第46話 お姉さま
5人は街で評判の料理屋に入る
サリーが店の評判や料理を事細かく説明する。
ナーゼはサリーが一生懸命話す姿をやさしい笑顔で見守る
実際の年齢に大きな差は無いのだが、サリーのキャシャな体が歳を若く見せている
「さあ、スフィンの所に行こう」
5人はスフィンの屋敷に向かう。
石で固められた道路、そこを馬車が中央を走る。
道路が広いので、馬車がすれ違っても充分と両側に人が歩くスペースがある。
アウラーの東と西に大きな門があり、その中心にスフィンの住む丘がある。スフィンの住む丘から東門、西門へと通じる大きな道路がメインストリートである。
メインストリートには店も多く、旅人も多くて賑やかだ。
ここを歩くとつくづく異世界に来たのだと感じる
スフィンの屋敷に着いて、応接室らしき場所に通され、執務中のスフィンが空く時間まで待つ事になった。
「それにしても、あのトラントって何者なのだろう?」
「パパが言っていたんだけど、バレッサー討伐軍に参加して、かなりの武勲をあげたそうなの。それまでアウラーで見た事も無かった人だったのに、アウラーの討伐隊に参加していたんだって」
「アウラーの人って言うのは確かなの?」
「住民管理所でアウラーに登録があったから間違い無いらしいわ。パパも怪しいと思って調べたんだって」
バレッサーの討伐隊で武勲をあげた人間が、今度はバレッサー側についているのか。
マコトは知っているのだろうか?
サリーもいるのでマコト達の事を話せない
トラントの事も、裏ギルドの対応を見ると罪人だと知れ渡っていないらしい。ただ、サリーはギルドの後を継いだモビランから聞いているようだ。
スフィンが部屋に入ってきた
「やあ、母親は見つかりましたか?」
「いえ、これから住民管理所に行く予定です。今日はトラントの事で来ました。裏ギルドからトラントが出てきたので、裏ギルドの職員に情報を聞こうとしたのですが領主の許可をもらわないと教えてくれないとの事だったので、せめてトラントが裏ギルドに来た事だけは伝えようと思って、ここに来ました」
「そうか、まだトラントの事は大々的に公表していないんだ。教えてくれてありがとう。この件は私が対処するから、君達は母親探しを続けていいよ。住民管理所には私から情報開示するように言っておくから」
「ありがとうございます」
その後の公務があるみたいなので、スフィンは足早に部屋を出て行った
用事を終えた僕達も屋敷を出る。
地球と同じように昼間は太陽が大地を照らす。地球では夜は月なのだが、この世界には大きく見える月は無い
月が無いだけで思った以上に暗い。賑やかな街並みも電気による灯が無く、火による灯だけなので太陽が沈むと街の賑やかさはなくなり、出歩く人も一気に少なくなる
まだ日没まで少し時間があるのだが、サリーをギルドまで送り届けないとならないため、今日の母親探しは終了にした。
ギルドにサリーを送り宿に戻る。
1階の食堂で4人は夕食を食べながら、今日のトラントの事を話す
「サリーの話だとトラントはバレッサー討伐隊だったらしいけど、マコト達は知っているのかな?」
「確かにおかしいわね。何か裏があるのかも知れないわ」
コリーがトラントに別の目的があるのではと疑う
「僕とナーゼが手も足も出ないでトラントに捕まったのに、その力を全然みせない。まるで力を隠しているようにも思える」
「リオン!手も足も出なかった訳では無いわ。私はわざと捕まってあげたのよ」
ナーゼがムキになってリオンを叱る
「ごめんね。ナーゼ」
ナーゼの頬が赤らむ
「いいわよ。確かに不気味よね。何を考えているのかしら。それに上級魔導士しか使えない瞬間魔法まで使える」
「不気味だけど、スフィンに任せれば大丈夫だよ。もしスフィンに力を貸して欲しいと言われたら、その時は力を貸そう。それでいいかな?」
「僕はユウタに任せるよ」
リオンが僕の意見に賛成すると、全員が僕の意見に賛成した。
そして翌日
4人が宿を出てギルドに行く
サリーが満面の笑みで走ってくる。そしてナーゼに抱き着く
まるで子供のようだ
「確か、ナーゼっていったか?」
ギルドマスターのモビランがナーゼに尋ねる
「はい?」
「娘はナーゼの事を本当の姉のようだと言っている。わがままな娘だけど頼む」
深々と頭を下げる
本当に娘を大事にしているのだと、モビランの姿が物語っていた。
言われたナーゼが一番驚いたのだろう
「い、いえ。私も本当の妹のようだと思っています。だから何があってもサリーを守りますから心配しないで下さい」
サリーがナーゼの手を繋ぐ
「さあ、サリー行こうか」
「うん、お姉ちゃん」
ギルドを出て住民管理所に辿り着く
まるで僕達を待ち構えていたかのように、一人の男性が近づいてくる
「ユウタ様ですか?領主様より話は伺っております。どうぞこちらへ」
登録に来たのだろう複数の住民が目の前のカウンターで業務を行う職員に呼ばれるのを椅子に座ってまっている。
カウンターに並ぶ5人の職員の後ろには10人程の職員が必死に作業をしている。
パソコンが無い世界で、住民を管理するのは大変なのだろう
必死に作業を行う職員を見て、パソコンの優秀さを改めて知った
そんな作業を行っている職員の横を通り、奥にある部屋に案内された
そこには大きなテーブルにA3 ぐらいある紙が1mぐらい積んであり、その束が10個テーブルに置いてある。
「そこにおいてある方々が肌を綺麗にする魔法を使って商売している人のリストになります。念写魔法が使える魔術師が顔を紙に念写しているので、対象の方がいれば直にわかると思いますよ」
「これ、全部ですか?」
「はい、これ全部です」
母の顔を知っているのは僕だけだ。手分けして探す事が出来ない
この紙を全て見るには1日や2日では終わらない
でもやらなければ
何のために異世界に来たのか分からない
「よしやるぞ!」
「ねえユウタ、私達が出来る事があるかな?」
「う~ん。この紙の人達は肌を綺麗にする魔法を使う人のリストですよね?」
「はい、対象者だけ抜き出しています」
「年齢は?」
「特に指定が無かったので、女性全員のリストです」
「それなら、年齢を抜き出してもらおうかな?」
「年齢?」
「僕の母さんは今年40歳だから、この世界の年齢の35歳から45歳までの人を抜き出してくれるかな。」
「それなら、私達でも出来るね」
とはいえ一つの束が1m近くある。それに紙が大きいので、数を消化すると意外に疲れる。更に更に生年月日が紙の中央に書いてあるので、まとめて局所だけ見る事が出来ない。
まず最初に根を上げたのは予想通りサリーだ。
そしてすぐにリオンが根を上げた。
昼食を食べてからも作業を続けるが、住民管理所が閉館するまで五分の一程度しか終わらなかった。
単純に計算して後4日は掛かりそうだ
住民管理所を出る。
ギルドまで帰る途中
「ねえ、サリー。一緒にご飯食べる?」
「えっ!それなら私の家に来ませんか?」
「さすがにいきなりはマズいよ。それに宿泊所も僕達の食事を用意しているだろうから」
「確かにそうね。じゃあ明日サリーの家に行こうよ」
「本当にいいの?」
「うん。お姉さまを紹介するんだ」
サリーは笑顔で言う
いつの間にかお姉さまになっていた。




