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第26話 怪しすぎる二匹の旅猫 前編

今日は久しぶりに土曜に更新できた笑

 あの夜、みんなでそれぞれの役割を決めてから数日。


 旅の準備を終えたぼくたちは、いよいよエンタメの郷へ向けて出発した。


 今、馬車に乗っているのは、ぼく、せいか、むねゆき、らいがの四人だけ。


 見慣れた森の景色が、ゆっくり後ろへ流れていく。


「こうちゃん、そろそろお水、交換した方がいいんじゃない?」


 向かいに座っていたせいかが、馬車の荷物を見ながら言った。


「あ、もうそんな時間か」


 ぼくは前の方へ顔を出す。


「むねゆき! どこか止まれそうな場所ある?」


「もうそんな時間か? ちょっと待ってろ!」


 馬車を引いていたむねゆきが辺りを見回す。


 しばらく進むと、水の流れる音が聞こえてきた。


「ちょうど広い場所があるな! ここで休憩だ!」


 馬車が川沿いでゆっくり止まった。





「よし……やるか」


 ぼくは荷台を見る。


 そこには、出発前ににゃーとんさんが作ってくれた木製の浅い水槽が置かれていた。


 水槽の中には水がたっぷり入っていて、その中に竹筒の水筒がびっしりと並んでいる。


 水筒の中身は、モカとにゃーとんさんが用意してくれた陽だまりのジュースだ。


「こうた、そっち持て!」


「うん!」


 むねゆきと二人で水槽を持ち上げる。


「ぐっ……!」


 お、重い!


