キノコを取るか、タケノコはどこだ ③
ぜー、ぜー、と、息が上がっている。
どのぐらい、振り回していたのか。
蛇はグッタリと伸びているが、また動き出すと怖いので、念のため、尻尾を右手に握ったまま足で蛇の頭を踏んづける。
「蛇? ―――、だよな?」
振り回して、叩きつけて、を繰り返しているうちに、触覚は千切れて、どこかへ飛んで行ったようだ。
恐る恐る弛緩した蛇の首を裏返し、右足で踏んづけ直す。
グニョリとした感触で、毒牙も折れ飛んている様子から察するに、蛇の頭骨は粉々に砕けているらしい。
たぶん、死んでる。
これでまだ生きていたら、もうお手上げだろうが、確実に死んでいないと安心できないからトドメを刺しておくことにする。
左手で作業ジャケットのポケットを探り、カッターナイフを取り出す。
尻尾を左手に持ち替えて、右手で蛇の首にカッターナイフの刃を当てた。
つるつると滑って入りにくかったが、鱗に逆らうように刃を立てると、ようやく鱗の隙間から蛇の首に刃が潜り込む。
肉を切られても、ピクリとも反応しないことを確かめて、文明人が野生に勝利したことを確信する。
首の腹側をバッサリと切り裂かれても動かないのだから、本当に死んだのだろう。
心底、安心して大きな溜息を吐く。
バッタリとひっくり返って大の字になる。
瞼を閉じるとぐるぐると世界が回っている。
大きく息を吸って、吐いて、深呼吸を繰り返す。
全身から緊張が抜ける。
限界以上に駆使された筋肉が痙攣して苦情を訴えてくる。
ここまで全力を振り絞ったのなんて、いつ振りだろう?
人間は自分の肉体を破壊しないための防衛本能から、本当の全力の35%程度しか力を出さないように出来ている、なんて言ってたのは誰だったっけな。
どうせ、誰かの受け売りを、誰かがドヤ顔で言ってるのを、どこかで聞いたんだろうな。
生きるか死ぬか。
生命の危機に瀕して、その35%を超えたのが今の状態なのかもな。
とてもじゃねえが、笑えねえけど。
ま。とりあえず、人類は爬虫類に勝利した。
「ああ・・・、疲れた」
喉、乾いたし。
足元の絶命した蛇を見る。
血が、垂れている。
ぽたり。ぽたり、と。
もう一度、言う。
切り口から、血が・・・、垂れている。
すげえ、喉が渇いた。
そりゃそうだろ。
トカゲと蛇の二連戦だ。
これだけ汗だくになって喉が渇かないわけがねえ。
暗闇の樹間に揺れる、焚き火の灯りを見る。
毒がある、かもしれない、キノコ。
水は、無い。
・・・・・・・。
滴り落ちる蛇の血に目を奪われて離せない。
血の滴が枯れ葉の上に落ちる、ぽたり、ぽたり、という音が、やけに耳に届く。
蛇って、毒をもっていても、毒牙の根元の毒腺に・・・、だったよな?
毒を吹きかける種類も居るって聞いたように思うが、それも毒腺は首から上のはずだ。
ごくり、と喉が鳴った。
長いな。
鼻先から尻尾までで、7~8メートルは有る。
黙って蛇の亡骸を引き摺り、適当な高さの中木の枝に掛ける。
カッターナイフの刃を、切り口に当て直し、ぞりぞりと何度も切る。
胃袋から何が垂れてくるか分からないので、食道らしき部分は切らないように気を付けつつ、何度も切る。
ぽた、ぽた、と落ちてくる血液を掌に受け、恐る恐る、口へと運んでみた。
鉄臭い。
生臭い。
ヌルヌルと粘ついている。
でも、喉が渇いてんだよ。
水ではないが、水分が胃の辺りから、身に染み入るように感じる。
滴る血を掌に受け、舐め取る。
ひたすら同じ作業を繰り返す。
しばらくの間、無心に蛇の血を啜って、一息ついた。
後味やら臭いやら、口の中は最悪だが、一先ず、喉の渇きは収まったな。
キノコタケノコ③です。
血液の飲用もサバイバル技術の一つです!
次回、方針決定!?




