↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『EMIRI 3』 ~取り敢えず気になるアイツ~  作者: 亨利(ヘンリー)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/8

第2章 ゴキブリ

 キャンパスをみのりが徘徊している。キョロキョロと辺りを気にしながら、小走りに動く理由は、恵美莉を探しているのだ。

 そんな中、恵美莉が迂闊にも、みのりの前方を横切った。


「恵美莉ーーー!」


みのりはまっしぐらに近づいてくる。それに気づいた恵美莉は、逃げようかと考えたが、大声で追いかけられるとカッコ悪いので、踏みとどまった。

「恵美莉! ハアハアハア、今一瞬逃げようとしたでしょ」

「ええ! そんなことしてないよ。みのりこそ昼休みどこ行ってたのよ?」

「お願い、頼みがあるの。お金貸して」

「もーう! 血相変えて・・・先週もそれ言ってたじゃない」

恵美莉は歩き出した。

「毎週1万円ずつ必要なのよ。返済に」

「返済? 元カレに取られてるんでしょ」

「返さないと別れてくれないんだよぅ」

「もう、放っときなよ」

「新しい彼にバレたら嫌だもんんんn・・・」

「何がよ?」

「まだ元カレ引きずってるって知られたら、捨てられそうじゃない」

「まだそんな程度の付き合いなの?」

「う~ん、実はぁ、別れる前にぃ、付き合い始めたからぁ」

みのりはシナを作って巻き舌で言った。

「相手には付き合ってる人いないから、って言ったんだね」

「そう。解るぅ?」

「じゃ自業自得! 自分で何とかせよ!」

恵美莉は歩くスピードを速めた。

「待って、お願い! 5千円でいいから」

「無理! あたしのバイト代、月に3万くらいしかないから」

恵美莉は1年生の時から、大学構内にある『学生相談室』の受付のバイトを続けている。以前は実家のパン屋の手伝いもしていたが、週末は春樹と会うために、最近はサボりがち。

「もう、お悩み相談室のバイト変えれば?」

「いやよ、なんであんたのために! 桧垣先生と一緒の仕事、楽しいもん」

「あんた、桧垣先生とちょっと怪しいんじゃない?」

「桧垣先生だーい好き!」

「ほらほら、否定しない。菅生君(春樹)に言っちゃうぞー」

「別にいいよ。あたしらそんなことぐらいで、別れたりしないもーん」

実際には、恵美莉は桧垣助教授との間には秘密があった。でもこれは誰にも内緒である。


「エミリー」

 この声は・・・

「あ、ポーリー。元気?」

「ハツラツデス。モウ昼ゴハン食ベマシタカ?」

嬉しそうに近づいてくるポーリー。今日は赤いTシャツを着ている。

「もう昼休みは終わるよ」

するとみのりが驚いた顔して、

「あの? ポーリーさん。私覚えてる?」

「誰デスカ?」

「みのり、ポーリー知ってるの?」

「うん、剣道部。体験入部に来てたでしょ?」

「アア、剣道部ノ女サムライ!」

「面かぶってるから顔覚えてないか」

「全然、眼中ニナイデス」

「・・・ころすぞ」

「我慢我慢。ポーリー、時々日本語おかしいから」

「昼ゴハン食ベテマセン」

「あたしは食べたわよ。お腹空かないの?」

「誘ってくれてんじゃないの?」みのりが可笑しそうに笑うと、

「武士ハ食ワネド、高楊枝」

「これよ。これが言いたかっただけみたい」

恵美莉はポーリーを指差して説明した。

「高楊枝ト、爪楊枝ハ、何ガ違イマスカ?」

「両方爪楊枝のことよ。エラそうに見栄を張る態度を高楊枝って言うの」

「ソウデスカ。武士ハ偉イデスネ」

「面倒なことばっか、訊いてくるな。貴様」

「私ハ偉クナイノデ、貴様デハアリマセン」

「はいはい」

「チョウドヨカッタ。質問ガアリマス。剣道ノ人ハ、取リ敢エズ、日本刀持ッテマスカ?」

「日本刀? 本物は持ってないわよねぇ、みのり」

「持ってるわけないじゃん。竹刀だけだよ」

「私、オ土産ニ、買イタイデス」

「無理でしょ。どこに売ってんのか知らないわよ」

「ソウデスカ、探シマスカ?」

「いやよ、ハンコみたいに」

「オウ! 先日ハ付キ合ッタノ、ウレシカッタ」

「あんたら、付き合ってんの?」

みのりがちょっと引いた。

「そんなわけないじゃない! ポーリー、ちゃんと説明しないと誤解するでしょ」

「ハンコ買ウ、付キ合イデシタ」

「そうそう。で、ちゃんと口座作れた?」

「万事ヌカリナク」

「難しい日本語選んで使ってんなぁ?」

「でも、恵美莉はポーリーさんと、どうやって知り合ったの?」

「へ? 知り合ったていうか。なんとなく目に入ってきただけよ、コイツ」

「“コイツ”デハナク、正シクハ、“コヤツ”デスネ」

「コイツでもコヤツでも同じ意味よ」

「同ジ意味デスカ? 違イハナイデスカ?」

「まったく同じ意味」

「ジャナゼ、2コノ言葉アリマスカ? 不必要ジャナイデスカ?」

「知らないわよ。そんなことまで」

「日本人ナノニ、日本語知ラナイカ?」

「やっぱ腹立つ」

「ソレハソウト、聞イテクダサイ」

「何よ。また変な騒動巻き起こした?」

「サクジツノ夜、私ハ、寮ノ部屋デ、クツロギマシタ」

「・・・うん、それで?」

「スルト、ドウデショウ。テーブルノ向コウノハジニ、黒イ毛ガ、見エルデハアリマセンカ」

「黒い毛?」

「ソレハナント、ソヨソヨト、動イテイマシタ」

「毛がそよそよ? なんか怪しい空気を感じる」

恵美莉とみのりは、身を乗り出して聞いた。

「スルト、アヤツハ、テーブルノ上ニ、ソノ顔ヲ見セタノデス」

「ふふ、アヤツだって」みのりが笑いを堪えられず噴き出した。

「ソレハナント、ゴキブリデシタ」

「げっ!」みのりの笑いは一変、嫌悪の表情になった。

「黒クテ大キナ、ゴキブリダッタノデス」

「なんの話」

「ソレハソレハ、恐ロシクテ、シクシク泣キマシタ」

「・・・・・・」

「日本語ドウデスカ?」

「え?えええ、まあ、ま、普通かな?」

「そ、そうね。普通の日本語でしたよ。テーマは異常だけど」

「ヤッタ。少シズツ、上達デキマシタ」

「それだけ?」

「オワリデス。話ヲ聞イテ下サリ、深クオン礼申シ上ゲマス」

「ゴキブリはどうしたの?」

「私ハ部屋ヲ出タノデ、ドッカ行ッタ」

「ええ? 退治してないの!?」

みのりが大声で言うと

「殺生ハセヌ! 武士ノ情ケ」

そう言うと、ポーリーは小走りに去っていった。

「何あの人?」

みのりがそう言って、ポーリーの後姿を見送っていると、その隙に恵美莉もその場を去っていた。

「ああ! 恵美莉、お金貸してって!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。