 竹筒だけなら大したことはない。


 でも、中のジュース。


 それに水槽いっぱいの水。


 全部合わせると、とんでもない重さだった。





「先に水を捨てるぞ!」


「そうだった!」


 いったん地面に下ろし、水槽の水だけを流す。


 それでもジュースの入った竹筒が大量に残っているから、まだ十分重い。


「せーの!」


 二人で持ち上げ、よろよろと川へ向かう。


 すると――。


「遅いぞ~」


 先に川辺へ着いていたらいがが、木箱を持ちながらニヤニヤしていた。


「重いんだからしょうがないだろ!」


 ぼくは息を切らしながら言い返した。


「はぁ……はぁ……。お前も持てよ……」


 むねゆきまで苦しそうだ。


「俺には俺の仕事があるんだよ」


 らいがが得意そうに木箱を見せる。





 水槽を地面へ置くと、らいがはさっそく川の水を木箱ですくい始めた。


 ざばっ。


 水槽へ入れる。


 また川へ戻る。


 ざばっ。


 また入れる。


「…………」


 ぼくはむねゆきと顔を見合わせた。


 そして、ニヤッと笑う。


「遅いぞ?」


「なっ!?」


 らいがが振り返る。


「もっと早くできるだろ?」


 ぼくが言うと、


「腰が入ってないよな?」


 むねゆきまで楽しそうに続けた。





「ぐぬぬぬぬ……!」


 らいがが悔しそうに木箱を握りしめる。


「さっきまで俺のこと遅いって言ってただろ!」


「俺たちは重い物を運んでたからな」


「ずるいぞ!」


「あははは!」


 少し離れた場所で、せいかが笑っている。


 こんなことをするために水槽を運んでいるわけじゃないんだけど……。


 なんだか楽しかった。


 陽だまりのジュースは、できるだけ冷たい場所で保存した方がいい。


 にゃーとんさんが言うには、温かい場所に長く置いておくと、ジュースの状態が悪くなりやすいらしい。


 でも、この世界に冷蔵庫なんてものはない。


 そこでみんなで考えた結果、木の水槽に竹筒を沈め、水で冷やしながら運ぶことにした。


 水が温かくなってきたら、川を見つけて交換する。


 だから今回の旅は、できるだけ川の近くを通る道を選んでいる。





「よし! これで全部だ!」


 最後の水を入れ終え、らいがが胸を張った。


 ぼくは水槽へ手を入れてみる。


「冷たい!」


 竹筒もしっかり冷えていた。


「これなら大丈夫そうだな」


 むねゆきが満足そうに頷く。


 正直、この作業はかなり大変だ。


 何度も重たい水槽を運ばないといけないし、そのたびに水を全部入れ替えないといけない。


 それでも、不思議と嫌じゃなかった。


 今までとは違って、今回は四人だけ。


 人数が少ない分、一人ひとりがちゃんと自分の仕事をしないと旅が進まない。


 ぼくも、誰かに頼ってばかりじゃいられない。





 それに――。


 まだ見たことのない町。


 エンタメの郷。


 どんな場所なんだろう。


 陽だまりのジュースを飲んだ猫たちは、どんな顔をするんだろう。


 考えるだけで、胸がわくわくした。


「こうちゃん、そろそろ行けそう?」


 せいかが馬車から声をかけてくる。


「うん! 今行く!」


 ぼくは元気よく答えた。


 みんながそれぞれ、自分にできることを頑張っている。


 だったら、ぼくだって。


「よし……頑張ろう!」


 小さく呟いて、ぼくはもう一度水槽を持ち上げた。




 「今日はどの辺に泊まるかな?」


 むねゆきがあずきの手綱を引きながら、きょろきょろと周りを見回した。


 まおの話では、この川沿いを二日ほど進めばエンタメの郷に着くらしい。


 今回の旅には、まおもセバスチャンもいない。


 出発する前は、正直ちょっと不安だった。


 でも、一人旅の経験があるむねゆきが先頭に立って、道や休憩する場所まで考えてくれている。


 むねゆきが一緒で、本当によかった。


「エンタメの郷って、どんなところなんだろうね」


 せいかが楽しそうに言った。


「やっぱり毎日お祭りとかやってるんじゃないか?」


 らいがが答える。


「毎日!? それじゃ住んでる猫たち疲れちゃうよ」


「あ、そっか」


「でも、エンタメっていうくらいだから――」


 そんな話をしながら馬車に揺られていた、その時だった。





「あずき! 止まれ!」


「ヒヒィーーン!」


 むねゆきの大声と同時に、馬車が急停止した。


「うわーーっ!」


「きゃーーっ!」


 らいがとせいかの悲鳴が重なる。


「うわっ!?」


 ぼくはとっさにせいかの体を支え――。


「どわぁぁぁ!」


「ぐえっ!」


 そのまま前から吹っ飛んできたらいがまで受け止めた。


「い、痛い……!」


「悪い!」


「こうちゃん、大丈夫!?」


「ぼくは大丈夫……。せいかは?」


「うん。ありがとう。でも、どうしたんだろう?」


 ぼくたちは前にいるむねゆきを見る。





「すまん! ちょっとあれを見てくれ!」


 むねゆきが道の先を指さした。


「ん?」


 目をこらす。


 道の真ん中に、二匹の灰色の猫がいた。


 二匹とも、こんな森の中には似合わないくらいビシッとしたスーツ姿だ。


 一匹は道の真ん中に倒れている。


 しかも、おしゃれな帽子を深くかぶっていて、顔がほとんど見えない。


 なんというか……大人の余裕がありそうな、イケオジっぽい格好だ。


 もう一匹は、そのすぐ横に座り込んでいた。


「大変! 助けないと!」


 せいかがすぐに変装用の仮面をつけ、マントを羽織る。


「うん!」


 ぼくも急いで仮面とマントを身につけた。


 人間の姿のまま、知らない猫に近づくわけにはいかない。


 せいかが馬車から飛び降りようとする。


 ぼくも続こうとした、その時。





「ちょっと待て!」


 むねゆきがぼくたちを止めた。


「なんかおかしい!」


「え?」


「よく見てくれ」


 むねゆきが近づいてきたぼくとせいかの耳元で小さく言う。


 もう一度、二匹を見る。


 すると、座っていた灰色猫が急に大きな声を出した。


「あ~……我々は帰る途中の旅の者なんだが~」


 ……ん?


