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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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312/320

ディール ⑨

 王家に近くて協調性が高い分、王家が外圧に負けそうになったときに、王家の意向に迎合し兼ねねえ。

 そりゃあ“南部の雄”だって王家の意向に逆らうわけには行かねえんだろうが、唯々諾々と丸ごと飲み込むのと独自の考えを織り込もうとするのでは結果が大きく変わるもんだ。

 内戦時に国土の南の端から西の端まで駆け抜けて蹂躙したと聞く“南部の雄”からは、ドネルクとは違うものを感じる。


 何が違うってよぉ。

 聞いたところによると、“南部の雄”は同胞でも躊躇わず蹂躙し、“北部の雄”は同胞を蹂躙することに躊躇って“南部の雄”が駆けつける結果になったらしいんだよな。

 警察の取り調べみてえに“脅し役”と“宥め役”を上手く演じ分けることで、同胞の血を流すことを避けたとも言えるんだろうが、「外圧に対しても同じことすんのか?」という疑念が残る。


 つまりは、「神教会にエルフ族を売り渡す可能性」だ。

 ドワーフ族なんかを含めた“亜人種族”という大きな括りで捉えても良いか。

 この辺りに“南部の雄”と“北部の雄”には、“覚悟の決まり方”に差が見える。


「出発!」

 前伯爵の勇ましい声が聞こえて騎馬が追随する蹄の音が聞こえ始める。

 30秒ほどすると俺たちが乗っている荷馬車もギシッと軋みを上げて動き始めた。

 前伯爵たちの馬が先行して、俺たちの馬車は馬列の後に続くらしい。


 馬車ってヤツは想像以上に単純な構造で、車軸がダイレクトに車体の下部に据え付けられているから地形の凹凸もダイレクトに拾う。

 重量物を運搬するダンプカーだって、サスペンションが硬いからこういう挙動になる。

 地面が傾斜していれば車体も地面と全く同じ角度で傾くしな。

 つーか、安価に作れて耐久力しか取り柄のねえ荷馬車だと、サスペンションなんて概念はねえだろ。


 歩かずに済むのは楽で良いんだが、ほんの小さな小石を車輪が踏んでもガタゴトと揺れるんだよ。

 まあ、人間が歩くほどしか速度が出ていねえから、車輪が段差を乗り越えでもしねえ限りは、飛び上がるほどの打撃を尻に受けるわけじゃねえんだけどな。

 進行方向から聞こえていた人のざわめきが大きくなった。

 そういや、馬鹿デカいゴーレムを見に来たらしい野次馬が街道辺りに集まっていたっけか。


「おっと」

「ありがとうございます」

 上体を泳がせ掛けたケイナがひっくり返らないように腕を伸ばして支える。

 グッと下から持ち上げられる形でガッタンガッタンと荷馬車が大きめに2度揺れた。


 日本で自動車に乗り慣れていた身としては、覚えの有る感覚だな。

 クルマが歩道を乗り越えるときの体感に似ていると思えば、想像通り街道脇の原野から街道の路面上へ戻った際の揺れだったらしい。

 車輪が地面を踏む音も大きくなったのは、草地の原野から踏み固められた硬い土の路面に変わったせいか。


 体を揺さぶるような大きな揺れが小さくなった分、尻に伝わってくる細かい振動が増えたのも、草というクッションがなくなったからだろうな。

 幌で覆われた荷台の内側から見える景色は後方だけだ。

 荷馬車の外に見える地味な衣服を着た多くの地元民が、馬列の前方を視線で追い掛けている姿が見える。


「賑やかですね」

「デケえ獲物だからなぁ」

 小さな声で話し掛けてきたケイナに、これ見よがしに大きな声で答える。


 見るからに小柄なケイナは女の子らしく声も高いから、若い男の騎士たちと相乗りしているこの状況だと注目を集めちまうんだよ。

 目はこっちに向いていなくても意識がこっちに向いているのは簡単に感じ取れる。


 正体不明の連中を上司の命令で相乗りさせていて、内緒話をされれば気にならねえわけがねえからな。

 おかしな勘ぐりで警戒される状況は、目立つと拙いエルフ族にとって百害有って一利無しだ。

 だから、敢えて大きな声で会話内容を騎士たちにも聞かせる。


 荷馬車の外へ目を向け直す。

 銀髪頭は森から出た時点で金髪頭を背中から解放(リリース)していたし、獲物を宙に浮かせたまま馬に乗っていた。

 獲物がデカ過ぎて荷馬車に積むのも難しいからなんだろうが、あの状態で獲物を見せつけるように凱旋パレードするんだから、そりゃあ人目は銀髪頭に集まるだろう。


 野次馬をしている地元民たちの表情は明るく、声援を飛ばしている声まで聞こえてくる。

 野次馬たちが呼んでる“フィオレ”ってのは銀髪頭の名前だったな。

 “フレイア”ってのは前伯爵の名前だったか。

 前伯爵の名前は他の領地や王都でもちょくちょく聞いたから間違いないだろう。


 意外なのは、前伯爵よりも銀髪頭の方が人気がありそうなことか。

 向けられる声の数から何となく察しただけだから、実際にどうなのかはまだ分かんねえんだが。

 市井の人気がある為政者一族か・・・。


 敵に回すと身分以上に厄介だな。

 殴り倒して逃げるときに、出会う人間の全てが無条件に敵対してくると考えればメチャクチャ逃げにくくなる。

 状況が悪化し兼ねねえ環境に、今まで耳にしたことの有る情報を思い起こしてみる。


 確か、ピーシス家ってのは“南部の雄”の重臣って立場だったはずだ。

 特攻隊長みてえなポジションで、ゴリゴリの武闘派。

 先日終わった内戦で武功を挙げて貰ったと聞く領地がこの地ってわけだな。


 しかも、貰った領地は排除された敵対派閥が治めていた土地と聞いた気がするんだが、思ったよりも世論の支持を集めている印象だ。

 こりゃあ、もうちょっと慎重に掛かった方が良さそうだ。

 下手に怒らせると、一撃で詰み兼ねねえ。



ディール⑨です。


予想外の人気!?

次回、金ピカ!?

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― 新着の感想 ―
そうですね、特攻隊長。信号を止めるどころか、破壊してしまいます。
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