4.からくり人形の機能停止
時が経つのは、あまりにも愉快で、そして残酷なものでした。
セルジオ様が八歳になった頃、歪なおままごとは、あっさりと限界を迎えたのです。
「セルジオ、今日もお母様と一緒に、お庭でお茶会をしましょう?
キティお姉さまが美味しいクッキーを用意してくれたのよ」
いつものように、自分の所有物を愛でようと、満面の笑みで部屋にやってきたアンナ。
しかし、机に向かって領地経営の書物を開いていたセルジオ様は、振り返りもせずに、ただ冷淡な声を響かせました。
「……いえ、お母様。僕はこれから、父上と講義を受ける予定があります。
お茶会に出席している時間はありません」
その声には、かつての幼い甘えなど、微塵も残っていていませんでした。
「え……?でも、セルジオ、お父様は怖くて嫌いだったでしょう?
お母様と一緒にいた方が楽しいわよ?」
焦ったアンナがセルジオ様の肩を掴もうとします。
しかし、セルジオ様は衣服が汚れるのを嫌うかのように、滑らかな動作でそれをかわして立ち上がりました。
その佇まいは、恐ろしいほどアレクに酷く似ていました。
「僕は公爵家の嫡男です。
いつまでも子供のように、お母様にべったりと甘えているわけにはいきません。
父上は厳格ですが、そのお考えは常に正しい。僕は、父上のような立派な公爵になるために、学ばなければならないのです」
「セルジオ……?
あなた、何を言っているの……?」
アンナを冷たく射抜く、琥珀色の瞳。
そこにはもう、母親を全肯定する「都合の良い人形」はいませんでした。
セルジオ様はそのまま、一瞥もくれずに部屋を出て行きました。
残されたアンナは、ガタガタと目に見えて震え出しました。
「おかしいわ……何かがおかしい。
セルジオが私を見ないなんて。
ねえ、キティお姉さま、あの子どうしちゃったの!?」
「まあ、アンナ様……。
セルジオ様も男の子ですから、父親の背中を追いたくなる時期なのでしょう。
寂しいけれど、仕方がありませんわ」
「寂しいだなんて…!
キティお姉さま、私は世界で一番に愛される存在でしょう!?誰だって、私のことを寂しがらせるだなんておかしいわ!
ねえ、私は美しくて世界一愛されてる、幸せな公爵夫人よね!?そうでしょう、お姉さま…」
「ええ、そのとおりですわ、アンナ様」
「お茶会…お茶会を開かなきゃ…。貴婦人たちに私の幸せを見せてあげなきゃいけないわ…!
いいえ…夜会かしら…?夜会なら貴公子たちも、私の美しさを褒め称えてくれるわ…!
準備しなきゃ…お化粧を手伝って、キティお姉さま…」
私は、エメラルドの瞳を見開いて鏡に向かい、震えながら自分の美しさを確かめるアンナを抱きしめ、その背中を優しく擦りながら、仮面の下で口角を吊り上げていました。
寂しい?
いいえ、そんな生ぬるい言葉では足りないはず。
あなたの底なしの承認欲求は、これから飢えと焦燥で、自らを轟々と焼かれていくのよ。
完全に焼き尽くされるまで、せいぜいその綺麗なお顔にお化粧を手伝ってあげるわ。




