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君が死んでも世界は美しく回る  作者: りりぁ
秒読みの楽園
5/18

5.密室のカウントダウン

その夜、私はアレクの執務室のソファで、彼の膝に身を委ねていました。


「ふふ、アレク。セルジオ様は本当に素晴らしいわ。

 今日、アンナのことを実に見事に突き放して見せました」


アレクは私の柔らかな金髪を指で弄びながら、低く満足げに笑いました。


「ああ、私の仕込み通りだ。

 結婚契約に基づく、持参金の入金があと二年で完了する。あれ(アンナ)の社交維持費も含めて、我がヴァレンティ公爵家の鉱山事業に全額寄付させている。

 あれの実家も、持参金分割支払いなど、姑息な知恵を働かせたが…あれが嫡男を生んだ時点で油断し、資金洗浄への監視の目が緩んだ。アンナ一人が相手なら、合法的に金を取り上げる方法はいくらでもある。

 あの女を『妻』として扱ってやる義理も、もうすぐ終わる。

私たちの愛を阻むものを、やっと我が公爵家から排除できるんだ」


「まあ、冷酷な公爵様。アンナが可哀想に思えてきたわ。実家からのお金を全て寄付しちゃって一文無しだなんて…。

 でも、権力を振りかざして私たちを引き裂き、あなたを強引に奪い去った罰よね。

 ああ、愛しているわ、アレク。早く私たちの完璧な世界を取り戻したい。

 ……それでね、アレク。

 あの女、セルジオの愛を失って、最近は社交界での称賛すら物足りないようで、邸内を幽霊のように彷徨っていますわよ?そろそろ、次の舞台(ステージ)を用意して差し上げてはいかがかしら」


「その必要はなさそうだ、キティ。

 密偵から面白い報告が入っている」


アレクは机の上の書類を私に見せました。

そこには、帝都の駅近くに駐屯している、レックスという名の若い軍人の素行が記されていました。


吹けば飛ぶような伯爵家の令息。

そこそこ容姿端麗で享楽的。

短絡的な若者にありがちな恐れ知らず。

息子を溺愛する母親に甘やかされて育った、傲慢な世間知らず。


まあ!あの女(アンナ)にそっくりでお似合いの二人だこと。


「この男、悪友どもと『高慢な公爵夫人をどちらが先に落とせるか』という賭けをしているらしい」


「まあまあ、おあつらえ向きのお馬鹿さんね」


私は声を立てて笑いました。


飢えて、乾いて、狂いかけているアンナ。

そんな彼女の前に、甘い言葉で自分を全肯定してくれる若い男が現れたらどうなるか。

結果は火を見るより明らかでした。


「アレク、私、明日から少しだけアンナの監視を緩くしますわね」


「ああ、泳がせておけ。

 ヴァレンティ家の名に泥を塗る、完璧な『引き金』をな」

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