「仲間がお腹を空かせて倒れてしまった~。誰か優しい方が助けてくれないかな~」


「…………」


「…………」


 ぼくとせいかは顔を見合わせた。





 なんだろう。


 ものすごく説明っぽい。


 しかも――。


 チラッ。


 灰色猫がこっちを見た。


 すぐに前を向く。


 そして、また。


 チラッ。


「え? 何あれ?」


 ぼくはむねゆきに聞いた。


「分からん」


 むねゆきがものすごく冷たい声で答えた。


「あれが噂に聞く『行き倒れ』ってやつですか!?」


 らいがだけが目をキラキラさせている。


「多分……違うと思うよ……」


 せいかが真面目に答える。





 すると、灰色猫が突然、両手を空へ向けた。


「おお~! 神よ~~!」


 声でかっ!


「我々が何をしたというのですか~~!」


 森の中に声が響き渡る。


「ただ一口! 一口だけ食べ物を食べたいだけなのに~!」


 ちらっ。


「なぜ我々に、こんなにも厳しい試練を与えるのですか~~!?」


 ちらっ。


「…………」


 やっぱり見てる。


 しかも、よく見ると――。


 道に倒れているイケオジ猫まで、帽子の下からこっちをチラチラ見ていた。


 目が合った。


「…………」


 すっ。


 目をそらされた。





「いや、絶対起きてるじゃん……」


 思わず呟いてしまった。


「はぁー……」


 大きなため息が出る。


 ものすごく怪しい。


 ものすごく関わりたくない。


 でも、このまま道の真ん中に放っておくわけにもいかない。


「ぼくが降りて話を聞いてくるよ……」


 自分でも分かるくらい、やる気のない声が出た。


「こうちゃん、気をつけてね……」


 せいかが心配そうにぼくを見る。


「ああ。それと、こうた」


 むねゆきがぼくの肩をつかんだ。


 さっきまでの呆れ顔とは違う。


 真剣な表情だ。





「周りに仲間が隠れてるかもしれない。何かあったら、すぐ馬車に飛び乗れ。すぐに逃げられるようにしておく」


「……分かった」


 ぼくは頷いた。


 仮面をしっかりつけ直し、馬車から降りる。


 ぼくはものすごく嫌な予感を感じながら、ゆっくり二匹へ近づいていった。


 周りの木々を確認しながら、ゆっくり二匹へ近づく。。


 草むら。


 木の陰。


 後ろの森。


 今のところ、他の猫が隠れている様子はない。


 それでも油断はできない。


 すると、座っていた灰色猫が急にぼくに気づいたような顔をした。


「おぉ~……!」


 両手を広げる。


「あんなところから旅のお方が……! 我々はなんて幸運なんだ!」





「…………」


 ぼくは立ち止まった。


「さっきから、こっち見てましたよね?」


 できるだけ冷たい声で言う。


「ん?」


 灰色猫が首をかしげた。


「なんのことかな?」


 本当に何も分からないという顔をしている。


 いや、絶対分かってる。


 そう思った、その時だった。


「た……食べ物……」


 道に倒れていた猫が、ぷるぷると手を伸ばしてきた。


「食べ物を……あと、できれば酒も……」


「……元気そうに見えますけど?」


 ぼくが呆れたように言う。





「…………」


 伸ばしていた手が止まった。


「み……水を~~……」


「急に欲しいもの変わった!」


 思わず突っ込んでしまった。


 もういい。


 このまま付き合っていたら話が進まない。


「それで、何があったんですか?」


 少し強い口調で尋ねる。


 すると座っていた灰色猫が、ばつの悪そうな顔で頭をかいた。


