文明回帰への一歩 ⑨
この鱗を拳でブチ抜くには、まだ、俺の不思議パワーは足りていないようだ。
パズルよろしく凹凸を合わせて、生前の鱗の折り重なりの再現を試みる。
一枚づつの鱗が、縦横半分ぐらいの長さで交互に重なって、中世中国の“魚鱗甲”みたいな鎧状を形作るらしい。
ヒナの夏休みの自由研究課題のヒントになればと、古代中国展とかいう博物館の展示へ行ったときに見た。
この硬さの鱗が、最低でも二枚は重なっているのだから、まともに殴っても、貫くのは難しいかもな。
しかし、こんな硬さの鱗が全身を覆っているのだから、胴体が90度に折れ曲がるような、体の柔軟性は無いはずだ。
スピードで翻弄して、胴に取り付いて、何枚か鱗を引っ剥がせば、ワンチャンあるか?
改めて手に取った鱗を、横から見たり、裏返したりして、矯めつ眇めつする。
土に塗れた鱗が、かなり青っぽく見えるので、ドラゴンというのは、個体ごとに色が違ってカラフルなのかもしれない。
ゲームキャラクターでも、ドラゴンってのはカラフルだしな。
遠景で俯瞰すれば、恐竜の首長竜が、一番近い形状だと思う。
プレシオサウルス、だったっけ?
ただし、首の長さと尾の長さは、逆ではないだろうか。
確か、首長竜は、尾よりも頸のほうが長かったように、記憶している。
昔やった現場で、日本では珍しい首長竜と疑われる化石が出土した、とかで、基礎工事を1年近くも考古学調査の発掘作業で止められて、ミニチュア骨格模型片手の考古学者に、熱心に考古学的価値を語られたんだよ。
正直、建築主との納期調整のほうが問題で、考古学的価値なんて、どうでも良かった。
しかも、詳しく調べてみたら化石じゃありませんでした、とか、笑えねえオチが付いていた。
全長は・・・40メートル弱かな。
あの黒トカゲに較べて、この白骨の持ち主は、二回りほど小さな体躯だったようだ。
首長竜の四肢が、海中での遊泳に適した櫂状に進化? 退化?した、平たいものなのに対して、ドラゴンの四肢は、ぶっとい丸太のように、がっちりしている。
記憶にある黒トカゲの四肢の太さと白骨の骨格を比較して、コイツの四肢の太さの相当部分は、筋肉ではなく骨格が占めているように思える。
この骨を圧し折るのは文字通り骨が折れそうだ、と、くだらない駄洒落を考えるのと同時に、そんな筋肉量で、あの巨体を支えられるものなのか? と、疑問に思った。
考古学者に見せられたミニチュアと、この白骨の決定的な違いは、前肢を支える胸骨の背骨側に、骨盤のような大きな蝶型の骨があることだ。
この骨は、アレか? 蝙蝠翼を支える部分か。
人間が骨盤を砕かれたら、歩くどころか立ち上がることさえ出来なくなる重要な骨だ。
敵前逃亡を躊躇わなかった黒トカゲの再逃亡を阻止するには、狙い目かもしれない。
黒トカゲを、ぶん殴ることしか考えていない俺としては、飛ばれると困るのだ。
とはいえ、ドラゴンの骨格が、飛行に適しているとは思えないんだよなあ。
鳥類は空を飛ぶため、体を軽量化するのに骨までスカスカで、鳥の骨は簡単にポキポキと折れる。
肋骨らしき弧を描く太い骨をコンコンとノックする。
ドラゴンの骨は、密度がギッチリと詰まっている様子で、いかにも硬そうだ。
そもそも、あの薄っぺらい皮翼で、あの巨体を飛ばせられること自体が、物理法則に反しているように思う。
周囲を見廻すと、翼のものらしき細くて長い骨を見つけた。
腐り落ちて自然へと還ったのだろう、翼の皮膜は無い。
こんな翼で巨大生物が飛ぶなんて無理だろ。
骨が俺の腕よりも細い。
すると、トカゲ族は、何らかの不思議ちゃんパワーで自重を軽くする方法か、翼を強化する方法を持っているわけか。
黒トカゲが落下中に、まともに飛べていなかった理由としては、俺という想定以上の負荷が掛かって、不思議パワーに不具合が出たか、最大積載量を超えた可能性が考えられるな。
だとすれば、鎖分銅みたいな重石を巻き付けてしまえば、飛べなくできるかも知れん。
文明回帰⑨です。
鳥ガラ!?
次回、イメトレ!?




