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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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ディール ㉒

「相変わらず、よくもまあ、こんな案を思い付くものだな」

 呆れた目を向けるドネルクに、嬢ちゃんはニコリと笑い返している。

 余裕の表情を顔に貼り付けてはいるが、それが営業用スマイルであることは俺にも感じ取れる。


 1国の軍事部門トップを務めていた男を相手によくやるぜ。

 ドネルクが善良な人間だからこそ通用しているだけだろうが、それでも、こういう度胸の据わったヤツがケイナの親しい友人で在ってくれるなら頼もしい。


「良いじゃねえか。キチガ〇教団を虚仮(コケ)にした見事な案だと思うぜ」

 支援に入れば、嬢ちゃんが少し緊張を緩めた。

 俺が嬢ちゃんの味方をしたことで、ドネルクも表情を緩めて頷く。

 

「確かにな。だが、長期的にはどうする? いつまでも誤魔化し続けられんだろう」

「・・・上手く時間を稼げても、10年も保たないかなぁ。その上で訊くけど、エルフ族やドワーフ族はどうする?」

 ドネルクから心配そうな目を向けられた嬢ちゃんは、未来へ目を向けるように天井へ視線を飛ばし、そして、決して明るくはない見通しを口にした。


 嬢ちゃんが投げ掛けてきた問いを言い換えれば、俺たちは「ファイナルアンサー?」と問われているわけだ。

 テーブルを挟んで居並ぶ俺たちへ目を向け直してきた嬢ちゃんから感じるものは、未来への“悲観”ではなく“覚悟”だな。


「時間を稼ぐ、か・・・。必要なのは生き残るための技術協力ってことだろ?」

「・・・そういうこと」

 質問への答えを出す前に意図を訊き返せば、嬢ちゃんは深く頷いた。


「・・・侵略戦争はダメって言われてるから、こっちからは戦争を仕掛けたりしないけど、向こうから攻めて来たなら手加減する気は無いよ。最終的に神教会を叩き潰してしまえば、より安全に暮らせるようになるんだし、目指すべき最終目標は明確に見えてるよね」


 嬢ちゃんの考えは、“専守防衛”だな。

 だが、「用意ドン」と始めてからの見据えているゴールは苛烈なもので、“〇〇の会”だか何だかって幼稚な理想論を振り回す団体が聞けば目を血走らせて発狂しそうなものだった。


「勝つための手段を選ぶ気は―――、無さそうだな?」

「・・・戦争って、殺るか殺られるかだよ? 綺麗事を並べて平和になるなら戦争なんて最初から起こらないんだよ」

 返ってきた答えに吹き出しそうになっちまった。

 いやまあ、中身は全然、笑える話じゃあねえんだが。


 嬢ちゃんはなかなかの覚悟だと思う。

 だが、やり過ぎは新たな外敵を作る可能性も有るし、味方陣営内でケイナたちまで“過激派”に分類される事態になれば新たな不利益を生む可能性も有る。

 仲間の命が掛かっているだけに、慎重に慎重を重ねておく必要が有るな。


「徹底的にやるつもりか。嬢ちゃんの考え方は理解した。―――フレイアさん。娘さんはこう言ってるが、アンタの考えは?」

「大いに同意するところだな。敗者に選択肢は無い。後で非難を浴びることになろうとも、勝たんことには選択肢も残らん」

 保護者の意見も全く同じか。


 てことは、親玉であるウォーレス家―――、いや。ウォーレス領全体の考え方がこの母娘と同じものなんだろう。

 小学校へ入るか入らないかの女児まで思想が徹底しているとは恐れ入る。

 思想の徹底は互いを縛り合って団結を生む。

 方向性は真っ当なものだが、本質はカルト教団と大差ねえな。


「戦争に強い領地だとは聞いていたが、道理で強いわけだ」

 俺の率直な感想に、レイクスも俺に目を向けてくる。

 こりゃあ、いよいよ決断どころだな。


「テツの判断は?」

「組むならウォーレス領だな。理想的と言っても良い。ここまで覚悟の決まってる相手には、そうそう出会えるもんじゃねえよ」

 俺の判断を伝えれば、レイクスも満足そうに頷く。


「そっか。なら、僕らとしても協力せざるを得ないね。神教会を潰すという最終目標も、先に精霊の下へ還った同胞たちの無念を晴らしたい僕らにとって魅力的だ」

 だろうな。

 レイクスが漏らした人間らしい本音に俺も覚悟を決める。


 俺自身は途中で抜けることになるだろうが、この地に根を張って生きようとするレイクスたちが脅威に打ち勝てるように俺も全力で協力しよう。

 俺たちの決断を受け止めた嬢ちゃんがドネルクへ目を向ける。


「・・・テツさんたちは、この案で良さそうだね。そんなわけで叔父様。国王陛下の方はいかがでしょう?」

「安堵されるだろう。俺も憂いなく王都へ戻ることが出来る」

 肩の力を抜いたドネルクが深く頷く。

 続いて嬢ちゃんは前伯爵の顔を覗き込む。


「・・・お母様も、これで良いよね?」

 娘の問い掛けに、前伯爵は本心を見定めるように俺たちの顔を順に見つめていく。

 そして、最後に表情を緩めてニコリと笑った。


 現地の代表者として前伯爵が椅子から腰を上げる。

 国の代表者としてドネルクが、エルフ族を代表してレイクスが、前伯爵に合わせて椅子から腰を上げた。

 最終局面(クライマックス)だ。


「ウォーレス領として、新たな同胞を歓迎しよう」

「王国として、新たな同胞を歓迎する」

「寛大な措置に感謝する」

 互いに締めの言葉を交わして話し合いに終止符を打つ。


 これが1つの節目だ。

 決着を見届けて俺も心の中で大きく息を吐いた。

 これでエルフ族は()()()()()地を得ることが出来た。


 だが、こんなもんは第1歩に過ぎねえ。

 襲い掛かってくる敵が存在する限り、“安住”にはならねえからだ。

 まだスタートラインに立っただけで、ここから巨大な脅威に対抗するための準備段階が始まるんだからな。



ディール㉒です。


大きな節目!

このお話で本章は最終話となります!

次話より、新章、第18章が始まります!

次回、進捗!?


※ 今日も遅刻です!

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