「いやぁ……実は、この先の町へ帰る途中だったんだけどな」


「はい」


「食べ物を切らせてしまって……」


「だったら!」





 ぼくは思わず一歩前へ出た。


「普通に『食べ物を分けてください』って言えばいいじゃないですか!」


「いや、それが……」


 灰色猫は横目で、倒れている猫を見る。


「その方が助けてもらいやすいって、オヤジが……」


「…………」


 ぼくも倒れている猫を見る。


「やっぱり演技だったんじゃん!」


「あ~、くそっ! 失敗だ!!」


 さっきまで死にそうだった猫が、むくっと勢いよく起き上がった。


「元気じゃん!!」


 ぼくが叫んだ瞬間。


「行き倒れが生き返った!!」


 後ろの馬車から、らいがのうれしそうな声が飛んでくる。


「だから違うって言ってるでしょ!!」


 すぐにせいかの声が続いた。


 ぼくは二人を無視した。





 それより、目の前の猫だ。


「ったく……土だらけじゃねぇか」


 猫はぶつぶつ文句を言いながら立ち上がり、帽子についた土をぱっぱっと払った。


 ぼくはその姿を何となく見つめて――。


「……あれ?」


 少しだけ変な感じがした。


 さっきまで道の真ん中で寝転がっていた、ふざけた猫。


 同じ猫のはずだ。


 なのに。


 立ち上がっただけで、急に大きく見えた。


 背筋はまっすぐ。


 スーツは汚れているのに、着こなしはきれいだった。


 深くかぶった帽子の下から、鋭い目がのぞいている。


 怖い顔をしているわけじゃない。


 怒ってもいない。





 それなのに。


(なんだろう……)


 ぼくは無意識に少しだけ背筋を伸ばした。


(近づきにくい……)


 前に出会った天使猫の使いたちも、スーツを着ていた。


 でも、全然違う。


 あっちはきちんとした服を着ている、という感じだった。


 この猫は――。


 うまく説明できない。


 ただ立っているだけなのに、この猫の前ではふざけちゃいけないような。


 こっちの動きを全部見られているような。


 そんな妙な圧を感じた。


 本当にただの旅猫なのか?


「こうちゃん」


 後ろからせいかの声がした。





 振り返ると、せいかとむねゆき、らいがも馬車から降りてこちらへ歩いてきていた。


 むねゆきもイケオジ猫を見た瞬間、少しだけ表情を変えた。


「あなたたちは……本当にこの先の町へ帰る予定なんですか?」


 いつもより丁寧な言い方だった。


 たぶん、むねゆきも同じものを感じたんだ。


「ああ」


 イケオジ猫は気にした様子もなく、軽く答える。


「エンタメの郷って名前で呼ばれてる町なんだが……知ってるか?」


「…………」


 ぼくたちは顔を見合わせた。


「エンタメの郷……」


 せいかが小さく呟く。


 ぼくたちがこれから向かう町。


 その町から来たという二匹。


 ぼくはもう一度、目の前のイケオジ猫を見上げた。





 ぼくたちは顔を見合わせた。


 エンタメの郷。


 まさか、これから向かう町の猫とこんな場所で出会うなんて。


「俺らもそこに向かってるんだ!」


 突然、らいがが無邪気に言った。


「らいが!」


「コラっ!」


 ぼくとむねゆきの声が重なる。


「あっ」


 らいがが口を押さえる。


 でも、もう遅い。


 イケオジ猫は一瞬目を細めると――ニヤッと笑った。


「そりゃ偶然だな!」


 そして、ぼくの肩をバシバシ叩く。


「ま、詳しい話は飯でも食いながらにしようぜ!」





「え?」


「ちょうど腹も減ってたところだ!」


「いや、それってぼくたちのご飯――」


「よーし! 決まりだ!」


 強引だ!


