排水経路がなかったら、打つ手に困った可能性も有る。
今後に備えての方法論の構築は、やっておいて損はねえ。
俺たちの行動予定を聞き終えたドネルクは満足した様子で、追加の質問をするつもりはないようだ。
話し合いが終わる気配を感じて俺も記憶を探る。
もう、何もなかったよな?
ああ。進捗と言えば、アレが有ったか。
「そういや、クランの件ってどうなってんだ?」
「今のこの件で保留になっていた。俺から陛下へ報告を上げての判断だな」
ドネルクの回答に納得する。そりゃあ、先ずは俺たちの扱いと接し方を決めねえと答えらんねえわな。
まあ、俺たちの立ち位置と立ち回り方が決まってドネルクも納得してるんだから、楽観視しておいても大丈夫だろう。
国王が承認するものだと考えて前倒しで進めておこう。
これで終わりかと思えば、今度は金髪の嬢ちゃんが首を傾げる。
「“くらん”って、何?」
「冒険者パーティーの集合体だ。効率良く多くの依頼をこなせる仕組みでは有るんだが、過去に色々と問題を起こした連中がいて王国では結成を禁止されていた」
「「へぇー」」
ドネルクの説明に金銀娘たちが声を揃えて感嘆する。
こっちが終われば、また次だ。
前伯爵が目付きを厳しくしてやがる。
「何の目的で結成するつもりだ?」
前伯爵もドネルクのように過去の経緯を知っているみてえだな。
無害アピールは必要か。
「人員の育成だよ。いちいち逃げ出されちゃ、この国も困るだろ。俺たちも身を守る戦力が必要だしな」
「ふむ。一理あるな」
俺の答えに前伯爵が納得した様子を見せる。
以前、存在した冒険者のクランは、問題を起こしまくって国に潰されたらしいが、よほどバカな連中だったんだろう。
命の危険が伴うからこそ身元不明な怪しい奴でも就ける冒険者って自由業は、武装した便利屋で何でも屋だぞ。
そんな連中が徒党を組もうってんだから、危険な武装テロ組織予備軍にも等しい。
秩序を保つ必要が有る支配者層からすれば、野放しにしておくメリットが勝っている内は良いが、デメリットが勝れば泳がしておく意味は全くねえ。
調子に乗って羽目を外さねえように引き締めておかねえとな。
過去のバカどもと同じ轍を踏むなんてことが有っちゃあマヌケにも程がある。
転生者①です。
冒険者の立ち位置!
次回、フィオレ・ピーシス!?




