文明回帰への一歩 ⑦
先ず、今の俺にできることは?
狩って、食って、俺自身を強化することだ。
触角ヘビの不思議パワーの恩恵も仮定の情報だが、体感的に確度は高いと思う。
蛇を安定的に狩れている現状、水や食料の確保という意味での時間的制約は有って無いようなものだ。
とはいえ、タイムリミットが存在しないわけではない。
今のところ、寝る前にスマホの電源を入れて、ほんの少しの時間、煙草で一服をしながらヒナの写真を見ることだけが俺の救いだ。
スマホのバッテリー残量は、早晩、切れる。
ヒナの顔を見られないと、俺の心が死ぬ。
リソースは有限。
ご利用は計画的に。
移動を続けつつ、追加の情報を集めて最大限の態勢を整える。
これしか無いな。
ひとり納得して、うんうんと頷いていると、目線が対岸に吸い寄せられた。
視線のようなものを、感じたからだ。
200メートル離れた中木と灌木が密生した茂みが、がさがさと揺れる。
いや。枝葉の音は聞こえてねえけどな。
鮮やかな緑を押し分けて、白っぽい何かが顔を覗かせた。
長い鼻面に、ぴんと立った三角形の耳が2つ。
対岸からジッと俺を見ている。
「おおっ! 肉だ!!」
つい、叫んでしまった。
蛇以外の肉だぞ!!
もう何を見ても、生き物なら食い物にしか見えていない気がする!!
オオカミっぽいな!!
アイツ、足、生えてんじゃね!?
つーか、アレ、なんかデカそうなんだけど!!
周りの木々がデカいから、対比がおかしくて、定かじゃあないが、牛―――、象ぐらいの大きさは、あるかもしれない!
飼い犬じゃあないよな!?
食ってもいいんだよな!!
赤肉だぞ、赤肉!
犬肉って赤身だったよな!?
クレームが入る恐れがないなら食うしかねえだろ!
テンション、上がるぜ!!
「ここだ! ここ!!」
出来るだけ大きな音を立てるように、木の幹をバシバシと叩く。
襲いに来い! 早く!
ハリアップだ!!
「あっ!!」
犬っコロがフイッと顔を逸らした。
「どこ行くんだ!?」
待って! 戻ってきてくれ!!
「俺の肉がーーーっ!!」
全力アピールも虚しく、肉が茂みの中へと頭を引っ込めてしまった。
がさごそと茂みを揺らして、肉が行ってしまった。
がっくりと両膝を突く。
「くっ・・・! 遠距離攻撃手段が必要だな!!」
今の俺には、石を投げるぐらいしか、200メートルの距離を埋める攻撃手段がない。
くっそぅ。崖を渡る方法を真剣に考えておけば良かった。
しばらく待ってみたが戻ってきそうにないので、肉の誘惑に後ろ髪を引かれる思いで森の中へと戻った。
崖沿いに進みたかったが、崖沿いには障害物が多かったんだよ。
上がったり下がったり、地形のアップダウンを避けていると、数百メートルは奥に戻る羽目になった。
まあ、もう一点、懸念が有ったから森の奥側へ戻る判断をしたんだけどな。
文明回帰⑦です。
肉を逃した!
次回、骨!?




