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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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ディール ⑬

「そっか。僕らを惜しんでくれていたヒト族も居たんだね」

「我らウォーレスの血族は、始祖レティア卿―――、故レティア・リテルダニアの末裔(まつえい)だ。レティア卿はエルフ族の王だけでなく、ドワーフ族の王とも懇意(こんい)だったと血族に伝わっている。レティア卿が今も存命であれば、なぜ我らを頼らなかったかとお怒りになられたことだろうよ」

 しんみりとしたレイクスを励ますように前伯爵が鼻を鳴らす。


 へぇ。この連中は神教会とは随分と考え方が違うらしい。

 言葉はキツいが前伯爵なりの思いなんだろう。

 座っている椅子に立て掛けていた剣を鞘ごと手に取った前伯爵が、レイクスの前へ示すように剣をテーブル上へ置いた。


 ゴトリと音を立てて置かれた細身の剣は西洋風の拵えだが、刀身が日本刀のように反っている。

 こいつはサーベルってヤツか。

 剣を腰に提げている奴はたくさん見掛けたが、例外なく真っ直ぐな西洋剣で、サーベルを持ってる奴は初めて見たな。

 ドネルクたちも西洋剣だし、森の中では前伯爵の剣まで意識してなかった。


「この剣は?」

「10年ほど前までリテルダニア王家が王城の宝物庫で腐らせていたものだ。対魔族大戦の折りにレティア卿が愛用したものだと伝わっていて、戦勲の報奨として私が貰い受けた」

 前伯爵からサーベルの由来を聞いたレイクスが小さく首を傾げる。


「拝見しても?」

「構わん」

 前伯爵が了承を返したことで、壁際に控えていた女性騎士がサッと歩み出てサーベルをレイクスへ手渡す。

 大事そうな手つきでサーベルを半ばまで抜いたレイクスが、剣身の側面に彫り込まれた文字列に目を凝らす。


「見事な剣―――、いや。魔法道具だね・・・。この剣のことは聞いたことが有るよ。勇者クツキのためにドヴァールグ王の協力を得て打ち上げた剣の“影打ち”だとか」

 レイクスもこの剣を知ってるのかよ。

 しかも、剣じゃなく魔法道具?

 いや。剣の形をした魔法道具か。


 呟くように由来を口にするレイクスの目には、先人たちが振るった技術への憧憬が溢れているように見える。

 突然、剣を取り出すもんだから何かと思えば、前伯爵は剣を愛用していた祖先の時代から変わらず自分たちは味方だと言いたいらしい。


 だったら虐殺が行われる前に助けに行ってやれよ、と考えちまう部分も有るが、レイクスんちの爺さんから聞いた話では、エルフ族の国が有った場所は大陸西岸に近い辺りで、この国が有る人類棲息域の東端からはメチャクチャ遠かったそうだしな。

 エルフ族は400年も掛けて今の場所まで森の中を転々と移り住んできたって言うんだから、相当な距離が有ったんだろう。


 人類の存亡を掛けた大きな戦争が終わった直後で国元へ帰った後となれば、もう一度軍隊を出すのは難しかったのかもな。

 それにしても、ドヴァールグ王ってのは歴史上の人物なんだろうが、名前の響きからするとドワーフ族っぽいな?


「“かげうち”って、何?」

 黙って聞いていた金髪頭が、子供らしい仕草でコテッと首を傾げる。

 だよな。

 “影打ち”ってのは、どこかで聞いたことが有るんだが、何だったっけな。

 記憶を探ろうとしたら、意外なことに銀髪頭が説明を買って出た。


「・・・一番出来の良い剣を“真打ち”と呼んで制作依頼者に納品して、2番目に出来の良い剣を“影打ち”って呼ぶんだったかな。予備として刀匠が保管したり神様に奉納したりするものだったはず」

 レイクスが目を丸くして銀髪頭を見る。

 おお。そうだそうだ。

 カナと見に行った美術館に刀剣の展示が有って、説明書きにそんなこと書いてたわ。


「よく、そんなことを知っていたね。僕でも実物を見たのは初めてなのに」

「・・・ああ、いえ。たまたま知っていただけです」

 嘘くせぇ。

 銀髪頭が謙遜する。

 “たまたま”ってお前、隠す気あんのか。


 この銀髪頭が現代日本人だろうってことは予想が付いてるが、戦国時代やら大昔の刀匠が行っていたマイナーな風習なんて、普通に生活している現代日本人でも知ってる奴は希だと思うぞ?

 満足したのか、ふぅっと息を漏らしたレイクスが、剣身を鞘に収めて女性騎士の手に返す。

 前伯爵へ視線を戻して納得したように頷く。


「ウォーレス領の“レティア”の町とは、レティア姫の御名を冠していたのか。レティア姫のことは僕もお祖父様から何度も聞いていたよ」

「レティア姫? 失礼だが、お爺様のご尊名をお伺いしても?」

 怪訝な表情で前伯爵が首を傾げる。


 レイクスの知り合いか?

 そんなわけねえよな。

 そのレティア姫ってのは大昔の人物じゃねえのか?


 だったら、爺さんの知り合いか。

 あの爺さんは長命なエルフ族の中でも特に長生きしているらしいからな。

 居住まいを正したレイクスが前伯爵に真っ直ぐ向き合う。


「名を伏せていたことをお詫びする。僕の名はケルトレイクス・アダレーという。こちらは僕の妹、ピュリケイナ・アダレー。レティア姫と友誼を結んでいたのは僕らのお祖父様で、ケルトレイオス・アダレーのことだね」

 室内の空気が大きくざわついた。


 人の縁ってヤツか。

 そりゃあ驚くわな。俺もちょっと驚いてるんだから。

 爺さんの友人だったってヒト族は、こいつらの祖先かよ。


「驚いたな。まさか、かのアダレー王の直孫にお会いできたとは」

 隣に座るケイナを紹介したレイクスの名乗りに、前伯爵が目を丸くして感嘆の息を吐く。

 前伯爵の隣では、ドネルクが目元を手のひらで覆って椅子の背もたれに体を預けている。

 お前は何で、そんなリアクションなんだ?



ディール⑬です。


過去から繋がる人の縁!

次回、アブナイ女!?

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