キノコを取るか、タケノコはどこだ ④
普通に考えれば、殺した野生動物の血で喉を潤すなんて、異常行動だろう。
だが、今は極限状態なんだから、生存本能としては正常な行動なのか?
まあ、これで渇水状態を乗り切れるのなら、それはそれで構わねえ。
今は生き残ることが何よりも先だ。
とにかく、何かの動物を獲って血を飲むことで、喉の渇きを癒やせることが分かっただけでも意味が有る。
生存の鍵となる情報を一つ得られただけでも、精神的に落ち着くことが分かったのも収穫か。
自分の体を見下ろす。
普通じゃないと言えば、何だろな?
さっきから、ずっと胃の辺りがホカホカとし続けている。
あれだけ全身を使って格闘したのに、クタクタに疲れて動けなくなる、なんて感じは受けねえな。
掌を何度か、グー、パー、グー、パーと握ってみる。
まだ、もう1戦できそうなぐらい体力的な余裕は残っていそうだ。
血液が凝固を始めたのか、血が抜けきったのか、白っぽい蛇肉から滲み出していた血の量が減り、滴が滴り落ちることは無くなっている。
切り口の断面を見ていたら、ぐうう、と、腹が鳴った。
蛇肉って、鶏肉みたいなんだっけか?
ヨシ、決めた。
背に腹はかえられぬ、ってやつだ。
脱力して伸びきった蛇を、ロープよろしく、何重にか巻いて、肩に掛けて焚き火の元へ。
放置されて消えかけていた焚き火に、枯れ木と枯れ枝を放り込んで火を熾し直し、明かりが届く場所で蛇と向き合い直す。
蛇って、結構、骨が多いんだな。
やり過ぎたのだろう、粉々に折れている骨が多かった。
皮を剥いたり、骨を避けたり、内臓を避けたり、色々と頑張ったけど、蛇の体格に見合うほど肉は取れなかった。
剥がした皮の上に鎮座する不格好な生肉の塊は10キログラムも無いんじゃねえかな。
気温的には暑くも寒くもねえが、生肉なんて、そう何日間も保つもんでも無いだろう。
1週間も保たねえなら、食えるだけ食って、出来るだけ無駄にしないようにしなきゃな。
このまま飲み水が見つからない事態を想定するなら、毎日、何らかの動物を獲る必要が有りそうだ。
予想以上に薄っぺらくなったアバラの生肉を、樹皮を剥いだ枝に刺して火に翳す。
なかなか難しいな。
早く肉を焼こうと火に近づけたら、枝に火が点いてしまう。
何度か枝を交換しながら焼き、白く火が通ったっぽい蛇肉を嗅いでみる。
やっぱり、少し生臭い気がするな。
軽く焦げ目がついた肉を、小さく囓ってみた。
肉にまで毒が有ったらお手上げだから、舌の上に載せたまま、咀嚼せず、飲み込みもせず、2分間ほど待ってみる。
一旦、口の中の肉を吐き出して、舌や口内に痺れや痛みが出ていないか確かめる。
大丈夫そうだな。
もう一口、囓って、今度はもぐもぐと咀嚼する。
噛んでいるとスルメのように旨味が出て来る肉だ。
咀嚼はするけど飲み込みたい誘惑に耐えて飲み込まない。
また2分間ほど咀嚼した肉を吐き出して、再び舌や口内に痺れや痛みが出ていないことを確かめる。
どうやら肉に毒は持って居なかったようだ。
安心して蛇の焼肉にかぶりつく。
生臭さはあるけど食えないことはないな。
臭み消しの調味料で揉めば、そこそこ食える肉なんじゃね?
塩味が足りていないのが残念だが、何とか食える。
食えるのが分かったのなら、どんどん焼いていこう。
けぷっ、と、ゲップが出た。
なんか、こう、体が芯の方からポカポカするような気がする。
血を飲んだときにも胃が熱くなる感覚は有って、毒じゃないかと警戒はしたんだが、喉の渇きに耐えきれなくて飲み続けちまったんだよな。
リスクを引き下げるのに、ああいう、ノーガードのチャレンジは止めないとな。
けどまあ、蛇肉、悪くない。
慣れた、とも言う。
なんだかんだで、いま食う分として切り分けた肉を完食した。
多分、1キログラムぐらいは有ったと思うが、ペロリと食っちまった。
瞼が重くなってきたな。
大木に背を預けてゴロリと転がる。
視界にキノコ棒が入った。
お前は保留だ。
正体不明のキノコにチャレンジする勇気は、まだ無い。
「疲れた・・・」
今日は、色々と、有ったもんな。
デケえトカゲと戦ったり、デケえ蛇と戦ったり・・・。
はあ・・・、と、溜息を吐いたら、俺の瞼は、完全に落ちた。
キノコタケノコ④です。
完食!!
次回、間章!




