文明回帰への一歩 ②
買ったことも飲んだことも無えけど、沖縄だったか九州だったかでは、一升瓶に蛇を漬け込んだ酒が撃られてるのを見た記憶がある。
”ソウ”―――、自衛隊に就職した昔の仲間も、「ヘビ食った」と言ってたことが有ったし。
そんなことを考えていたら、はた、と、足が止まる。
「この感じ・・・」
俺の、「危険物センサー」に、反応があった。
薄暗い森の中、先んじて見つけてやろうと、目を凝らす。
特に注視するのは、木々の幹から頭上へと張り出している枝、樹上だ。
「―――、居た!」
昼メシ、見っけ!
大まかな目測で、前方30メートル、上方7メートル。
木々の合間を跨ぐように張り出した太い枝に、ムチムチの筋肉を鱗に包んだ紐状の生物が引っ掛かっている。
まだ2日目だが、お馴染みとなりつつある、アイツだ。
かなりの“大物”じゃね?
触覚ヘビを、すでに水筒代わり、あるいは、食料としか見ていない俺がいる。
「しかし、アレ。どうすっか」
捕獲したいが、手を伸ばして届く高さではない。
小石を投げたところで、何の痛痒も感じないだろうタフさは、実戦証明済み。
待ち伏せ型の狩猟をする生物なら、待ち伏せに失敗した時点で逃げてしまう可能性だってある。
俺のメシを逃がしたくない。
夜間に火を焚けば寄ってくる性質があると睨んではいるが、まだ確実性に欠ける。
この世界に、お手軽に食料を買えるコンビニがあるとは思わない。
捕れるときに捕っておかないと、俺の生存にかかわるリスクになるだろう。
気付かないフリで、襲ってくるのを待つか?
「それしか、無さそうだな」
白々しく口笛をふきながら、蛇の直下を目指して歩く。
言葉も通じない爬虫類に、こんな茶番が通用するのか疑問だが、他に手が思い付かない。
蛇をチラ見するが、身動きしない。
コイツ、寝てるのか?
いつでも応戦できるように臨戦態勢だったのに、蛇の下を行き過ぎてしまった。
「襲って来ねえな・・・」
襲ってきてくれないと困る。
蛇の下を、何度も、行ったり来たりする。
全長10メートル近い猛獣の前で何をやっているのかと、3日前の俺なら呆れていただろうが、今の俺にとっては死活問題だ。
できることなら、余裕をもって3~4日分の食糧を確保しておきたい、という欲もある。
チラ見した目が、触覚ヘビの目と合った。
俺に気付いていて襲ってこない?
じっと俺を見る目に、小馬鹿にされた気がした。知らんけど。
ブチッと来た。
人間、追い込まれると沸点が低くなるんだな。
金持ちケンカせず、ってやつだ。
状況は正反対で、困窮してるからケンカしてやる。
ヨーシ、上等じゃねえか。
人間様を舐めたら、どうなるか教えてやる。
勇者の剣よろしく、キノコ棒をズンと地面に突き立てた。
踵を返して枯れ枝を集めはじめる。
乾いた枝をベキボキと圧し折り、蛇がいる樹の根元へと、小山のように積み上げて火を放つ。
「おおー。よく燃えるわ」
やっぱり、ここの広葉樹は油分が豊富で、火力が強いんだな。
火を自在に操る人間様こそが食物連鎖の頂点だと、爬虫類に教えてくれよう。
自然破壊?
ハハッ。環境保護団体からの苦情もクレームも大歓迎だ。
是非とも、俺を地球へと連れ帰って欲しい。
立ち上った煙に巻かれつつある蛇が他の樹へと移動しようとするのを、蛇の鼻先を狙って小石やら棒っ切れやらを投げつけて牽制する。
このまま焼かれて死ぬもヨシ!
樹から下りてきて俺と取っ組み合いをするもヨシ!
バチバチと火の粉を弾けさせて伸び上がる炎は、とうに俺の背丈を超えている。
どのみち、お前は焼かれて、俺に美味しく戴かれるんだから、早いか遅いかだ。
焼き上がって俺の腹に収まるまで逃がさねえぞ。
文明回帰②です。
ファイヤ―――ッ!!
次回、パゥワアアアッ!?