 結局、なぜか二匹と一緒に晩ご飯を食べることになってしまった。


 空は少しずつ赤く染まり始めている。


 ぼくたちは馬車を道の端へ寄せ、今夜はここで休むことにした。


「ところで、お前たち名前は?」


 焚き火の準備をしながら、イケオジ猫が聞いてきた。


「……こうた」


「……むねゆき」


 ぼくとむねゆきは警戒したまま答える。


「そうか!」


 イケオジ猫はニカッと笑った。





「俺はトニーだ! しがない冒険猫だけど、よろしくな!」


「はぁ……」


僕たちは、ものすごく疑わしそうな目でトニーを見ていた。


「おいおい、そんないつまでも警戒するなって!」


 トニーが笑う。


「ほら、あいつらを見てみろよ!」


「あいつら?」


 トニーが指さした方を見る。


「ディエゴさん! このくらいでいいですか!?」


 らいがが両手いっぱいの枝を抱えて走ってきた。


「ああ。十分だ」


 もう一匹の灰色猫が落ち着いた声で答える。


 どうやら、あの猫はディエゴというらしい。


「太い枝は後だ。最初は細い枝から使った方が火をつけやすい」


「うぉー! すげー!」


 らいがの目が輝く。


「なんでそんなこと知ってるんですか!?」


「旅をしてれば自然と覚える」


「かっけーー!」


 ……いつの間に、あんなに仲良くなったんだ?


 しかも――。





「せいかさん。その野菜は俺が切ろう。そっちの鍋を頼めるか?」


「本当? 助かる」


「旅じゃ役割分担が大事だからな」


「分かる! 人数が多いと、一人で全部やるの大変なんだよね」


 せいかまで普通に話してる!


 ディエゴはせいかから野菜と包丁を受け取った。


 トントントントントンッ!


「えっ!?」


 ものすごい速さだ。


 ぼくが驚いている間にも、野菜が次々と切られていく。


「はえーー! すげーー!」


 らいがが横からのぞき込む。


「すごい……」


 せいかも切られた野菜を一つ手に取った。


「全部同じ大きさ」


「これくらい普通だ」


 ディエゴは顔色一つ変えない。





 いや、普通なのか?


 そんなことを考えていて――。


「…………あれ?」


 ぼくは、もっと大事なことに気づいた。


「せいか!」


「ん?」


「仮面!」


 いつの間にか、せいかが仮面を外していた。


「え?」


ディエゴを見る――。


「たぶん大丈夫だよ」


 キラキラした笑顔で答えた。


「なんで!?」


 会ったばっかりだよ!?


 するとディエゴが、こっちを見ることもなく野菜を切りながら言った。





「まさか人間とはな」


「!」


 やっぱり気づいてる!


 ぼくが身構える。


 けれど――。


「俺は気にしないから安心しろ」


 トントントントン。


 それだけ言って、また料理を続ける。


「…………」


 ぼくは何も言えなかった。


 隣を見る。


「…………」


 むねゆきも何も言えない。


 らいがはディエゴの隣で楽しそうに火を起こしている。


 せいかも普通に鍋を準備している。





 警戒しているのは――。


 ぼくとむねゆきだけ。


 その時。


「な?」


 ぐいっ。


 突然、トニーがぼくとむねゆきの肩を抱いた。


 満面の笑みでぼくたちを見る。


「…………」


「…………」


「な?」


 もう一回言った。


(『な?』じゃねーよ!)


 心の中で思いっきり突っ込んだ。


 絶対ぼくたちの方が正しい。


 知らない猫に会ったんだから警戒するのは当たり前だ。


 なのに、この空気はなんなんだ。


 まるで警戒しているぼくたちの方がおかしいみたいじゃないか!





「こうちゃん、お皿並べるの手伝ってー!」


「あ、うん!」


「むねゆきさん、そこの薪をお願いします」


「お、おう……」


 結局、ぼくたちまで流されるように晩ご飯の準備を手伝うことになった。


 ディエゴは料理がうまい。


 トニーは口ばっかり動かしているように見えて、指示が完璧だ。


 らいがは言われたことを楽しそうに手伝い、せいかもいつも以上に楽しそうだった。


 気づけば――。


「できた!」


 いつもよりずっと早く、晩ご飯の準備が終わっていた。


 しかも、なんだか楽しかった。


「…………」


 ぼくは隣のむねゆきを見る。


 むねゆきもぼくを見る。


 そして二人同時に、トニーとディエゴを見た。





 怪しい。


 やっぱり怪しい。


 でも――。


(……悪い猫たちには見えないんだよなぁ)


 なんとも言えない気持ちのまま、ぼくはみんなと焚き火を囲んだ。

最後まで読んでいただいてありがとうございます!


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