表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

315/316

ディール ⑫

「「「「「ええええええええええええっ!?」」」」」

 あ~。耳が痛え。

 前伯爵とドネルクと俺たち以外の大声が食堂に響き渡った。

 俺の目を真っ直ぐに見据えてくる前伯爵の目を、俺も真っ直ぐに見据える。


「・・・えええええエルフ族!? どどどどどどういうこと!?」

「フィオレ。後にしろ」

「・・・アッ。ハイ」

 目を逸らさねえ前伯爵にピシャリと言われて、視界の端で金銀の嬢ちゃんたちがサッと自分の口を手で塞いだ。


 笑いを誘うコントみてえだが、嬢ちゃんたちは真面目にやってるんだろう。

 洒落にならねえ状況に、俺は笑う余裕なんてねえがな。

 前伯爵の目を見返したまま意識を向ければ、レイクスたちも警戒して身を固くしている。

 ケイナが抱いている恐れが感じ取れて、カッと頭に血が上る。


「ギルド長。これは?」

 ドネルク。この野郎。俺たちの情報を売りやがったか?

 1歩も退かねえ前伯爵の態度も加わって胸の中に怒りが膨れ上がる。


 だが、まだ大丈夫だ。俺は冷静だからな。

 怒りに任せて暴れるのは簡単だが、こいつはただの喧嘩じゃねえ。

 ケイナたちの命が掛かってるんだからテメエを見失うな。


「誤解するな。フレイアが自分で答えに行き着いたんだ」

「俺たちとの付き合い方をフィオレの嬢ちゃんたちに訊いたんじゃなかったのか?」

 前伯爵と睨み合ったまま心の中で数を数える。


 こいつは亡くなった女房に―――、カナに教わった方法だ。

 人間ってものには感情が有って、意外なことに、瞬間的に怒りを感じても長くは持続しねえ。

 60秒―――、いや。30秒でも良い。

 怒りを爆発させるのは数を数え終わってからで良い。


 そうすることで瞬間的に跳ね上がった“怒りゲージ”の針はピークを過ぎる。

 大抵の場合はな。

 それでも怒りが収まらねえなら怒って良い。

 短気を起こしちゃ拙い場面に限っては、カナに教わったルールを俺は守り続けてきた。


 どうだ? まだか?

 60をカウントし終わる頃には、何とか飲み込める程度に怒りは小さくなっていた。

 ムカつくけどな!


「確かに俺が頼んだ。だが、俺は“テツという男とケイナという少女”としか、お前たちの情報を与えていない」

「・・・そうだったね。それしか聞いてなかったよ」

 ジロリとドネルクに目を向ければ、ドネルクも目を逸らさねえ。


 嘘では無さそうか?

 空かさずフォローに入って来た銀髪頭がドネルクの言い訳―――、いや。言い分を追認する。

 こんなに小さな子供が動揺を抑え込んで冷静を保とうとしてるのに、いい歳こいたオッサンが取り乱すわけには行かねえな。

 心の中で嘆息して前伯爵へ視線を戻す。


「フレイアさん、だったな。なぜ、その結論に?」

「レイクス殿、だったな。フィオレと話しているときに、貴殿は魔力のことを“魔素”と呼んだだろう。“魔素”という言葉はエルフ族の文献にしか記述が出て来ないのだよ」

 相変わらず、前伯爵は目を逸らさねえ。


 事実を事実のままに、って感じか。

 悪意も敵意も感じねえ。

 ふむ・・・? そういや、レイクスたちは普段から“魔素”という単語を口にしているが、銀髪頭はずっと“魔力”と言ってたな。


 魔法がサッパリ分かんねえ俺でも、“魔素”と“魔力”が同じものを指しているんだろうってことぐらいは想像が付く。

 種族、あるいは文化圏、もしかすると時代によって呼び方が違うのかもな。

 言葉なんてものは10年も有れば変化する。


 古くなって通じなくなった言葉が、いわゆる“死語”ってヤツだ。

 エルフ族が他種族との関係を断ってから数百年。

 “魔素”だか“魔力”だかってワケ分かんねえ物質の呼び名が変わっても、何の不思議もねえな。


「・・・そっか。“魔素”って言ってたね」

 記憶を探るようにした銀髪頭が落ち着きを取り戻して呟く。

 未だ、睨み合いは続いてるってのに、レイクスがクスリと笑った。


「なるほど。よく学んでおられるようだ」

「・・・レイクスさん、レイクスさん。お母様は王国一の知識人で、大陸一の魔法術師と呼ばれている人なんだよ」

 ここぞとばかりに銀髪頭がレイクスのガードを崩しに掛かって、レイクスが銀髪頭に目を向ける。


「ほう! そうなんだね!」

 ダメだ。釣られやがった。

 お前、簡単に(はだ)されてんじゃねえよ。


 魔法道具オタクのレイクスは、魔法道具に活かせそうな新しい情報や魔法の情報に弱い。

 この銀髪頭。何でレイクスのツボを知ってやがんだ?

 お前ら、森の中と森の出口で何度か言葉を交わしただけだったろうが。

 たったあれだけの接触でレイクスのツボを読み取ったのかよ。


「どうだかな。魔法術式とは果てもなく深いもので、今ではフィオレに教わることも多い。我欲で他民族の技術を奪い、先人たちの知恵を積み上げた技術体系を喪失させる有象無象が付けた評価など、ゴミ屑ほどの価値もない」

 銀髪頭が自慢したのは一般的な前伯爵の評価か。

 肩を竦めた前伯爵が馬鹿馬鹿しそうに吐き捨てれば、レイクスが首を傾げる。


「技術体系の喪失というのは?」

「・・・精霊魔法はエルフ族の滅亡と共に喪失して、刻印魔法も神教会の独占で劣化した複製品しか作れないほど後退したと言われてるんだよ。神教会が独占しているのは治癒魔法や召喚魔法もだね。お母様は普段から神教会をはじめとした西方諸国に対して怒っていたから」

 銀髪頭の説明を黙って聞き終えたレイクスは、溜息と共に目を伏せた。



ディール⑫です。


感情のコントロール方法!

次回、魔法道具!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
蒼焔の魔女で緊張感のある対談だとは感じていたけど テツさんの心情はギリギリのところまで来てたんだ! 決裂しなくてホント良かった。読み知っているのに緊張した~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